高血圧の治療の目安は
本態性高血圧症の原因は、一つは遺伝が関係しているという以外解明されておりません。従って、高血圧を全く治してしまうというのは残念ながら不可能です。しかし、高血圧を放置しておきますと、動脈硬化を促進し、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患や脳梗塞、脳出血などの脳血管障害等をひきおこしてきます。最近の研究ではかなり軽症のうちから積極的に治療を開始しないとこのような合併症をおこしやすいということが解ってきました。それには、薬物療法と生活療法(生活習慣の改善あるいはライフスタイルの改善)が重要です。
それでは自分の血圧がどれくらいであればどのような治療をした方がよいのでしょうか?
収縮期血圧 160以上 拡張期血圧 100以上の人
時期を違えて測定した血圧で、2度以上この様な血圧であった人は、合併症予防の目的で速やかに薬物療法をする必要があります。もちろん下記のような生活療法も重要です。
収縮期血圧 140〜160未満 拡張期血圧 90〜100未満の人
| 高血圧の危険因子 |
| タバコを吸う |
| 高脂血症(コレステロールが高い) |
| 糖尿病 |
| 60歳以上 |
| 男性あるいは閉経後の女性 |
| 血縁者に心臓や脳の病気の人がいる |
この血圧の範囲にある人は、最初は生活習慣を改善する努力をして様子をみてかまいません。ただ、その人が合併症をおこしやすい危険因子を持っているかどうかでどれくらいの期間様子を見てよいか基準があります。危険因子とは、右の表にあるように6つの項目が指摘されています。高血圧がある上にこの様な状態を併せ持っている人は、合併症をおこしてくる可能性が高いと考えられます。
| 危険因子のない人 | 1年間生活習慣改善をしてみて改善しなければお薬を服用する必要がある |
| 危険因子のある人 | 半年間生活習慣改善をしてみて改善しなければお薬を服用する必要がある |
例えば、タバコを吸ったり、コレステロールの高い人は半年間生活習慣を改善する努力をしてみて、血圧が正常値に下がらなければお薬を服用する必要があります。そうしなければ合併症が進んでくるからです。男性は循環器疾患をおこしやすく、それ自体危険因子になっています。閉経後の女性も同様です。
| 高血圧の内臓障害 |
| 心臓肥大 |
| 狭心症、心筋梗塞 |
| 脳卒中 |
| 心不全 |
| 腎臓障害 |
| 眼底病変 |
血圧が正常でもお薬を飲む必要がある?
正常の血圧は前ページで説明しましたように、最高大血圧140未満、最低血圧90未満とされています。この範囲内にある人でも実はお薬を飲んで血圧をさらに下げておく必要のある人がいるのです。正常範囲の中でも、最大血圧130〜140未満、最低血圧85〜90未満の人は正常高値血圧と呼んで区別しています。糖尿病の人、すでに合併症を持っている人(内臓障害のある人)は、この範囲の血圧でもお薬を飲んで治療する必要があります。
| 糖尿病の人、すでに高血圧の内臓障害を持っている人は、最高血圧130以上、最低血圧85以上であればお薬を服用する必要がある |
血圧が少し高くても医者から薬を飲む必要がないと言われると、それで安心して何もしない人がいます。また、いつも血圧が高いのに、それまで測った血圧の一番低い時だけ覚えて、自分の平常の血圧だとしている人がいます。高血圧の治療には、どんな程度の人でも、生活習慣(ライフスタイル)の改善が非常に大切であり、その上で十分血圧が下がらなければお薬で治療する方が賢明です。高血圧治療の最大の目的は、少しでも合併症を予防し、死亡率を下げるのが目的だからです。定期的に血圧を測定して適切な治療をしていきましょう。
白衣高血圧とは
普段血圧は高くないのに、健康診断や医師の前に行くと血圧が上がる人がいます。これを白衣高血圧と呼んでいます。多くは収縮期血圧だけ高いことが多く、加齢により、血管の自律神経反射が弱ったためと精神的な緊張が原因です。通常こういう人はお薬をのむ必要はありませんが、長期観察するといつの間にか本当の高血圧になる人もいます。普段から生活習慣に気をつけて、かかりつけ医で血圧を定期的に測ってゆくことが必要です。
生活習慣の改善とは
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| 調味料に含まれる塩分量 | 食品中の塩分量 |
体重
肥満のある人は高血圧と密接な関係があるといわれています。標準体重に近い体重に落として下さい。
標準体重=身長(m)×身長(m)×22
塩分
高血圧の食事療法の基本は、摂取する食事中の塩分を減らすことです。1日あたり6g以下にする必要がありますが、日本人の場合、平均1日あたり12gとっていると言われています。現実にはこれだけの塩分に減らすことは困難な場合が多く、9g以下を目標にするのがよいと思われます。
漬け物や干物、梅干し、ねり製品などには塩分が多く注意しましょう。あまり塩分を控えすぎると、食事がとれなくなることもありますので、可能な範囲で努力してみましょう。塩分が少なくても香辛料を使い香りで食欲を誘う、酢の物を使うといった工夫が大切です。
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| アルコールを多く飲むほど 高血圧の割合(%)が高い |
アルコール
アルコールの過剰摂取は高血圧と関係が深いことが報告されています。少量ならばあまり血圧に関係なく、その量はエチルアルコールに換算して1日に30ml(ビール大瓶1本、日本酒1合、ワイン300ml、ウイスキー水割り2杯等)といわれています。女性や体の小さい人はその半量がよいでしょう。
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| アルコールの一日の限度量 |
しかし、実際にアルコールを飲む人と飲まない人を比べますと、飲む人の方が血圧が高く、その量に応じて高血圧の割合が増加しています。従って、飲酒はできるだけ少量にした方がよいと考えられます。
運動
適度な運動をすると高血圧に効果があるとされています。1日30〜45分間できるだけ早歩きをすることがすすめられます。できれば毎日した方がよいでしょう。
心臓が悪かったり、他に重大な健康上の問題を持っている人は十分かかりつけの医師と相談して行うのがよいでしょう。
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| 喫煙による心臓への影響 |
喫煙、その他の注意
タバコは1本でも吸えば血圧を上昇させると言われています。また、動脈硬化を促進させ、狭心症や心筋梗塞の危険因子であるといわれています。高血圧でお薬を服用している人でも、喫煙している限りは合併症を十分予防することができません。できるだけ速やかにやめた方がよいでしょう。ただ、禁煙すると肥満がでてくることがよくありますので、そのための注意も必要です。
カリウムの含まれている野菜や果物を十分とると高血圧の発症を抑えることができるといわれています。また適量のカルシウムも高血圧の予防によいといわれています。腎臓の悪い人はカリウムのとりすぎに注意する必要があります。
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| 降圧薬の分類 |
高血圧の薬物療法
生活習慣の改善だけでは十分な降圧効果が期待できず、心血管系の合併症の可能性のある人は薬物治療が必要になります。
| アンギオテンシン変換酵素阻害薬 |
| 利尿薬 |
| カルシウム拮抗薬 |
| α遮断薬 |
| β遮断薬 |
血圧を下げるメカニズムにより上のようなお薬に分類されます。服用する人の身体的状況や血圧の程度によって、お薬が変わってきます。1種類のみで調節できることもあれば、数種類のお薬を併用する事もあります。
お薬の種類によっては、服用してみて顔にホテリがでたりする人もあります。また、空咳がでたりする人もいます。気管支喘息、痛風、糖尿病、高脂血症などの病気の有無でお薬に制約が出る場合もあります。主治医とよく相談して、体に合うお薬服用してゆきましょう。降圧薬は通常正しい用法、用量を守っている限り、長期安心して服用できる場合が多いので、よくかかりつけ医と相談して治療して下さい。
薬物療法をしていても塩分制限、運動療法などの生活療法は重要です。規則正しい生活をして定期的に血圧を測ってゆきましょう。
参考文献、引用
患者指導ツールブック
米国合同委員会第6次報告
あなたの高血圧治療
新・循環器病制圧
各社指導せん
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