BENJAMIN
ベンジャミンが家にきた日、はっきり覚えていない。店先に顔を出し生肉を食
べていた日々が何日か何週間か続いた後、ある雨の夕方、「雨が止むまで!」と
いう口実で家の中に入れて一緒に暮らし始めたことはハッキリと覚えている。
でも、それが何時の日だったのか? 秋口だったような気もするし、未だ半袖
姿であったような気もする。
アッと言う間に歳月が流れ去ってしまっていた。海水浴、五色台、いろいろな
ところにベンジャミンと共に出かけた・・・・・どれ一つとしてハッキリと思い
出すことができない。
一体彼と何をしてきたのだろうか? どうしてハッキリ思い出すことができな
いのだろうか・・・・・?
白い体毛に包まれ、短い肢でまるでステップを踏むように軽やかに走っていた
ときには見事なほどのすばやさで目標物を追いかけていたベンジャミン!
春日川の河口で波間に浮いている鳥たちを追いかけて海に入り、私が呼び戻す
まで随分沖に泳いでいったベンジャミンの姿はいまでもはっきり思い出すことが
できる。でもそのほかのことは何も思い出せない・・・・・
・・・・・ベンジャミン・・・・・