燕湯
(Tsubameyu)



 台東区という区名は、中国・清の「康煕字典」から引用され、その意味は「日出る処、衆人集って栄える場所」ということらしい。なかなか良い名前である。東京都で最も小さい区の一つであるが、江戸時代から典型的な寺院の町、庶民の町として発展し、江戸っ子気質を育んできたようだ。

 また、今回紹介する銭湯・燕湯のある場所、御徒町(おかちまち)は、それ自体大変奇妙な地名であるが、三代将軍家光の頃に、徒士(かち)組の屋敷地だったことからこの名前が付いたものらしい。徒士組とは、徒歩組・歩行衆とも言われ、徒歩で将軍にお供し、警護したことからこのように呼ばれたものである。
 現在の御徒町と言えば、なんと行っても吉池(生鮮食料品のデパート)とアメ横(露天の市場)の町というイメージがあり、やはり古くからの庶民の町というカラーが強い。

 さて、燕湯はJR御徒町駅から徒歩約5分のところにある。その燕湯の最大の特色は「朝湯」である。なんと毎日朝6時から営業を開始。そのため閉店は大変早く20:00となっているのだ。

 私は、この朝湯の状況がどんなものなのか、是非見てみたいと思い、朝6:00にバスインするべく前日から気合を入れていた。しかし、、、。現地に着いたのは8:30。自分が情けない。

 朝湯と聞いて想像するのは、前日飲み明かして二日酔いの、朝帰りの、あるいは帰ってもいない、サラリーマン、学生衆という客層であった。しかし、実際に行ってみると全くそんなことはなかった。「毎日この時間に入ってまーす。」と言わんばかりの元気なお客ばかりである。そもそも銭湯の客層は年寄りが多いのだが、ここの銭湯は違う。若い人が結構多い。つまり、燕湯はこれからも安泰だということだろう。
 その朝湯の客数なのだが、これまた大変に多い。脱衣室に5人程。浴室には15人程も入っている。自分の洗い場を探すのに苦労した程だ。このため、浴室の写真撮影はできなかった。

 脱衣室にはロッカーが64個、浴室洗い場は26箇所、浴槽は2槽である。浴槽は浅湯と深湯。深湯は気泡風呂。浅湯は岩の壁を持っており、その岩の壁と、壁画の滝が連続したデザインになっている。
 壁画は富士山で、富士山の山頂は、ちょうど男湯と女湯の真ん中に位置しているちょっと変わった配置である。浴槽の窓の外には、30cmほどの至近距離で隣のビルが迫っているのが見える。ここは大都会東京であるということを改めて思い知らされる光景である。

 浴槽には「湯船の湯がぬるかったら番台に知らせてください。熱い湯を出します。」と書かれている。浴槽の湯温表示は既に44℃。熱い湯で文句を言うお客はいないが、ぬるい湯で文句を言うお客はいるようである。さすがは熱い湯好きの大江戸銭湯である。
 燕湯には独特のリズムがあるようだった。そのリズムは御徒町を呑み込み、この町全体のリズムと同調しているようだった。そのリズムとは、東京都内の銭湯で唯一のサービスである、この朝湯である。

(番台様、撮影へのご協力ありがとうございました。)


入浴料:12歳以上400円、6歳以上12歳未満180円、6歳未満80円

 燕湯を出たら、アメ横へ直行。おいしい果物が待っている。人気はパパイヤジュース。但し、朝湯の後に行っても、まだ開店していない。要注意! 


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
台東区上野3-14-5 400円 × × 6:00〜20:00 月曜日

取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2004年8月21日(土)



 
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