タバコ関連死亡数

WHOなどの最近の試算によると、日本でたばこが原因とされる死亡数は、2000(平成12)年には114,200人(男性90,000人、女性24,200人)に達しています。20年で約2倍に増加したことになり、この傾向はさらに続くことが予想されています。

たばこ関連疾患の多くは、喫煙を開始してから20-30年かかって発症し死に至るので、現在の死亡の状況は過去の喫煙の状況を反映していることになります。従って癌による死亡率はまだまだ増え続けることが予想されます。


Peto, Lopez, et al.1992,1994,2000update.
Mortality fromsmoking in Developed Countries 1950-2000)より作図
喫煙による癌の危険率
喫煙による癌の発生は広く知られています。全ての癌の約20〜30%はタバコが原因と考えられています。

特にタバコで癌の発生が多いのは喉頭癌と肺癌、尿路の癌です。男性では非喫煙者に比べて5倍程度の危険率となっています。ただこれは平均値のデータであり、吸う本数によって差があるという点です。沢山吸う人ほどもっと危険率が高くなります。

また、喉頭癌や肺癌だけでなく、ほとんどの癌で非喫煙者を上回っています。体内に発ガン物質が取り込まれるという点から見れば不思議なことではありません。

Journal of Epidemiology, 18: 251-264, 2008より作図
主流煙と副流煙
タバコの煙はフィルターを通して吸う「主流煙」とタバコの先から立ち上る「副流煙」とに分類されます。副流煙は主流煙より有害な物質を多く含み、しかも刺激性があります。タールは3.4倍、ニコチンは2.8倍くらい多いと言われています。

喫煙者と生活を共にしている非喫煙者の肺癌リスクは周りに喫煙者のいない人に比べて1.3〜1.5倍のリスクがあると言われています。この影響が「受動喫煙」の影響です。

また、ご主人が喫煙者である場合、同居の非喫煙者の妻の肺癌発生率は最大1.9倍であったという報告もあります。

他の身体への影響
喫煙は発がん性以外に様々な身体への影響を及ぼすことが知られています。呼吸器系はもとより、心臓、下肢の動脈などの循環器系、脳血管などに様々な悪影響をもたらします。
呼吸器系への影響
喫煙者は咳や痰を日常的に伴うことが多く、タバコのせいと自覚していない人も多く見受けられます。長期的には咳や痰が慢性的に続く慢性気管支炎、また、肺胞が破壊され肺が壊れてゆく肺気腫という病気を引き起こします。慢性気管支炎と肺気腫は現在「慢性閉塞性肺疾患」(COPD)として認知されています。

気管支喘息や肺炎も多いことが証明されています。

また、急に肺が破れて呼吸困難に陥る自然気胸も喫煙者に多いことが証明されています。
循環器系への影響
喫煙により速やかな血管の収縮がおこり、急に血流が悪くなると言われています。慢性的には循環器系への影響が強く、ある施設で心筋梗塞を起こした人のリスクを調べると喫煙が一番多いリスクであったと報告もあります。

受動喫煙でも心筋梗塞などの循環器系リスクが高まるという報告があり、約20〜30%リスクが高まると言われています。

受動喫煙で病気を発症しないまでも動脈硬化が進行しやすいという報告があります。

また、女性が喫煙の上経口避妊薬(ピル)を服用すると心筋梗塞などの虚血性心疾患やくも膜下出血のリスクが高まるという報告もあります。

その他、下肢の動脈閉塞が起こりやすく、足を切断する場合もあります。
疾患
虚血性心疾患 狭心症や心筋梗塞などが高率に起こります。
大動脈瘤 胸部や腹部の大動脈がふくらみ破裂する危険性があります。
末梢血管閉塞症 閉塞性動脈硬化症やバージャー病と言った下肢の血管が閉塞する病気を起こしやすくなります。特にバージャー病はほとんどが喫煙者です。
脳血栓 脳の血管が詰まり脳梗塞を起こします。
くも膜下出血 脳底動脈瘤の破裂により起こりますが、喫煙者に多いという結果があります。

疾患別による死亡割合
疾患別にみた喫煙が影響したと考えられる死亡者数の割合です。肺癌87%、COPD(慢性閉塞性肺疾患)68%と高く、全死亡者で見ても実に17%が喫煙の影響で亡くなっていると考えられています。

Peto, R. et al.Mortality from smoking in developed countries 1950-2000 2nd. ed.262, 2006 [L20070918167]より作図