薪 作 り (二)



 斧が狙ったところから外れ柄が折れたのが三回、チェンソー
の刃の研磨が拙く、研いでも研いでも切れ味が落ちたまま、し
かも真っ直ぐに切れなくなったり等々、道具たちの反乱に遭い
ながらの薪作りは決して楽しいものではなかった。都会生活と
の落差の大きさというか、全て自分がしなければ何も前に進ま
ない田舎暮らしの現実が徐々に身に沁みてくる。

 元々機械をいじるのが好きだったのもあるのだろうか・・・
いろいろな小道具を買い揃え、徐々にではあったが薪作り作業
がスピードアップしていったのは、二シーズン目に入る頃であっ
た。

 翌年一月、山荘前の山の持ち主が「山の手入れ」、つまり間
伐に連れて行ってくれるようになった。山荘の門を出て四、五
メートルで山道に入る。急な斜面を二百歩で伐木現場に着く。
途中五十歩も歩くと息が上がり休憩であった。

 くぬぎの木の切り倒し方・・・切る方法から始まり、チェン
ソーの位置や方向、伐木の後の小枝の始末等々をみっちりと教
えて貰う。長さ九十センチの椎茸のほだ木を百本ほど切り揃え
る頃には、チェンソーの使い方も、木の切り倒し方も何とか様
になってきたようであった。一人で山に入り伐木を許された!
しかし、既に三月を通り過ぎ四月に入っていた。伐木のシーズ
ンは終わり、苦手な蛇君のシーズンが目の前に来ていたのであ
る。腕試しは十一月末までおあづけとなった。
 庭に山積みにされた原木を前に溜息が漏れる。チェンソーで
の作業に続く薪割りが大変である。電動の油圧式薪割り機があ
ることは知っていたが、どの程度の能力かまるで解らない。輸
入代理店を調べ、一番近い高知営業所に電話を入れて尋ねる。

 なんと同じ脇町にサンプル商品を置いているので週末に山荘
まで持ってきてくれて実演してくれるということになった。当
日およそ六十キロの小型電動薪割り機が原木の前に設えられ、
四十センチに切り揃えられた節だらけのくぬぎの根に近い部分
がいとも簡単に割られていった。

 三十分もたたない頃価格交渉が成立し、週明けには東京から
薪割り機が送られてくることになった。二十万円超のイタリア
製薪割り機を購入することが決まったのである。

 いったい何をしていたのであろうか・・・斧での薪割り作業
の十倍はスピードが上がり、失敗は皆無に近く疲れも殆どない。
椅子に座って薪を機械に乗せる。後はスイッチレバーの操作だ
けで直径三十センチを超える原木も簡単に二つに割れる。希望
の太さになるまでこの作業を繰り返すだけであった。電動モー
ターであるため音も静かで長時間の作業にも支障はない。前年
の薪割り作業と比べると雲泥の差であった!

 次の年、同じ能力の中国製薪割り機が五万円を切る価格で販
売されることは、この時点では全く知らなかったことを除いて
薪割りは順調そのものであった。
電動薪割り機