北野浴場
(Kitanoyokujo)



 葛飾区と言えば、柴又。
 柴又と言えば、寅さんの故郷。

 ここはまさに昭和にタイムスリップしたような下町。下町の中の下町である。寅さんゆかりの帝釈天(「たいしゃくてん」と読む、正式には日蓮宗の名刹「経栄山題経寺(きょうえいざんだいきょうじ)」)、その参道、参道にある名物「草団子」屋、東京で唯一残された手漕ぎ船の渡し「矢切の渡し」。どれをとっても、江戸下町の香りがする。ちなみに、柴又という奇妙な地名は、もともと「嶋俣(しままた)」が柴又に変わったものらしい。

 今回はこの柴又にある北野浴場を紹介する。

 帝釈天、矢切の渡しは柴又駅の東側にあるが、北野浴場は柴又駅の西側にある。細い路地を進むと白いタイル張りの北野浴場の入口が見える。暖簾をくぐり、下駄箱に靴を入れ、右側がロビーである。ロビーはちょっと圧迫感があって狭いものの、正面にテレビ、ソファーがあり、利用者の憩いの場所になっている。ロビーには、石鹸、シャンプー、ジュース、ビール、牛乳の類が販売されており、ロビーの左手に番台、番台を挟んで両側に男湯、女湯の入口がある。

 脱衣室に入る。
 脱衣室は、60人分くらいのロッカーがあり、コイン不要でちゃんと鍵がかかる。天井にはかなり年季の入った格子状の木の内装とファンが見える。年代ものの壁掛古時計の前には何やら「森林浴発生器」と明記された機械がどっしりと乗っかっている。これがこの浴場の秘密兵器であるらしい。

 浴室に入る。
 洗い場は全部で20箇所くらい。その他にシャワーブースも1箇所ある。カランはかなり古いものであるが、水量、水圧、水温ともに快適である。床、壁、浴槽はすべてタイル張りで、これもかなり古いようなのだが、きちんときれいに維持されていて、実に気持ちが良い。そして洗面器は黄色いケロリンである!

 浴槽に入る。
 浴槽の温度計は45℃を示しており、ちょっと熱めに感じた。ジェットバスで体のあちこちを刺激してリフレッシュできる。別室には森林浴の風呂がある。こちらは少々温度が低めで快適と感じた。森林浴風呂の隣が水風呂で、さらにその隣がオプション料金要のサウナ。水風呂温度計は22℃を示していたが、冷たくてとても中には入れなかった。無念。

 浴場を後にし、再び狭い路地を進む。柴又はやはりタイムスリップした町だった。ここには気持ちよく置き去りにされた昭和が残っている。


(番台様、無理やり番台様の写真撮影をさせていただき、誠に失礼いたしました。)


この緑色のボックスが森林浴発生器


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
葛飾区柴又1-26-8 600円 × 15:30〜24:00 木曜日
(祝日は営業)

取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2004年7月4日(日)



 
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