(ある変わった耳鼻科の先生の独り言)

 

高松の西5キロの所(香西南町)に耳鼻咽喉科クリニックを開業して
あっという間に約10年が経ってしまいました。 
毎日いろいろな事を考えながらの診療ですが,最近素直に
考えている私の独り言です。

               

1、救急医療について


地域域医療を行なっていく上で救急医療は非常に重要な事と
考えて、 開院当初から医院の2階に住んで出来るだけ
耳鼻科の救急(耳が痛い、魚の骨がのどに刺さった、鼻出血など) 
についての医療の要求に答えようと頑張って来たつもりです。

ところが日時が経ってくると,あまりにも患者さんの身勝手と思わ
れるような要求に多く接してきましたので,しだいに救急医療を
真面目にしていこうという気持ちがなってきたというのが実情です。
お互い困った時には親身になって助けてあげたい という気持ちは
医者ですから特にありますが,時に失礼な電話が多くて
がっかりしてしまいます。

電話がかかってきて「子供が耳が痛くて泣いて困っていますが
今から診てくれますか」という内容の場合がよくあります。
突然の電話ですので相手が誰で,いつ診察していたのかが気に
なりますが自分の名前や住所を言ってくれる場合はほとんど
ありません。
まして「すみませんが」の一言を言っての電話は本当に少ない
ものです。

まず名前くらいは最初に言って頂きたいし(電話の常識),出来れば
一言 「時間外で本当に申し訳ありませんが」 と言われると
「はい どーぞ気をつけていらっしゃって下さい」と気持ちよく応対
したいと思っていますが (皆さんはどう思われますか?)
医者も皆さんと同じく仕事が終われば解放されてのんびりリラックス
していますのでその点は御理解下さい。

でも最近はあまり救急医療の要求に充分対応出来ていませんので
えらそうな事は言えません。
(医者になりたて,開業したての頃の初心に帰ろう・・・と思いつつ)

       
          

2、説明と同意(インフォームドコンセント)について


医療を行ってゆく上で,最近は特に患者さへの病状及び治療
に関する説明とそれに対する納得がない場合は医療行為は
出来ません。
当り前の事ですが,今までは大多数の医者と患者さんの間には
基本的な信頼関係があって説明を充分しなくてもおまかせします
というケースが多かった様に思います。

特に癌の宣告について、ある人は医者が悪意で病名を隠していて
けしからんという意見が現実にあり真面目な先生ほど悩みます。
癌のなかには(悪性度が)いろいろあり必ず治療で治るという場合 
は本人に癌であると話をしてもショックをあまり受ける事なくスムーズ
に治療を受けて退院となりますが,致命的な状態の場合は正確な
説明をためらうことがよくあります。
医者の立場から正直な話をしますとそんな事実は総て話をした方が
よっぽど気持ちが楽になりますが(皆様はどう思われますか?)

薬についての説明ですが,この点はなかなか難かしい問題です。
今の保険制度では製薬メーカーは効能書きに虫眼鏡でないと
読めないほどの多くの細かな注意事項を書いて持ってきます。
恐らく副作用の項目だけを患者さんに説明をすると誰も薬を
飲まないと思います。

薬の責任を負うのが厭な製薬メーカーと厚生省はありとあらゆる
副作用情報を羅列して,もしその情報を知りながら医者が投薬したら
総て医者の責任ですと本当に身勝手な論法で対応しています。
そんなに国民の為にならない薬なら厚生省は認可しない方がいいの
ではないでしょうか ? 
良く効く薬は(当然の事ですが)必ず多くの副作用を持っています。
医者の仕事はいかに少ない副作用で有効に薬を使うかという事
ではないでしょうか。
(良く効く薬を使って出来るだけ短期間で病気を治す事が大事です)

 
          


3、医者の常識は非常識(?)


名古屋大学医学部の元教授日高先生の新薬開発汚職事件
大阪の安田病院院長の診療報酬詐欺事件
帝京大学の安部先生の血友病患者へのエイズウイルスの投与事件
医療機関の脱税の報道
などなどあまりにも世間の常識とかけ離れた事件を目にして
唖然としてしまいます。

ごく身近な開業医の先生方の中にも一般庶民からみると驚くような
派手な生活をしていろいろ噂話になる場合があるように思いますが
皆様はどのようにお考えでしょうか ?
医者の自分が言うのも変ですが確かに医者は変わっています。
大学を卒業すると直ぐに先生先生と呼ばれ,人に頭を下げる事も
周りに気を使うことも少なく,
患者さんや薬屋さんから物を貰うことに慣れっこになり
一般の社会人とはかけ離れた常識(非常識)を持ってしまうようです。
もちろん本当に立派な考え方で常識をもった行動をしておられる
先生方もたくさんいる事も事実ですので念の為付け加えておきます。

という私自身もかなり非常識な点がまだまだ多くあると思いますが
出来るだけ常識人になれるように小さな努力はしているつもりです。
患者さんから物を頂いたらなんらかの形でお返しする。
お年寄りの患者さんが亡くなったら気持ちを伝えるべく行動する。
(親しい患者さんが亡くなるのは本当に寂しい事です)

出来るだけいろいろな職種の人とお付き合いをする。
薬屋さん,医療器械屋さんとは節度を持って付き合う。
職員に対しては出来るだけよい待遇をして良い関係を作る。
などの点を心がけるようにしています。
(でもまだまだ甘いかな?)

         


4,ゴミ問題に思う


毎月一度,私は自分の車に医院の中で出てくる燃えるゴミを積んでは
消却場へ持って行って捨ててきます。
自宅で処分出来ませんので捨てにゆくわけですが,
昔(私の子供の頃)は燃える物は夕方になったら風呂を沸かすのに
利用するし,人間の出した物は畑の栄養になって野菜が出来て、豆腐
油揚げなどの買い物は容器を持参するのであまり無駄がなかった
ような気がします。
便利になったのか,不便になったのかやたらとゴミが貯まってきて
処分に困ります。
車、電気製品,家具,調度品などがまだまだ使えるのに少し調子が
悪いとなるとすぐに買い換えられてしまいます。

確かにこの社会は消費がないと経済活動が成り立ちませんので品物
を売るべく仕掛人達がいろいろ知恵を絞っては新製品を出して宣伝を
して少しでも多く儲けようとします。
そこでまんまと宣伝に乗って品物を買う(買わされる)わけですが,
私の様な変わった人間が一人くらいいても許されるのではと特に
電気製品は壊れたら修理をして使う事にしています。
(新製品より修理代が高い時もあるので少し問題ですが)

そこでマイカーは15年,パソコンは10年,冷蔵庫は20年,
炊飯器は27年,ビデオレコーダーは15年と,とにかく機械の寿命と
思われるまで大事に使ってあげる事にしています。
開業の時に買ったNECのパソコン(9801ES)はもっぱら会計処理
と給料計算で大活躍しています。
(ところが2000年問題で会計ソフトが使えなくなりました)

さすがにパソコンは日進月歩の物ですので今使っているのは
ウインドウズ95の富士通のディスクパワーです。(下の写真)


皆さん出来るだけ良い物を大事に使う主義でこれからは
極力ゴミを少なくして,リサイクル出来る製品(紙、瓶など)を積極的に
使うようにしませんか
(私は戦後の物がない時代に育ったので特にこのように思います)
 
ゴミ問題で特に厭な事は車からのタバコや空き缶の投げ捨てなどで
そんな場面を目にすると一日中ムカムカしています。
それと決められた日以外のゴミ置き場所への不法投棄は
本当に頭きます(いったい誰が片付けするのだ)

(日本人の教育のなかで一番大事な部分が欠落している気がします)




                

残念ながらコーヒーを差し上げれませんが少し休憩でもどうぞ

それよりやっぱり

             
             こちらでしょうか ?? 
  



5、仙台の学会へ行ってきました。

平成11年5月20日(木)から22日(土)の3日間 医院を休診にして
杜の都 仙台へ学会出張いたしました。
伊達政宗ゆかりの歴史と浪漫の都仙台は100万人が住む落ち着い
た雰囲気のするいい所でした。
立派な欅の並木路(青葉通り,定禅寺通り)が素晴らしかった。
初めて行く所ですので夜行の寝台列車サンライズ瀬戸ではわくわく
して(?)あまりよく眠れませんでした。
歌で有名な広瀬川のすぐ横にある仙台国際センターでの日本耳鼻
咽喉科学会総会ではいろいろな最近の知見には驚きました。

変貌する急性感染症(臨床セミナー)

急性中耳炎の反復,難治化の原因として主要な上気道炎の起炎菌
(肺炎球菌,インフルエンザ菌)の薬剤耐性(薬が効かない)の報告
が杉田先生(杉田耳鼻咽喉科医院)及び末光先生(東北労災病院)
からされました。
(治りにくい中耳炎の子供達が増えているというのが実感です)

日本は世界で一番抗生物質を多く使っている国ですが,医者は
もっともっと国民の健康を真剣に考えて対処する必要性があります。
医者は安易に薬(抗生物質など)を処方してはいけない。

患者さんも極力薬に頼らずに,自分の自然治癒力で病気を治す
よう生活習慣(充分な睡眠,バランスの良い食事,適度な運動と
適度な休養,タバコを控える,適度なアルコール,ストレス解消など)
を積極的に変えるように努力をする事が大事だと思います。
(休むに休めない忙しい現代社会が病気を増やしています?)

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今年のスギ花粉飛散は例年並みでした。

今年は杉花粉が大量に飛散した4年前の20%ほどで,案外
症状が軽くてすんだ花粉症患者さんが多かったとの事でした。
でも今年は5月の連休過ぎからカモガヤ(稲科の雑草)花粉が
大量に飛んで目の痒み、鼻症状で苦しんだ人が多くいました。

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医療器械のコーナー

学会での楽しみの一つは最新の医療器械の展示を見ることですが
今年の話題はレーザーとシェーバーメスでしょうか
レーザーメスはいままで 炭酸ガス,YAG,KTPなどのレーザー
が商品として既に出ていますがあまりにも大きくて,重くて
(使いにくく)高価ですのでなかなか手がでませんでしたがかなり
コンパクトで安い製品が出てきましたので購入を検討中です。

(それにしても医療用と名がつけばなんと高価なことか)

耳鼻科(開業医)では主に鼻の粘膜を焼灼したり,いびきの治療に
使いますがその効果は70%から80%との報告でした。


6、移植医療について思う。

平成11年2月28日,高知赤十字病院で臓器移植法施行後初めて
脳死の患者さんからの臓器摘出が行われました。

体外受精の問題(夫婦間に限るべきか否か)遺伝子治療の問題
クローン動物の誕生,バイオテクノロジーの問題,移植医療の開始
などが現実のものとなって今までのような医学(自然科学)の世界
だけでは解決しない難しいテーマ(生命倫理)の答を一刻も早く出す
必要に迫られているような気がします。
今までは神のみぞ知るといった,人間の手に届かない範囲の問題
でしたが,現実にこれらの領域に関わってしまいました。
(本当は関わるべきではなかったのでは ?)

未来の人間は・・・・・(想像ですが)
クローン技術で創られた最上級の松坂牛とバイオの技術で創られた
バカデカイ野菜や果物を毎日食べて,空気はダイオキシンや炭酸
ガスで汚れて有害の為,外出時は皆が防毒ガスマスクを装着し,
生活は殆ど家でのパソコンとテレビ電話を使っての仕事や勉強,
成人になったらクローン技術で自分と全く同じの人間を造り,病気
に対してはならないように遺伝子(癌抑制遺伝子など)を組み込み,
高齢で死にそうになるとクローンで創った人間からの臓器を移植して
エンドレスに生きる。
こんな人生が本当に幸せなのでしょうか(皆さんどう思われますか)


        移植医療に伴う問題点 


拒絶反応は本来動物の体の自然な働きです。
免疫抑制剤とステロイドホルモンでこの生理的な働きを止めてしま
う事は免疫力が落ちて感染症やガンにかかり易くなり,意識障害,
精神的変調(うつ状態)などのさまざまな副作用を考えるとかなり
無理があると思います。
(私のようなシンプルな人間は・・・・・自然体がベストです)


脳死の判定( 生きた体と死んだ脳=死体 である)
この定義はもし肉親が対象となった時に即座にイエスと言える人は
どれほどいるのでしょうか ?
この脳死の判定を厚生省が積極的に推進した背景には脳死の患者
さん及び透析患者さんの莫大な医療費の問題を考えたのでは ?
それと移植医療で日本の先駆者たらんと奔走した移植医の功名心
名誉欲がありはしないのだろうか ?
(和田心臓移植以来,殺人罪で告訴されてきた多くの移植医がいる)


本当に移植しか助かる見込みはないのでしょうか 
人工臓器の開発や脳低温療法(日大)など世界に自慢出来る治療
方法が確立されつつあります。
(人の死を期待するような移植医療は問題あり)

脳死の人の命は移植を受ける人の命より大事でしょうか ?
これからどんどん移植が盛んに行われるようになると,恐らく脳死の
患者さんは(脳死は人の死ですから)人工呼吸器をはずされてその
時点で死亡となってゆきます。
医学の進歩は時として画期的な治療方法が生まれて,今まで不治の
病だった病気を治してゆく場合がありますが,脳死と判定された人が
将来,充分生活をしうる状態にならないとは限りません。
もしそのような事態が起こった時には移植の為に,又は脳死の判定
で死に至らされた人の事はいったい誰が責任を持つのでしょうか ?
(ドナーにも人権はある)


移植を受ける予定のひとはドナーになる可能性が高い。
本来人の臓器をもらって自分が助かろうと考えるのは非常に自分
勝手な考え方だろうと思います。
立場によりその考え方は全く180度異なると思いますが,少なくとも
移植を受けるつもりの方はドナーカードを持つべきだろうと考えます。



臓器移植しか助かる方法がないと宣告された人が移植医療のお陰
で助かっていて良かったなーと思う反面果たしてこれでいいのかなー
と素朴に疑問に感じる時もあり,最近思っている点について羅列させ
ていただきました。

移植法案が国会で可決されたいきさつを見てもわかるとおり
(衆議院厚生委員会で充分な審議を尽くされないまま,国会で投票)
医学,宗教、倫理,哲学の世界で今も根強い反対意見がありますが
移植医療の今後を注意深く見守ってゆきたいと思っています。
密室での医療ではなく,その情報を出来るだけ公開して移植に伴う
功罪についてもっともっと現実的な論議を行なう必要があります。
移植医療がビジネスになるような事態にだけは決してならないように
したいものです。




            

ある変わった耳鼻科先生の独り言はこれでおしまいですが
  よろしかったらお便りください           


                           ( 平成11年6月 )