ソロモンのページへようこそ

このページに気づいてくれてありがとう。

ソロモンは私が子供の頃家で飼っていた雑種です。

これはソロモンがいたから犬好きになれた私の思い出のページです。

16年以上たくましく生き、主家に仕え、天に召されたこの犬のこと

私は一生忘れないでしょう。

ソロモンとの出会い


ソロモンはとある病院の裏口に他の姉妹2匹と一緒に捨てられていました。
薬品の卸会社に勤める父が仕事中に見つけて、3匹いるけどどれをつれて帰ろうかと電話してきました。黒が1匹白が2匹。私は黒い犬が欲しかったので「黒がいい」と答えましたが、黒はメスでした。メスは子供を生むからダメだと言われたので、「白の可愛い方」を希望したのですが、これまたメス。結局うちに来たのは白くて痩せっぽっちのオス。
これがソロモンでした。
ソロモンと名付けたのはひねくれ者の私です。よそにはいない名前をつけたかったのでその当時読んでいた本の王様の名前にしました。

かくして、この貧弱でかわいげのない子犬は分不相応な名前をもらって家族となったわけです。

青春の脱走


ソロモンは外犬でした。鶏小屋の前に小屋をかまえ、鶏やチャボ、ウズラなどを守る番犬としてつながれていました。
時々は首輪をはずして脱走したりもしました。
1週間くらいの間近所を走り回ってました。それでも夜は帰ってきて家で置いてあるごはんを食べ、朝家族が捕まえようとするとさっと逃げての繰り返しでした。
話によるとちょっと離れたところに住むメス犬とLOVELOVEだったとか・・・。
まさに青春まっただ中だったわけです。

すき焼き物語


ソロモンのごはんはドッグフードが殆どでした。
「ビタワン」の20kgくらいの大きな袋からスコップで適当にざくっとすくって与えていました。食器は薬剤師さんが使う白くて大きなすり鉢みたいなヤツ。水もそれに入ってました。
いつも同じものを文句も言わずに食べていたソロモン。
ある日、家族の晩ごはんの残りのすき焼きを与えてみました。
翌日見ると食器は文字通り舐めたようにピカピカ。そして、器の底の方に白ネギが残されていました。
私は「そうか、ソロモンはネギが嫌いなんだ。」と勝手に思いこんでいました。ネギが毒だということはかなり後で知るのですが、ちゃんと食べられるものと毒を区別できたソロモンの本能に今となっては驚くばかりです。

打ち明け話


中学、高校とソロモンの散歩は私の役目でした。
一日一回私が学校から帰るとすぐに行くことになっていました。
友達と遊びたいし、TVだって見たい。散歩はおっくうで好きではありませんでした。
が家から200mほどの所にある角の所まで帰ってくるといきなりソロモンが大声でわんわん吠えて散歩を催促します。最初はわんわんですが、そのうちぎゃんぎゃんになりきゃんきゃんになりそれはものすごい吠えかたでした。
それほど吠えられても機嫌が悪いときは散歩に連れていかなかったりした私。
そんな私が高校3年の時に大失恋。周りの人間には話せなかった事を散歩の途中ソロモンに全部打ち明けました。
そうしたらいつもはぐいぐい引っぱって進んでいくソロモンが私の方を振り返って私の膝に前足を置きました。「元気出せよ」って言ってるみたいだった。
ごめんね、君はこんなに私のこと好きでいてくれるのに、私は一日に一度の君の楽しみをめんどくさがってたんだ・・・。

保健所の犬取り


ソロモンも家庭を持ったことがあります。
いつの頃からか、メス犬がうろうろし始めてそのうち子犬が現れた。
なーんだ、ソロモン、すみに置けないなあ。
でも、いつの頃からかメス犬も子犬もいなくなってしまいました。
気がつかなかったけど保健所の犬取りが来たみたいなのです。犬鑑札をつけ、鎖につながれたソロモンは捕まえられなかったのですが、メス犬と子犬たちは近所を広範囲にわたってうろうろしていたので連れて行かれてしまったのです。
どうすることもできなかったソロモン。君は人間を恨んだだろうか?
ソロモンはその日も次の日もその次の日もいつもと同じ顔で同じように散歩にでかけました。

農薬


ソロモンが近所の犬嫌いの人に農薬を吹きかけられてしまった!
ソロモンがつながれてた場所は犬嫌いな人の畑に隣接していたのです。
農薬散布の時に噴霧器をソロモンにむけて発射したらしい。なんてひどいこと!
ソロモンが立てなくなった。元気もない。もう死んじゃうかもしれない。
ソロモンは小屋のそばに穴を掘って一日中穴の中でじっとして何週間もすごした。
飼っていた烏骨鶏のたまごを毎日食べさせた。父がなにやら薬を飲ませていた。
みんながソロモンに声をかけてやっていた。
すると1ヶ月で、彼は立ち直った。奇跡の復活を遂げたのです。

惨殺


休日、自分の部屋でのんびりマンガを読んでいたらソロモンがやかましく鳴いている。
散歩の時間でもないのに・・・変だな。
何事かとのぞきに行ってみると!!!鶏小屋の方で何かガタガタいってる。
ソロモンが耳から血を流してる!何故!?
私が鶏小屋の扉を開けるといきなり5〜6匹の大きな野良犬が飛び出してきた!
ものすごいスピードで私の横を走り抜けていった犬たち。そして、鶏小屋は・・・血の海。
鶏、チャボ、うずら、ソロモンの命を助けた烏骨鶏・・・全て無惨な姿に・・・。
金網が喰い破られ、鶏たちはかごから引きずり出されて噛み殺されていたのです。
ホントに恐くて、腰が抜けるかと思いました。あれは私の一生で一番恐かった出来事です。
ソロモンは勇敢に戦ったらしく、彼の耳は噛まれて先の方がぎざぎざになっていました。
野良犬を追っ払えなかったことを悔やんでいるのかうつむいてしょんぼりしているソロモン。あのときの君の表情。今でも忘れられないよ。

晩年


私が結婚した時にはソロモンはすっかりおじいさんになっていました。
ひげも重力に従って下に向かって生え始めたし、なんだか目もしょぼしょぼして顔つきも年寄りの顔になりました。
私のことはいつも覚えていてくれたね。たまに実家に遊びに行くと私が学生の頃角を曲がって帰ってくるとき大声で鳴いたあれみたいに、散歩に連れて行くまでいつまでもわんわん言ったっけ。
でも、実家に帰る度恐かった、ソロモンはぜったい私より早く死んでしまうから。
今回は大丈夫だろうか?弱っていたらどうしよう?

いつも君の声を聞いて、「ああ、元気だった良かった。」って思ったよ。

さよなら


さよなら。
君の最後を看取ってあげられなくてごめんね。
ソロモンが天に召される1週間前、実家にかえって久しぶりにソロモンを見た。
お腹が異様に張ってる。たぷたぷで水が溜まってるんだ。息も荒い。
ふらふらしてるのに、私が近づくと散歩に行こうって鎖を引っぱる。
もう危ないのだと父が言う。もう立てないのだけど私が来たから立ったのだと言う。
もうどれほども持たないみたいだった。
1週間後実家を訪ねたとき、恐くてソロモンの小屋には近づけなかった。
でも、生きていた。少し安心した。
そして、次の週末訪ねたときにはソロモンの小屋はなくなっていた。たくさんのバラが植えられていた。

「ソロモンは死んだよ。先週お前が来た日の夜に死んだ。」と父が言った。

私が訪ねてくる日を待って死んだのだとみんなが言った。なのに私はソロモンを看取ってやる勇気がなかった。君のこと大好きだったのに・・・。ごめん、ごめんね。今でもとても心残りです。

ソロモンが天に召されたあと植えられたバラは今では大きなアーチを作っています。
小ぶりだけど鮮やかなこのピンクのバラを見るといつもソロモンの一生を思い出します。

最後までおつき合いいただいてありがとうございました。

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