清の湯
(Kiyonoyu)



  清瀬市の名の由来は、旧上清戸村・中清戸村・下清戸村に見られる清戸の「清」と、柳瀬川の「瀬」を合体させたもの、との説があるらしい。
 今回紹介する清の湯は、西武池袋線・清瀬駅の南口から歩いて5分ほどのところにある。ここは小金井街道と商店街「ふれあいどーり」に挟まれた一角である。清の湯の前の通りは特に狭く、人間がやっと歩けるほどである。この狭い路地に、コインランドリーと清の湯の破風造りが向かい合って建っている。

 清の湯の創業は、昭和27年というから大変古い銭湯である。その破風の部分にある彫刻をよく見ると、鶴が「清の湯」とかかれた札をくわえている。実にご立派である。ただ、窓にはことごとくトタン板が貼られている。隣に高層のビルが建ってしまい、覗かれる恐れが出たためであろう。なんとも痛々しい。日本の建築基準法、都市計画法は、このようなことまで考えられていない。文化財としての銭湯を保護する方法はないものだろうか。
 銭湯の外には自動販売機が3台あるが、脱衣室にも飲み物の販売がある。ビールが250円、ジュースが110円、ヤクルトが50円とある。なんとも良心的な価格である。その他脱衣室には石鹸類や、下着の販売もある。壁には大きな古時計が居座っており、今でも正確に時刻を刻んでいる。あっぱれである。
 ロッカーは52個。洗濯機は2基あり、片方が150円、もう片方が200円とある。早い者勝ちで150円の方を利用できるということであろうか。今日は特別に冷たいお茶のサービスが無料であった。

 脱衣室では、番台からはロッカーを挟んで反対側のロッカーを陣取った。下半身を番台から見られないようにするためである。しかし、浴室の入口にちゃんと丸鏡があって、番台から見えるようになっているではないか。さすがに番台には死角はない。確かに番台に死角があればそれは監視台としての機能を持つ「番台」とは言えない。私がバカだった。

 浴室に入り、まず目に飛び込んでくるのは「18歳未満立入禁止?」というサイン。「えっ銭湯って年齢制限あったけ。自分は関係ないけど。」とぎょっとしてしまった。しかしよく見ると、その左側に「ファッションヘルス・多摩クリスタル」とある。うーむ、これはジョークだろうか。なかなか良く考えられた広告である。「18歳未満立入禁止?」と書かれていなければこの広告をしげしげと見る人は半分もいまい。「18歳未満立入禁止?」と書くことで99%の人がこの広告を見入るのである。

 浴室の壁画は平成15年8月と書かれた野尻湖。カランが29箇所。シャワーブース、サウナはない。浴槽は2つ。その浴槽は温度表示が37℃。しかし、45℃はゆうにあると思えるほど熱い。「東京の人はこれが37℃の湯温と思って平気でこんな熱い湯に入るのだろうか。」と思っていたら、他の客も皆「熱い、熱い。」といって水栓の近くでちょこまか水を出しながら入っている。私はそれを見てちょっと安心した。この湯を熱いと感じるのは関西人である私も東京の人も同じであったのだ。しかし、熱い湯を苦手と思うか、うれしく思うかは別である。東京の人は熱い湯でもさっと入って、さっと出て行く。だらだらと長湯することはないようだ。

 今日は運が良く薬湯の日。「行者の湯」と称し、黄柏(おうばく)、独活(どくかつ)、当帰(とうき)、川?、芍薬、陳皮(ちんび)、艾葉(がいよう)、紅花(こうか、べにばな)の8種類の成分が入っている。しかし、浴槽を見ると湯は透明である。薬湯ってもっと茶色いものと思っていた。そうすると別の客が、薬草が入っていると見られるガーゼの袋をもみ始めた。これにてやっと茶色の薬湯の完成である。あーありがたや。

 今日も暑い。この残暑は当分続くのであろうか。早く湯冷めを気にしなければならない季節が来てほしいと思った。そして、浴槽にゆっくりとつかりたい。

(番台様、撮影・取材への多大なるご協力ありがとうございました。)


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
清瀬市松山1-13-20 400円 × × 16:00〜23:00
(日曜日は15:00〜23:00)
水曜日

取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2004年9月12日(日)



 
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