功泉湯
(Kosenyu)



 板橋という地名は、石神井川に実際にかかっていた板の橋に由来するとされる。板橋は江戸時代は中仙道の最初の宿場町として栄え、板橋宿という名前で親しまれていたという。宿場町以外の土地では、江戸へ供給する野菜類が栽培されており、農村地帯だった。今では東武鉄道が通るようになり、都心のベッドタウンとなっている。
 そんな板橋の、しかも、首都高5号池袋線の真下にあるのが、今回紹介する功泉湯である。もちろんこの功泉湯よりもずっと後に首都高が完成したわけであるから、ちょっと功泉湯が気の毒な気もする。

 功泉湯は写真でご覧になれるように、立派な破風造りとなっている。かなり古いと見られるが、内装は最近改装された模様で、大変新しい。番台は廃止され、フロント方式になった。もはや番台が廃止されるのは避けられない時代の流れなのだろうか。

 確かに、番台に自分の全裸を見られるのは気持ちの良いものではない。それに、「番人」という機能の番台が本当に必要なのかという話もあろう。しかし、番台はまさに日本文化の一つであり、これがなくなるのは銭湯ファンとして少し寂しいものがある。

 フロントのあるロビーは少々狭いが、テレビの前にはソファーがあり、風呂上りにちょっとくつろげるスペースである。ここには石鹸の類、飲み物の販売もあり、350ccのビールはおつまみ付で300円、発泡酒は同じくおつまみ付で200円である。どんなおつまみが付いているのだろうか。今日は車を運転してきたので、確かめることができないのが残念だ。

 さて、ロビーから脱衣室に入ろうとするところにちょっとエロチックな絵が置いてある。浮世絵風の絵で、江戸時代の女性の裸体である。女湯の脱衣室入口にはどんな絵が置いてあるのか気になる。

 さて、脱衣室にはデジタル式の体重計と、ドライヤー(3分で20円)、マッサージ椅子(5分で100円)、洗面台2基、ロッカー51個、飲み物の自販機がある。天井は新しい壁紙が貼られ、明るい感じになっている。
 浴室も明るい感じがする。壁画はなぜかイルカ。洗い場は23箇所。洗面器は黄色いケロリン。

 浴槽が実に難しい。何が難しいって、名前がどれも難しい。

 まずは「背圧座湯浴」。浴槽に座ると背中にジェット水流があたる。次に「備長炭湯」その名の通り、浴槽に備長炭が備え付けられている。湯温44℃。次に「薬湯・気泡湯 温浴素じっこう」。湯温42℃。これは体を温める効果があるという。次に「温い湯 半身浴」。水深があまりない。次に「側圧寝湯浴」。寝っころがるようにして入る。最後に「静水冷浴」。俗に言う水風呂。水温25℃。
 最後に「電気湯」これだけの浴槽の名前を覚えて帰るのに苦労した。

 取材には記憶力が必要だ。(但し、「電気湯」の副題は忘れた!「痺なんとか」だったと思う。)一番のお気に入りはやはり薬湯。得した気分になれるから。
 その他にシャワーブースらしき場所が2箇所ある。それぞれ「圧注浴 嵐」「圧注浴 霧」である。難しい名前をつけるものだ。
 サウナはガス遠赤外線サウナ。サウナは別料金制となっており、料金をフロントで払うと鍵をくれる。その鍵を使ってサウナに入るというシステムのようだ。東京の銭湯はサウナがオプションになっていることが多いが、その料金はあまり統一されていない。各銭湯が独自に料金を設定しており、いかにして料金を払っていない人をサウナに入れないようにするかに各銭湯が苦労されているようだ。

 今日も暑い。西東京からはるばるやって来た甲斐があった。功泉湯は昔のたたずまいと、最新の内装を持った、快適な銭湯だった。

(フロント様、撮影へのご協力、誠にありがとうございました。)


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
板橋区西台2-17-20 700円 × 15:00〜23:30 水曜日

取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2004年7月31日(土)



 
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