福の湯
(Fukunoyu)



 小川にはブリヂストンの東京工場/技術センターがあり、ブリヂストンの「ゴムとタイヤの博物館」、ブリヂストンマーケットなどもあり、まさにブリヂストンの城下町といった趣である。ブリヂストン、英語で書けば「Bridge Stone」即ち、「橋石」。ブリヂストンの創業者は「石橋 正二郎」。なるほど、今更ながら納得である。

 過去には、このブリヂストンの工場労働者が通ったのではないかと思われるのが、今回紹介する福の湯である。ブリヂストン東京工場から見て、府中街道の向こう側、西武鉄道の手前側のすぐ近くに、この福の湯がある。

 各家庭に風呂がなかった時代、銭湯は生活の必需品だったであろう。私がかつて住んでいた滋賀県大津市堅田の昭和園も、東洋紡績の社宅街で、社員専用の浴場があった。私が物心がついた頃はもうその浴場は閉鎖されていたが、そんな昭和園の社員専用浴場の雰囲気を持っているのがこの福の湯であると私には思えた。

 銭湯が生活必需品でなくなった現代、銭湯はお高い入浴料をとられる場所になってしまった。つまり、銭湯は一種の贅沢なレジャーになってしまったのだ。少なくとも自宅に風呂がある私にとっては。
 となると、銭湯にはレジャーとしての豊かな時間を過ごせる何かが欲しくなる。それは、贅沢な場所の使い方をした広々とした空間。非日常性を感じ取れる古風な空間。静かに流れるような時。それらを備えたのがこの福の湯ではないかと思えた。福の湯の女将さんは私がはるばる保谷から来たと聞いて少々目を丸くしていたが、、、。

 今日は一つ大きな謎が解けた。私はいつも小学1年生の長男と、幼稚園年長組の次男を連れて銭湯へ行く。そうすると、入浴料は400円+180円+80円=660円になるはずであるが、どこへ行っても580円しかとられない。即ち、幼稚園児である次男はいつもタダなのである。その理由が今日わかったのである。
 東京都浴場組合が、「親子ふれあい入浴」を推進しており、親1人につき小人(6歳未満)2人まで無料になっているのだ。これを知っている人はそう多くはいまい。

 さて、福の湯のスペックを紹介しておく。脱衣室にはロッカーが33箇所。浴室の洗い場は20箇所。シャワーブースが1箇所。サウナはなし。洗面器は黄色いケロリン桶。もうおなじみになってしまった「多摩クリスタル」の広告もここにある。そして、平成14年9月と記された「大沼公園」の壁画。多分これは、北海道・駒ヶ岳である。練馬区のたつの湯にも同じ構図の絵があったが、こちらの方は山頂がより鋭く描かれている。

 浴槽は浅風呂と深風呂。浅風呂はミクロ気泡風呂と赤外線風呂。深風呂は超音波気泡マッサージ器と書かれている。湯温は44℃。かなり熱い。泡の量はかなりのもので、これだけの泡を発生させるのにかなりの電気代がかかっているのではと推察する。

 女将さんによれば、脱衣室の古いマッサージ椅子は最近壊れてしまったのだという。それでも脱衣室からこの椅子が消えないのは、この椅子が既に脱衣室の「あるじ」になっているからであろう。

 風呂からあがると、外は雨である。女将さんが「要らない傘を差し上げましょうか?」と声をかけてくれる。暖かいサービスに感謝である。


(番台様、取材へのご協力ありがとうございました。)


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
小平市小川東町1-35-5 400円 × × 15:30〜23:00 金曜日

取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2004年9月23日(木)



 
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