あまのや温泉
(Amanoya Onsen)



 JR予讃線伊予北条駅を降りて西へ少し歩き、旧国道196号線交差点から右を見てみよう。
 お風呂には不釣合いな看板が点滅し、「あまのや温泉」の方向へ導いている。看板には「健康ランド」「家族湯」と書かれているので、銭湯と違うのではと戸惑いながら中に入ってみると、全国共通の「ゆ」の字があるので安心した。
 ここのすべての駐車場や出入り口には屋根がかかっている。さながら「北条ドーム」といった感じだ。駐車場は屋根があるため、少し薄暗い感じがする。
 入り口上には「あまのや温泉」の看板、営業時間が書かれていている。家族風呂や朝風呂は電話予約が必要なようだ。

 入り口を入ると正面に受け付け、左に湯券発券機、その奥から男湯、女湯の入り口だ。
 脱衣場は約10畳ほどの広さ、右上を見て見よう、昭和初期を感じさせる扇風機が2つ、 そのスイッチは脱衣場の上にある。このスイッチは常連しかわからない。

 浴場に入るためドアを開けると、外に出た感じがする。それもそのはず、空間が抜けている。すぐ左側にサウナ、水風呂そして打たせ湯、右にイベント湯がある。サウナは4から5人が定員、水風呂は浅いので「どぶん」というわけにはいかない。
 このエリアで驚きがあった、それは打たせ湯、「10分以上続けて使わないで」の趣旨の張り紙がある。この張り紙があるということは、打たせ湯を長時間使用するお客さんがいて苦情があったということだ。
 天井から落ちる湯を見て驚嘆した。その湯筋が一糸乱れぬ直線、これまで見た打たせ湯は湯が飛び散っていたが、ここの打たせ湯はオリンピックの飛び込み選手が飛び込むように上から下へ一直線、何の抵抗もなく湯が水面に落ち、水しぶきは最小限だ。
 そのためか、一点集中の究極の打たせ湯が楽しめる、肩、腰、首、足と体を回していると時間を経つのを忘れてしまう。
 なるほど・・・・ ここでの10分は一瞬だ。

 イベント湯の上にテレビが置いてある。その横にリモコンがある。入浴者が自分で選局できるシステムだ。(大体はお店の人にチャンネル権がある。)サウナの中からそのテレビを眺めることができる。サウナの中にスピーカーがあるので音声を聞きながらテレビを観賞できる。(近すぎず、遠すぎず抜群の距離間)

 サウナを楽しんでいると一瞬でこの人は常連だとわかる出来事があった。それは、このお方がリモコンでサウナの外でテレビのチャンネルを替えてしまったことだ。
 サウナの中の人間は今の番組を楽しんでいるのに・・・。 横の人が「あの人はこの時間には必ず、料理番組にかえるんやわ・・」
 あきらめでもないこの一言に、この人達は「常連だ」と・・・

 もうひとついいシステムがこの「あまのや温泉」にある。初めての経験であり、このシステムを世界標準にすべきだと思った。
 サウナ代は別途100円必要だ。100円支払うとバスタオルを貸してくれる。最初このバスタオルの意味がわからなかった。サウナに入ってわかった。みんなバスタオルを腰に巻いて入っている。バスタオルはサウナ料金別納の証であった。こうすると室内もぬれないので、敷物を頻繁に交換する必要はない。

 この通好みの空間をもう少し進むと、浴槽、電気風呂、洗い場がある。
床、壁は御影石で出来ている。浴槽の半分は浅く、子供が入る浴槽だろう。おしりの青い子供達がそこで遊んでいて、親は深い方でくつろいでいた。深い方は4人も入ればいっぱいで、みんなで向かい合って四隅に入浴する感じだ。あまり広くもない浴槽のせいか、適度に湯がオーバーフローして、その湯気が趣を醸し出している。

 例のバスタオルで体を拭いていると、常連らしいしぐさで服を着ている人が、のれんから顔を出し、番台向かって何かさけんだ。
 よく聞き取れなかったが、しばらくすると番台の人が缶ビールを持ってきた。「一番搾り」だ。 番台の人曰く、「薬」らしい。
 豪快に飲み干し、至福の顔で帰り支度をしている。この人も「常連」だ。


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
北条市辻1407-1 400円 15:00〜24:00 不定休

取材:銭湯愛好会



 
 戻る