脈がとぶ不整脈
上室性期外収縮
緑の矢印の付いている波に注目して下さい。前の波と非常に接近して発生しています。これは心房性期外収縮といって、心臓を動かす歩調取りの信号とは別に、心房付近から発生した異常な信号によっておきた不整脈です。

通常はこの不整脈のために、むら打ちを感じてドキッとしたり、胸苦しかったり、時には脈が止まったように感じます。ご覧のように波形が元の形とよく似ていることが特徴です。

この不整脈は、自律神経の異常や精神的緊張などでおきることが多く、一般には危険性は少なく、放置しておいてよい場合がほとんどです。

自覚症状の全くない人も多いのですが、症状の強い場合には治療の対象となります。
心室性期外収縮
矢印の付いている波形が心室性期外収縮で、他の波形と全く違う形であることがおわかりでしょう。この不整脈は、心臓の心室という所で、正規の歩調取り信号とは違った異常な電気信号が発生する事により出現します。

この不整脈が出現した時、心臓は通常の収縮をしませんので、血液は十分全身に送られず、この間脈は止まってしまったように感じられます(結滞)。この時にやはりドキッとしたり、いろいろな胸部の不快感を感じます。

人によって症状が異なり、全く症状のない人も多く存在します。心臓に他の病気のない正常の人にもよく見られますが、通常は上記のような心臓の病気に伴って見られることが多いのです。

この例のように、時々出現する程度なら治療の対象にならず、放置しておいてよい場合が多いのですが、その出方や症状、元の病気によっては危険な不整脈と判断され、治療を要する場合があります。
脈が速くなる不整脈
発作性上室性頻拍症
今までなんでもなかったのに急に脈が1分間に150から200近くも打つようになります。胸がドキドキして顔色が悪くなり、血圧も通常より下がり、非常に苦しい状態になりますので大変びっくりするのですが、通常はこれで生命にかかわるようなことはほとんどありません。

短いもので数秒、数日間続く事もありますが、ほとんどは数時間で急に治ります。注射で止めることが出来るのですが、よくおこす人は予防のお薬を服用して治療します。

この不整脈をおこす主な原因の一つは、生まれつき心臓に、正規の歩調取り電流の通り道の他にバイパス経路があるためであるといわれています。主なものにWPW症候群という病気があります。

 また、おもしろいことにこの不整脈は薬や注射ではなく、自分で止めることもできます。息を吸い込んで出来るだけ息を止めてみたり(左図)、洗面器の水の中で息こらえをしてみたり(中図)、首の頸動脈付近をマッサージすることによって(右図)止めることが出来ます。全ての例で止まるわけではありませんが、一度は試して見るべき方法です。
息止め 洗面器の水で息こらえ 頸動脈のマッサージ

この方法で止まらなければ、医療機関に行き、お薬や注射で治療します。

最近ではこの様なバイパス経路が原因で頻拍症をおこす患者さんに、心臓の内部にカテーテルという管を通してバイパス経路を電気的に切ってしまうカテーテル焼灼術(しょうしゃくじゅつ)が非常に効果を上げており、現在の主な治療となっています。
心房細動
どの波と波の間も等間隔ではありません。この様に脈がバラバラに打つ不整脈を心房細動(しんぼうさいどう)といいます。

心臓弁膜症、甲状腺機能亢進症などの病気に合併することも多いのですが、特に他に病気のない人にも起きることがあります。

それは若い人にも時々おこり、お酒を飲み過ぎたり、過労がたたった時におこり易くなります。しかし、多くの場合何でもないのにく急に起きてきます。

急にドキドキして胸苦しくなり、血圧も下がり気味になります。通常短時間で元に戻る事が多く、問題になることは少ないのですが、時に救急処置を要することがあります。

お年を取るにつれてこの不整脈の頻度は多くなり、いつの間にかずっとこの不整脈のままとなっていることもよくあります。この場合、脈が余り多くなければ問題になることは少ないのですが、通常は脈が多く、運動すると動悸や息切れがします。

また、この不整脈の人は、心臓内に血栓が出来やすく、それがはがれて脳血管に詰まったりすることがあるといわれています。これが心源性脳塞栓症で、近年大きな問題になっております。

この脳塞栓症予防のための治療は近年大きな問題となっており、別ページに説明しました。
脈が遅くなる不整脈
洞停止
心臓は洞結節というところから規則正しい歩調取りの電気信号が出て動いていますが、この洞結節の機能が不調になりますと、上図のように数秒間心臓が止まってしまうことがあります。これを洞停止と呼びます。

重症になりますと意識消失発作をおこすため、ペースメーカーの植え込みが必要になります。

この様な不整脈をおこすのは洞不全症候群という病気が代表的なもので、この病気は脈が遅くなったり止まったりするほかに、逆に脈が速くなったり、あるいは速くなったり遅くなったりする発作をともに起こすこともあります
房室ブロック
数の多い小さな波がP波で心房の興奮を示します。下向きの大きな波がQRS波で心臓の心室の興奮を示します。

P波の数に比べてQRS波は少ししかありません。つまり刺激伝導系に心房と心室の間で異常があり、信号が時々しか心室に伝わっていないのです。

このため心室の収縮は少なくなり、脈も少なくなります。脈が極端に遅くならなければ無症状ですが、脈がある程度以上少なくなると、めまいや意識消失発作を起こすことがあります。

程度により治療する必要のない人から、場合によってはペースメーカーを入れる治療が必要になることがあります。
危険な不整脈
心室頻拍
この不整脈になりますと心臓は小刻みに震えているだけでほとんど血液を送り出すことが出来ません。

ごく短時間の発作であればめまいや一過性の意識消失発作ですみますが、この状態が続けば生命の危険があります。一刻を争う心肺蘇生療法や通電療法(電気ショック)が必要となります。

近年普及してきたAEDが近くにあればすぐ治療が開始できます。

原因は急性心筋梗塞や、過去に心筋梗塞をしたことのある人、狭心症、心筋症などといった病気を持った人が大半です。

ただ、このような不整脈をおこしやすいような遺伝性疾患、素因もあります。

一方、、不整脈のお薬の影響でこういう不整脈が出てしまうこともあります。
心室細動
きわめて緊急性が高く、致死率も高い状態です。やはり他の心臓疾患、特に急性心筋梗塞や心臓弁膜症、心筋症などの重症心疾患を持った人に多いとされています。

一刻を争って通電療法(電気ショック)や心肺蘇生療法が必要で、そうしなければ助かる見込みはありません。

近年普及してきたAEDが近くにあればすぐ治療を開始します。

また、このような不整脈をおこしやすいような遺伝性疾患、素因もあります。
不整脈の検査
心電図
不整脈には心電図が欠かせません。当科の心電図もデジタル化されており、データは全てそのまま診察室のPCに記録されます。

PCには当科の過去8年間の検査結果が記録されており、以前の記録とすぐに照合されます。

往診には小型の心電計を持参し、後でPCに取り込みます。
24時間心電図(ホルター心電図)
胸部に装着し、24時間の心電図を記録して後から解析します。自覚症状と対比し、不整脈が出ていないか詳しい分析をします。

メモリータイプになってからずいぶん小型化し、装着しても普段通りの生活が可能です。