第6話:生徒会スクープを取れ!

「ここ数年、わが部の新聞発行部数は年々下がってきている。人気を取り戻すには、どうすればいいと思う?」
「やはり、面白い記事をのせることでしょうか?」
「その通り!これからは面白いスクープ記事が重要なんだ!」

陸は夢を見ていた。目の前に、野菜や魚、肉などの新鮮な材料が豊富に広がっていて、その真ん中に自分は立っている。これだけの材料があれば、煮物に刺身、スープ、炒め物、焼き物等々、いろんな料理が作れそうだ。陸は腕まくりをし、
「よし!片っ端から料理を作っていくぞ!!うちの弁当屋の新しいメニューも完成するかも!!」
と、そばにあったニンジンを手に取ろうとした時だった。
「陸!りーく!!」
聞き覚えのある声が聞こえた。でも、その声の主に関わると「ろくなことが起こらない」と直感で感じたため、無視しようとした。が、またしつこく、
「陸、陸!起きて!!」
と聞こえてきたため、陸は幸せな気分に浸っていた夢の中から現実に引き戻された・・・。
「ん・・・」
目を覚ますと、いつもの見覚えのある自分の部屋の天井が見えた。辺りはすっかり明るくなっていて、朝が来たようである。いつもと変わらぬ平和な朝だ。だが、1つだけいつもと違うものが見えた。
「陸、おはよ!!」
突然、ルリが寝ている自分の顔をのぞきこんできたので、陸はびっくりして「うわ〜っ!?」と叫んでしまった。陸の大声は朝のさわやかな近所の静寂を一瞬かき消した。そばにいたルリは、耳に声がジ〜ンと響いて頭をクラクラさせている。
「な・・な・・なに?陸、突然大きな声出して」
「それはこっちのセリフだ!!なんでルリが朝っぱらからおれの部屋にいるんだよ!!」
そう聞かれたルリは、ほっぺをプゥとふくらませながら、
「なんでって、朝、陸と一緒に学校に行きたかったから、迎えに来たんじゃない」
と答えるが、陸は時計を指差し叫ぶ。
「迎えに来たって、朝早すぎ!!まだ7時前だろ!!それに、なんでおれの部屋まで来てるんだよ?玄関とかで待ってればいいことじゃないか!」
陸は寝ている姿をルリに見られたのがイヤだったのか、ボサボサになっている髪の毛を手で押さえて必死に整えようとしている。それがまたルリのハートをキューンとさせる。
「だって、朝早く目が覚めちゃったから、陸と一緒に学校に行こうと思って遊びに来たの。そしたら、陸のお父様とお母様が、お部屋まで案内してくれたんだもん」
「あいつら・・」
ルリが陸の部屋まで来たのには、陸の父と母の力も関与していたらしい・・。ルリはめったに見れない陸の寝起き姿を見て満足したのか、
「きっと結婚したら、こんなふうに毎日陸の寝顔をずっと見つめていられるんだろうなあ・・」
と未来の自分を想像しうっとりしていたが、その横で陸は、
「どこまで妄想を膨らませてるんか・・。そんなの現実にならないからな」
と冷ややかな様子。
「もーっ!!陸ったら、夢がないんだから!!」
「んなことに、夢が持てるか!!というか、早く部屋から出ろ!着替えるから!」
そう言うと、陸はルリを部屋から放り出した。ルリとしては、若奥様風に陸の着替えを手伝いたかったようだが、きっちり部屋に鍵をかけられていたので、
「下で待っているね〜!!」
と声をかけ、狭くて急な陸の家の階段をソロソロと下りて行った。

三十分後、学校に行く用意ができた陸とルリが家から一緒に出てきた。ルリは見送ってくれる陸の父と母に、
「陸のお父様、お母様、いってきまーす!!」
と元気よくあいさつしている。やはり将来のダンナ様になる予定の人の両親ゆえ、今から失礼のないように作法を気にしているようだ。陸は半分あきれたような顔をしながら、
「ほら、行くぞ」
とルリに声をかけたが、ルリはまだ笑顔で陸の父母に手を振っている。そしてようやく手を振るのをやめ、陸のそばにトテテと走ってきて、
「今日は何か楽しいことがあるといいね♪」
とうれしそうに学校に行き始めた。その時だ。
「パシャッ!」
というシャッターを切るような音が聞こえた。
「ん?」
陸は思わず足を止め、周りを見回してみた。この音は聞き覚えがある。確か1ヶ月前ぐらいに、写真部がルリの写真を隠し撮りをしていた時に聞こえた音だ。しかし、写真部は陸が注意して以来、そんな目だった活動はしていないはずである。それに周りを見回してみたが、怪しい人影もない。陸は頭をポリポリかきながら、
「気のせいか・・」
と思っていると、突然背後から、
「ああっ!!」
と大きな声が聞こえてきた。振り返ると、そこにはハルカが立っていて、ものすごく怒った表情をしてこちらをにらんでいる。陸は怒られるようなことは何もしていないはずだ。ハルカはまっすぐルリの前に歩いてくると、
「なんで、ルリさんがこんなところにいるの!?」
と問いただした。どうやらハルカはルリがここにいるのが気に食わないようだ。まあ、前からルリのことを気に入ってない様子なので、今回もイライラしているのだろう、と陸は考えた。ムスッとしているハルカとは逆にルリは、
「あ!ハルカちゃん、おはよー!ハルカちゃんも一緒に学校行こう!」
とのん気に誘っている。そんなお気楽なルリを見ると、ハルカはますますイライラしてくるのだが、これ以上攻撃しても仕方がない。というのも、ルリに何を言っても「のれんに腕押し」だからだ。

それから数日は、特にこれといった事件はなく、穏やかに毎日が過ぎていった。だが、ある日の朝だった。
「ハルカ、どうしたんだよ?」
「いいから来て!大変なことになっているのよ!!」
陸は、学校に来るや否や、ハルカに腕をつかまれどこかに連れて行かれる。「大変なこと」とはいったい何のことだろう?生徒会活動で、何か不備があったのだろうか?企画に重大欠陥があったのだろうか?そうこう考えているうちに陸は、学校のいろんなお知らせなどが貼られている掲示板の前にやって来ていた。いつもは掲示板を見ている生徒はほとんどいないのに、今日はなぜか人だかりができている。ハルカは掲示板の前で足を止めると指をさし、
「ほら!あの記事よ!!」
と言った。陸が、
「へ・・」
と掲示板に目をやると、
『高原会長★高円寺るり 同棲(どうせい)発覚!』
というタイトルで、一面ぶち抜きの学校新聞が貼られていた。
「な、なんだこれ!?」
驚きのあまり目が丸くなった陸だったが、事態を把握するためにあわてて記事を読んでみる。
『前々から話題となっていたビッグカップルが、とうとう同棲しているという事実をつきとめた。○月×日の早朝、高原家の前でスクープを張っていた記者の前に、高原会長と高円寺さんが会長の家から仲良く出てきたのだ』
記事の横には、この前ルリと一緒に登校した時の写真が載せられている。それを見た瞬間、陸は、
「もしや、あの時のシャッター音!?」
と思い出した。その時、掲示板を見ていた生徒達が一斉に陸のほうにふり返り、
「あ!会長よ!」
「結婚秒読み、おめでとう〜!!」
と声をかけてきたので、陸はびっくりする。皆はこのしょうもない記事を「本当のこと」だととらえているのだろうか?祝福してくれる生徒達にもみくちゃにされながら陸はあわてて、
「ち、ちがう!!これはー」
と否定をしようとした時だ。
「否定なんてかっこ悪いぞ。この目でおれはちゃーんと事実を見たんだから」
背後から聞き覚えがある声がしたので、陸が振り返ると、そこには黒ぶちのメガネをかけた男の子が立っていた。陸は彼を見た瞬間、
「西川!?」
と叫んだ。彼は「西川涼」、青葉中学新聞部の部長である。
「おまえだろ!?こんなくだらない記事を書いたのは!!」
「くだらないとは、ひどいなー。生徒達の関心があることを即キャッチし、それを記事にする!新聞部部長として、この素早い行動を誉めて欲しいね!!」
自信満々な西川の顔を見ながら、陸は「ふー」とため息をついた。
「おまえの『情報キャッチ』の方向性は、いつも間違ってるからな・・。正直、あんまり関わりたくないんだけど・・」
「なっ、なんだと!?」
陸にバカにされムカッときた西川だったが、「怒り」からすると陸のほうが上である。
「『なんだと!?』は、こっちのセリフだよ。なんだよ、あの記事!あんなウソ記事、よく一面に堂々と書けたもんだな!?とにかく、こんなバカげた新聞を出すのはやめろ!誰も読まねーよ!」
陸の言葉に悔しさを覚えた西川だったが、すぐにニヤリと笑うと、
「どこがバカげてるんだ?これを見ろよ!」
といって、新聞部がいつも発行した新聞を置いている「新聞BOX」の中を見せた。陸は、箱の中をのぞいてみた。
「って、何も入ってないけど?」
「入ってないんじゃないよ。ぜーんぶ売り切れたのさ!そしてさらに、この生徒達の声を聞け!」
新聞を取りにきた生徒達は、BOXに新聞がないのを知ると、
「え〜!新聞、もうないの〜!?読みたかったのに!」
と騒いでいる。
「フ・・、今まで発行部数を落としていた新聞部だったが、一発で部を復活させるなんて、すごい才能だろ!新聞は全部売り切れるし、刷り増しを待っている人達がいるぐらいだもんね!」
自分の才能にホレボレしている西川だったが、陸が陶酔感をかきやぶる。
「あのなー、おまえは良くても、ウソを書かれたおれの立場はどうなるんだ!?さらに変なウワサが出るだろ!」
西川は陸の肩をポンポンとたたき、
「まーまー、10年来の大親友なんだから、大目に見ろ。それにウソなんて書いてないし。本当は彼女とウワサになって、うれしいんじゃないのか?」
とのん気なことを言ってきたので、陸の怒りはさらに上昇した。が、その時、また不運が重なってきた。
「あ!陸ーっ!!見てみて!私達のことが、こんなに大きく新聞に載ってるの!!」
新聞を広げて、ルリがうれしそうに駆け寄ってきた。陸は怒りが通り過ぎて、なんだか悲しい気持ちになってきた・・。
「ルリ・・なんでおまえはそんな記事がうれしいんだ・・」
そんな陸の心境を全然知らないルリは、新聞を抱きしめて、
「これ、誰が書いてくれたんだろうね!すっごくステキな記事!!」
とはしゃいでいる。西川はびっくりした。今まで自分の記事をけなしてきた人達はたくさん見てきたが、こんなに感動してくれている人は初めて見た。西川はいても立ってもいられなくなり、ルリに駆け寄るとギュッと手を握った。
「高円寺さんは、この記事の良さを分かってくれるんだね!!」
「へ?誰?」
ルリは突然見知らぬ人に手をつかまれ、キョトンとしている。西川は、紳士っぽく深々とお辞儀をし自己紹介を始めた。
「ぼくは、新聞部部長の西川涼という者です。高原君とは幼稚園の頃から古いつき合いをさせてもらっている親友で―」
「親友というよりは、ジャマばっかりしてるわよね」
突然横から鋭いツッコミを入れてきたのはハルカだった。ハルカは西川をキッとにらむ。
「いつも陸を利用して、自分を良い立場にしようとするんだから」
ルリは、ハルカと西川の顔を交互に見ながら、
「へ?利用してって何があったの?」
と聞いてみた。西川はちょっとビクッとしたが、ハルカはおかまいなく続ける。
「たとえば、小学校の頃、バレンタインデーに陸にチョコをあげたい女の子達に『ぼくにもチョコをくれたら、陸にとりつぐよ』と言って、チョコのおこぼれをもらってたし、陸が1人で掃除して教室をきれいにしたのに『ぼくがやりました』って先生に報告して良い子ぶってたし、今回も陸の人気を利用してスキャンダル記事を書いて新聞売ろうとしてるんでしょ?魂胆は見えてるんだから」
ハルカに痛いところをつかれて気まずそうな西川だったが、「ニヤリ」と笑うと急に自信を取り戻した。陸は横でその不敵な笑みを見て、また何か嫌なことが起こりそうな予感がし、背中がゾクッとした。
「フッ、栗原君はいつもそうだよね。高原の肩ばっかり持って、ぼくをおとしめようとする」
おとしめようとする・・って、それは西川の単なる『被害妄想』でしかない、と思っていたハルカだったが、西川はさらなる一手を見せてきた。
「そんな強気な栗原君だけど、ぼくは君のトップシークレットをすでに調査済みだからね!」
予想外の展開に、ハルカは「えっ!?」と叫んだ。「トップシークレットを調査済み」ということだけでも、ハルカにとっては衝撃が大きかったのに、さらに西川は続ける。
「そして、その記事はすでに隣の校舎の掲示板に貼り出して、生徒達の話題をかっさらってるよ」
「はあ!?ちょっ!?何よ、それ!!」
「それは自分で掲示板を見て確かめてみるんだね」
ハルカは西川を殴りたい気分だったが、今はそれどころではない。足は勝手に隣の校舎の掲示板に向っていた。
『私の秘密って、いったいあのバカ、何を書いたっていうの!?まさか陸を好きなこと!?冗談じゃないわよ!!告白もまだなのに、先に他の人に知られるなんて絶対イヤ!!』
隣の校舎の掲示板では、すでにたくさんの生徒達が掲示板を取り囲み、騒いでいた。そこへハルカが現れたので、生徒達は皆一斉に振り返り、
「あ!副会長だ!」
「栗原さん!この記事ってホントなの!?」
「おれ、ショックだよ〜!!」
と大騒ぎだ。ハルカは人にもみくちゃにされながら、掲示板に貼っている新聞を見て「あ!?」と叫んだ。
なんとそこには、
『生徒会 栗原副会長 ☆ 安藤書記 熱愛発覚!!』
という見出しで新聞がでかでかと貼り出されていたからだ!
「なっ、なんで私と安藤くんがウワサになってるの!?」
てっきり「陸が好き」みたいなことを書かれているのかと思っていたハルカだっただけに、肩透かしをくらったような感じだ。というか、こんなウソを書かれては困る。大迷惑だ。しかも相手は大嫌いな凪である。この記事を信じて、本当にハルカと凪がつき合っている、みたいに思う人が出てきたら、いったいどうするんだ!と、その時、
「あららー、とうとうバレちゃったか」
と言って、凪が現れた。ウワサの2人がそろったことで、生徒達はいっせいにハルカと凪に詰め寄った。
「凪!この記事は本当なの!?」
「栗原さん、ウソだよね!あんな軽い男が趣味だったなんて!!」
突然の質問攻めにビクッとしたハルカだったが、とりあえず今はこの誤解をなんとか早く解きたい。なので大きな声で、
「ウソに決まって―」
と否定をしようとした時、急に凪に肩をグイッと引き寄せられた。凪はハルカの頭と自分の頭を軽くコツンと合わせると、
「バレちゃったからには観念しようか、ハルカ♪」
と、知らない人が見たら誤解されそうな行動をとったので、ハルカはびっくり!ギャラリーも「まさかの展開」に目が点状態だ。ハルカは、とっさに凪を突き飛ばした。そして、
「誰が『ハルカ』って呼び捨てにしろって言ったのよ!!」
と怒りの気持ちをこめて、凪のほっぺに一発「バチン!」と平手打ちをしたため、凪は
「いてーっ!!」
と大声を出した。ハルカの後を追って一部始終見ていたルリは、陸に聞いた。
「ハルカちゃんって凪くんとつきあっていたの?」
「いや・・ウソだよ・・」

「もーっ、最悪!!西川くんのあのくだらない新聞をどうにかやめさせないと、さらに被害が広がるわよ!!」
生徒会室で、机をダンダンたたきながらハルカが文句を言った。だが凪は、
「全然くだらなくないじゃん。おれは面白い記事だと思ったけど」
と言うと、ルリも、
「うん、面白かった」
とうなずくため、ハルカはあきれかえった。
「あんた達2人はおかしいのよ!!」
すると、その横で腕組みをして何か考え事をしていた陸が口を開いた。
「今回はおれ達生徒会メンバーが被害を受けただけだから、大目に見るとしよう。でも、これが一般生徒達のプライベートなことまで書かれ始めると困るよな・・」
「そういや、西川君って陸の友達なの?」
凪がふと陸に聞いた。陸は「う〜ん・・」と腕組みしたまま首を横に傾ける。
「友達・・というか・・幼稚園の頃からずっと同じクラスで、つきあいが長いのは確かだなあ・・・。まあ、ちょっと昔から行き過ぎるところはあったけど、根は悪いヤツではないんだよな・・・」
そう言うとハルカがとっさに否定した。
「陸は甘すぎるのよ。根も何もかも腐りきっているわよ!」
ハルカは凪とのウソ恋愛報道がされたことが、まだ腹が立っているらしい。今までも西川のことは好きではなかったハルカだったが、今回のことでますます嫌いになったことであろう。その時、急に陸が立ち上がり、
「あ、もう4時だ!おれ、ちょっと呼ばれているから出てくる」
と言って、ピンクの封筒を手にして外に出て行った。
「陸、誰に呼ばれたんだろう?」
「さあ?」
ルリが気になっていると、凪がニコニコ笑いながら、
「2人ともにぶいね〜。あれは告白の呼び出しだよ」
と言ったので、二人は、
「告白!?」
と同時に叫んだ。凪は笑いながらうなずく。
「陸が持っていた封筒はピンク色のかわいいものだっただろう?あれは絶対女の子からのだね。それに、この4時っていう放課後の時間帯も告白には最適―・・・」
凪がまだ説明をしている途中だったが、ルリとハルカはいっせいに生徒会室から飛び出していった。一人ポツンと取り残された凪は、「ふう・・」とため息を1つついた。
「みんな、陸が好きなんだねえ・・」
なんだかちょっとさみしい凪だった。

ルリとハルカは陸の後をこっそりつけていくと、そこは体育館の裏だった。ここはあまり生徒が立ち入らないし、周りを木に囲まれていて目立たなくて、告白するには最適の場所である。茂みに身を隠しながら、二人は陸を探す。
「陸・・どこだろう・・」
「あ!いたわよ!女の子と一緒よ!」
ルリとハルカはうっそうと茂った低い木の裏に隠れ、葉っぱの隙間から告白の様子を伺っていた。陸を呼び出した女の子は、何組の女の子かは分からなかったけど、目がパッチリしていて長い黒髪が魅力的なかわいい子だった。ルリとハルカは息をひそめて、二人の会話に耳をすました。
「あの・・」
女の子はもじもじとためらいながら、陸を見ている。そして、キッと覚悟を決めると、
「そのっ!私、ずっと前から高原くんのことが好きでした!」
と緊張した声で告げた。告白を受けた陸は、ちょっと驚いたような顔をしている。きっと陸も今すごくドキドキしていると思うが、陸以上にルリとハルカの方がドキドキしていた。ルリは緊張のあまり、手がブルブルと震える。
『陸・・、いったいなんて返事するんだろう・・。あの女の子、すごくかわいいから、そのままオッケーしちゃうのかな・・。そんなの・・そんなの・・ヤダけど・・でも、断ったらあの子がかわいそうだし・・・』
ルリがそんなことを頭の中で考えていると、突然、
「パシャ!」
と背後から何かの音が聞こえてきた。「へ?」と驚いて振り返ると、西川がカメラで告白現場を写しているではないか!ルリはびっくりして思わず、
「あーっ!?」
と叫んだため、陸も告白していた女の子も一斉にこちらへ振り返った。ハルカは「も〜」と、ルリの失態にがっくりした。が、ルリは周りのことは全く気にせず、事件を白状させようとしている刑事のような態度で西川に向った。
「西川くん、何してるの!?今、何か撮ったでしょ!」
ルリにそう言われ、西川は余裕の笑みを浮かべる。
「何って、今度の新聞の記事さ」
「新聞の記事って、さっきの告白シーンを記事にするつもりなの!?」
「ああ、これで陸が今年に入ってから20人目の告白を受けたメモリアル記念になるしね♪」
さすがのルリも、この西川の考えには賛成できなかった。メモリアル記念って、確かに20人から告白を受けたことはすごいが、告白をした女の子達の気持ちはどうなるのだろう?「大切な告白」を面白おかしく書かれたら、絶対傷つくに違いない。
「そんなの絶対ダメ!!告白する側の真剣な気持ちを見世物にするなんて、まちがってるよ!!」
ルリはなんとしてでも、この新聞の発行を止めたかったのだが、西川はあきらめる気なんて全然ない。
「なーに、女の子達の写真は一応モザイクかけて、顔を隠すからバレないって」
ルリが言いたいのはそういうことではない。
「そういう問題じゃないの!!恋する気持ちを、軽い気持ちで扱うのが許せないの!!」
ルリは西川のカメラをつかむと、奪おうと引っ張り始めた。だが、西川も意地があるので、カメラを絶対離さない。カメラの引っ張りあいをしているルリと西川を見た陸があわててやって来た。
「おい、ルリ!?西川も何やってんだよ!?」
二人のけんか(?)をやめさせようと、間に入ろうとした陸だったが、どっちも向きになってやめようとしない。
「ルリちゃん、君は『許せない』って言ってるけど、朝の新聞は喜んでいたじゃないか!」
「あれは、私自身のことだったから喜んだの!でも、今度のは他の人のことでしょ!?」
すると突然西川がカメラから手を離した。そのため、ルリはあやうくそのまま地面にしりもちをつきそうになったが、陸に受け止められて大丈夫だった。西川がカメラから手を離したため、ルリはてっきり「スクープを撮る」ことをあきらめたのかと思ったが、そうではなかったようだ。西川はルリに向ってビシッと指をさすと、
「じゃあ、今回のスクープをあきらめる代わりに、ルリちゃんのスクープを狙わせてもらう!」
と言い出したので、ルリは「はあ?」と首をかしげた。
「私のスクープ?」
「そう、ルリちゃんのスクープということは、生徒会のスクープにつながるからね!生徒会のスクープが撮れれば、また新聞の売上げも伸びるわけだし、おれにとっては最高の題材だもんね!」
西川に挑戦状をたたきつけられ、ルリも頭の中がカッカッしていたので、調子に乗って受けてしまう。
「別にいいよ!撮られて困ることなんか、全然ないもんっ!」
西川はニヤリと笑い、
「じゃあ、君のことをどこまでも追いかけてやるからな!」
と言ってその場から立ち去った。
「イーだ!やれるもんならやってみなさいよ!!」
ルリ自身は「やる気満々」だったが、陸とハルカは事態がまたやっかいなことになってしまったため、頭を抱えた・・。

「まったく、なに勝手なことやってんだよ!!西川のこと真に受けて!!」
生徒会室に戻ってきた陸は、ルリを叱った。陸に叱られて、シュンとしたルリだったが、それでも自分の考えが正しいことを必死に訴える。
「だって西川くんったら、恋する女の子の気持ちを無視してたんだよ!告白するのってすごく勇気が必要なことなのに、それを軽い気持ちで記事にしちゃうんなんて、私は絶対許せなかったもん!!」
「許せなかったのは分かるけど、西川の挑戦を真に受けるのが間違いなんだ!よく考えてみろ!西川に四六時中ずっとつきまとわれるんだぞ!おまけに、何を書かれるかも分からないのにどうするんだよ!」
緊迫していた空気を、ふと凪がかき消した。
「怒ってるけど、実はルリちゃんのことをめちゃくちゃ心配してんだよね、陸♪」
「!?」
凪にそう指摘され、思わず真っ赤になる陸。
「な、凪、おまえなあ―」
「めちゃくちゃ怒るってことは、それだけルリちゃんのことが心配で心配でしようがないから、イライラしてつい当たっちゃうんだよね。どうでもいいことたったら、そんなに怒らないでしょ?」
凪にそう指摘され耳まで真っ赤になっている陸を見て、ルリは「本当に陸、心配してくれているんだ・・」ということが分かった。陸の手をギュッと握ると、
「心配してくれてありがと、陸!」
とにっこり笑った。不覚にも陸はその笑顔にドキッとしてしまい、「え?なんだ?この気持ち」と一瞬疑問に思ってしまったが、すぐにそんなことはどうでもよくなってしまった。というのも、
「でもね、陸!私、スクープされるようなヘマを起こさない自信があるから、絶対大丈夫だよ!」
と言って、依然やる気満々だったからだ。てっきり反省してあきらめたかと思ったのに・・。それにルリが「自信がある」という時こそ、何か大変なことが起こりそうで、ものすごく不安だ・・・。心配からなのか、ずっと胃の辺りがさっきからズキズキしっぱなしだ・・。その時、黙っていたハルカが急に口を開いた。
「じゃあ、こうしましょう。用はルリさんがヘマを起こさなければ、スクープもされないし、西川くんも追いかけるのをあきらめることになるわけでしょ?」
「あ、ああ」
「ルリさんがスクープされるといったら、やっぱり陸とのネタのわけよね」
「たぶん・・そうだろうな・・」
「じゃあ、ほとぼりが冷めるまで、ルリさんと陸が距離をおけばいいんじゃない?」
「ええっ!?」
ハルカの提案に思わずルリは叫んでしまった。陸と距離を置くとは、つまり、陸と話したり、一緒に帰ったり、近くでゴロゴロしたりすることができない、ということではないか?それは困る!学校から帰って、夜に陸に会えないだけでも、すごくさみしいルリなのに、学校にいる時さえも陸に近づいたらダメだなんて、拷問である。だが、
「なるほど。確かにその案は良い案だな。『火のないところには煙も立たない』ってことわざでもいうし」
と陸はやる気満々である。とんでもない事態に陥ってしまい、ルリは、
「あ、でも、それとこれは・・」
とオロオロしていたが、陸に、
「これも生徒会の任務の1つだ。がんばれルリ!」
とにこっと笑顔で言われたため、もはやどうすることもできなくなってしまった・・・。1人放心状態に入っているルリを見て、凪だけは、
「かわいそうに」
と同情したのだった。

『西川くんが、私のスクープをあきらめてくれるまで、何日ぐらいかかるんだろう・・・・。陸に近づかないで毎日生活するなんて・・・、私はもう・・死にそうだよ・・・』
陸と距離を置くことになってから5日がたった。教室でぼけ〜っとイスに座っているルリを見ていたクラスメイト達は、ひそひそ話をしている。
「最近、ルリちゃんどうしたんだろう?」
「目が死んでるよね」
「生気も感じないし、なんか日に日にやつれていってるんだけど・・・」
ルリの友達の優希も、この事態を心配している。
「ルリちゃん、どうしたの?どこか具合でも悪いの?」
「あ・・優希ちゃん・・私・・、私・・生徒達のために新聞部と戦っているの・・・」
「え?新聞部と?」
優希はふと顔を上げると、ルリの背後でカメラを抱えている西川の姿が見えた。
「ええと・・だから、ルリちゃんの背後に西川くんがいるの?」
「イエス・・」
確かに陸の言うとおり、西川はしつこかった。ルリが行くところ行くところ、ずっと追いかけてくるのだ。これでは、ほんの少し陸に近づいたとしても、シャッターが押されることは間違いないため、この5日間ほとんど陸に近づけない状態だ。陸の声が近くで聞きたい。陸の手をギュッと握りたい。そんな思いがルリの頭の中をず〜っとグルグル回っているのだった。

そんなルリを追いかけている西川も歯をギリギリ鳴らしていた。
「くそ・・生徒会のやつら・・おれにスクープを撮らせないために、大人しくしやがって・・」
簡単に撮れると思っていたスクープ写真が、なかなか撮れないため、西川のイライラ感もどんどん募っていく。だが、ここで負けたら新聞部としてのプライドが許さないので、絶対あきらめる姿勢を西川も崩さない。見たところ、ルリはだいぶん弱ってきている。陸と接しない日々が何日も続いているため、そろそろボロが出てくるはずだ。その時こそ、まさにスクープの撮れるチャンスである。
「あとちょっとのしんぼうだ!おれは負けないぞ!」
そう言って西川は昼食代わりのチョコレートをバリバリ食べながら、ルリの監視を続けたのだった。

「満足?」
「はあ?」
ハルカは廊下を歩いていると、突然凪に声をかけられた。
「満足って、安藤くん何が言いたいわけなの?」
いつものようにムスッとした表情で、ハルカは凪に喰いかかった。そんな怒った顔のハルカを見るのが凪は好きだ。
「だってさ、ルリちゃんを陸から遠ざけるために、すっごい名案をハルカちゃんが考えついたらね。『スクープを撮られないためには、二人が距離を置けばいい』なんて、ほんとナイスアイデアだよね♪ま、ルリちゃんにとっては、しんどい状態だけど、ハルカちゃんにとってはルリちゃんが陸に近づかないから、すごく満足してるんじゃないかと思って」
凪にそう言われて、ハルカはムカッとした。
「どういうことよ!私は別にルリさんに意地悪をしたくて、言ったわけじゃないんだけど!」
凪は「ふうん」と笑う。それがまたハルカをイラッとさせた。
「じゃ、そういうことにしとこっか」
そう言って凪は去ろうとしたが、ハルカが呼び止める。
「待ちなさいよ!何よ、その言い方!前から思ってたんだけど、安藤くんはなんで私にいつも喰いかかってくるわけ!?」
「喰いかかってきてるのは、ハルカちゃんの方だと思うけど。おれはいつも友好的だよ♪」
凪のこんな言い方がますますハルカをイライラさせる。
「なにが友好的―」
「もうちょい、もうちょいくっつけ!」
その時、二人の声以外の声が何か混ざった。ハルカと凪はパッと左を見ると、そこにはカメラを抱えた西川が二人のけんかの様子を撮ろうとしていた。ハルカの怒りはピークに達し、
「なに撮ってんのよ!?まだこりてなかったわけ!?」
と、西川に向って手に持っていたノートを投げつけたので、そのまま西川は逃走したのである。なぜか分からないが、西川はハルカと凪がくっつくスクープを狙っているようだ。

一方、ルリから距離を置かれた陸はというと・・。
「おかしい・・」
ルリが自分の周りをうろつかないことで、静かな日常に戻れると思っていた。ほんとにこの5日間は、ルリに会う前の普通の学生生活に戻った感じだった。自分の生活を誰にもジャマされることもないし、余計な心配もしなくてもいいし、ほんとに静かで穏やかな毎日だった。しかし、心の中は決して穏やかではなかった。というのも、ルリのことがめちゃくちゃ気になってしようがないのだ。たまにチラッとルリの方を見ると、ルリはまるで魂を抜かれたように放心状態に陥っていて、日に日に弱っている様子がよく分かる。なのにギブアップもせず、毎日ひたすら耐えている様子が、陸には心配で心配でしょうがなかったのだ。そして、ルリのことを心配している自分にも正直驚いた。いつもは「うっとうしい」とか「もっと静かにしていてくれたらいいのに」と思うルリなのに、自分の周りをウロチョロしていないと、なんだろう・・心にぽっかり穴が開いたような気持ちになるなんて、思いもしなかった。この気持ちを何と言ったらいいのか分からない・・。けど、いつのまにか自分の中でこんなにルリの存在が大きくなっていたことに、陸は戸惑いを感じてしまっていた・・。

放課後、トボトボ歩いて教室を出て行くルリを、陸は少し離れたところから見ていた。するとルリは何かにつまづいたのか、コテンっとその場で大きくこけた。カバンからはノートや筆箱がバサバサっと飛び出したため、陸はそばに行って拾ってやりたい気持ちになってくる。が、その時、
「しめしめ、だいぶん弱ってきたから、あとちょっとでスクープを・・」
とすぐ近くで写真を撮ろうとしている西川の姿を見つけた。陸は思わず声をかけた。
「西川!おまえ、まだ続ける気か!?」
ルリの想い人である陸が登場したので、西川はさらにスクープのチャンスを感じ、陸を軽く挑発してみた。
「ふーん、こんなところから彼女をそっと見守ってるなんて、陸はやっぱりルリちゃんのことが大切みたいだね」
西川に「大切」と言われ、陸は自分の気持ちがさらによく分からなくなった。「大切」というほどでもない気もするが、「大切」でないとも言い切れないような気がして・・。でも、今はそんなことを考えている場合ではない。
「あのなあ、『大切』とか、そんなこと言ってる場合じゃないだろ!?追い掛け回されている人がいたら、心配するのは当然じゃないか!」
「おやおや、まだ陸は否定するのかい?」
西川はスクープのために、さらに陸を挑発してみる。
「陸が否定し続ければ続けるほど、おれはルリちゃんを追い掛け回すことになるのになあ〜」
陸はグッと手を握りしめた。
「じゃあ逆に、おれとルリのスクープが撮れたら、ルリを追い回すことをやめるのか・・?」
「ま、そういうことだね。だから、陸もいいかげんあきらめたら―」
と、西川が言葉を言い終わろうとしない間に、陸はダッとその場を飛び出し、
「ルリ!」
と呼んだ。ルリは5日ぶりに聞く懐かしい声に、「へ?」と振り返ると・・・・突然バッと陸に抱きしめられた。
「えええええええ!?」
予想外の展開に、ルリも西川もびっくり!西川は驚きのあまり、カメラを床に落としそうになった。陸はルリを抱きしめたまま、
「これで記事を書いたら、満足だろ!!満足したら、もうルリにつきまとうな!!」
と叫んだ。ルリは陸に抱きしめられ、なにがなんだかよく分からず、頭の中はパニック状態だ。なんで突然陸がやって来たのかも分からない。そして、なんで自分を抱きしめたのかもよく分からない。でも、陸の胸から「ドキンドキン」と高鳴る音が聞こえてくるので、陸がどれだけ緊張しているのかだけはよく分かる。そして、あと一生懸命なことも。
西川は、震える手でカメラを持ち上げながら、
「や・・・やっぱり陸にとって、ルリちゃんは大切な子だったのか・・」
と言ったため、陸は内心『もうこれ以上、おれに何も聞かないでくれ〜!!』と叫びたかったが、この場をなんとか切り抜けるためにも、
「そ・・・・そ・・そうだよっ!!」
と叫んだ。ルリを抱きしめたことだけでも、陸にはせいいっぱいのことだったのに、この上『大切な人」宣言までさせられ、陸としては恥ずかしさのあまりおかしくなりそうだった。幸い、西川はこれで満足したのか、
「分かった!それを記事にしてやるからなっ!とうとうおれの勝ちだ!!」
と喜びの声を上げると、そのままどこかへ走り去ってしまった。その瞬間、
「終わった・・」
と陸はホッとしたあまり全身の力が抜けていくような気がして、ルリを抱きしめたままその場に座り込んだ。だが、すぐにハッとすると、
「うおーっ!?す、すまん!!」
とルリをパッと離し、2,3メートル後方へ飛び跳ねた。陸らしからぬあわてた行動にルリは頭の中に「?」マークが飛び回った。陸は、ルリを抱きしめたことをどう説明しようか頭の中を整理していると、ルリがほおを赤らめながら話し出した。
「し・・知らなかったよ・・」
「え?なにが・・・?」
陸は何か嫌な予感がした。
「だって・・だって・・・陸が、私のことを本当に好きだったなんて!!」
やっぱり勘違いしていた!!ルリは陸のとったとっさの行動が、「本当のこと」だと思い込んでいる。
「ち、ちがうんだ!!ルリ!これにはわけがあって―!!」
あわてる陸にルリはググッと顔を近づけ、ちょっと怒った表情を見せる。
「ちがうって、なにがちがうの!?ルリのこと抱きしめたじゃない!!はっ!もしかして、遊びだったの!?」
「遊びって、どこの変なドラマ見て言ってんだよ!?遊びとかでもなくて、その、ほらっ!」
「遊びじゃなくて、本気でもなかったら、何なの?」
ルリがプウッと口をふくらませて怒った顔を見せる。陸もルリに問い詰められ、かんねんしたようで、ゆでだこみたいに真っ赤になりながら言った。
「だって、ああでもしないと、西川がルリを追いかけるのをやめないだろう!?そのっ、おまえ、ここんとこなんだかずっと放心状態だったし、これ以上がんばるのも大変かと思って・・そ、それだけ!!」
陸の白状に『なあんだ・・好きだから抱きしめてくれたんじゃなかったんだ・・』とちょっと残念に思ったルリだったが、でも、すぐにうれしくなってきた。だって、いつもまじめな陸が、捨て身の行動で自分のことを助けてくれたから。どれだけ陸が恥ずかしかったのかは、真っ赤になった顔を見ればすぐ分かる。それでも自分を助けてくれた陸のことを、ルリはますます好きになった気がした。この体全体にみなぎる「大好き」のパワーが、ここ5日ほどぽっかり空いていたルリの心を、一気に幸せな気分で埋め尽くしていったのだった。

さて、翌日、陸は重い気分で学校にやって来た。校門をくぐる前に、学校を見上げてため息を1つついた。
「はあ・・昨日はルリを助けるために、やむをえない行動をとったけど・・・」
『会長・ルリ 校内の放課後で堂々と抱き合う!』みたいな新聞が掲示板にでかでかと貼り出されている様子を想像しただけで、陸はカーッと真っ赤になった。
「人のうわさも75日っていうけど、どれぐらいでこのうわさは消えるかな・・」
そんなことを考えながら、校門をくぐり、新聞が貼られているであろう掲示板に向った。だが、そこには誰も人が立っていなかったし、生徒達も陸を見てうわさを立てたりしてない。
「あれ・・・・?おかしいなあ・・」
そう思いながら、掲示板を見た陸だったが、そこには新聞は一枚も貼ってなかった。陸は驚いて、何度も掲示板をすみからすみまでチェックしてみたが、やはり何も貼ってない。首をかしげていると、
「新聞ならないぞ」
と後ろから西川がやって来た。
「西川、記事を書くのが間に合わなかったのか?」
陸はてっきり、刷るのが間に合わなくて発行されてないのだけかと思ったが、そうではなかったらしい。
「バカ!間に合わないわけないだろう!このぼくがそんなヘマをすると思うか!?」
「え?じゃあ何で記事にしなかったんだ?」
西川は陸を見て、「フン」と言った。
「あんなウソくさい演技したネタなんかを、記事にするほどプライド低くないんだよ!おれは真実しか追わない男だからな!」
「西川・・」
どうやらこの男にも、「真実を追う」というジャーナリストの血が流れていたようだ。陸は少しだけ西川のことを見直しかけた。が、すぐに、
「だから、これからもビッグな校内スクープを追いかけ続けるから、覚悟しとけよ!!」
といつものテンションで言い出してきたので、陸の考えはすぐ変わった・・。
『やっぱり、こいつはただのしつこい「追いかけ魔」だな・・』
これからも生徒会と新聞部のスクープ合戦は続きそうな予感がした陸だった。

ルリと陸のことは記事にならなかったが、反対側の校舎の掲示板にはまたもや、
『栗原副会長☆安藤書記 仲良くけんか!?』
という新聞が貼り出されていて、ハルカがまた怒ったのは言うまでもない。そして、この新聞がきっかけで校内にはどんどん「ハルカ・凪 ラブラブ説」が広まっていくことになるのだった。

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