ミネラルウォーターあれこれ

1.ミネラルウォーターって?

一番シンプルな定義は「水のみを原料とする清涼飲料水」です。農林水産省によるミネラルウォーター類の品質表示ガイドラインでは、原水の特性と除菌や滅菌処理などの方法の違いにより4つのタイプに分類されています。
その内、最も多いものがナチュラルミネラルウォーターと呼ばれる、無機塩類が溶け込んだ特定水源の地下水をろ過・沈殿および加熱殺菌したものです。

2.無機塩類ってなに?


有機化合物とは、炭素を含む化合物のこと。但し、二酸化炭素や炭酸塩などの簡単な炭素化合物は習慣的に除かれます。つまり、無機化合物とはそれ以外の化合物で、塩(えん)とは塩化ナトリウムや硫酸マグネシウムのように、無機の酸の水素とナトリウムなどの金属が置き換わったものです。

3.硬度について

水に含まれるものの指標の1つに硬度があります。これは概ね、カルシウムとマグネシウムが含まれている量を示します。
この値が高いとボイラーなどには缶石が付着しやすく、熱効率が悪くなります。電磁式コンロで硬度の高い水を使ってお湯を繰り返し沸かしていると、突沸したりコンロが異常作動したりします。
この缶石の主成分はカルシウムやマグネシウムの硫酸塩(Sulfate:サルフェート)や炭酸塩(Carbonate:カーボネイト)です。これは擦るよりもポット洗浄剤を使った方が楽に取れます。
紅茶を煎れる時には中硬度の水を使った方が、渋みが押さえられまろやかな紅茶がいただけるようです。煎れた時の色を水色(すいしょく)と言いますが、アッサムのようなもともと水色の濃い茶葉を使った場合、使う水の硬度が高いと文字通りブラックティーになります。コーヒーには軟水が良いようです。

4.カルシウム(元素記号:Ca)について


Caは人体の中で最も多く存在する無機質で、その99%以上は骨に含まれています。食物中のそれの利用率は「奥恒行氏編集:生化学/朝倉書店刊」によると以下の要因により変動します。
@活性型ビタミンDは小腸上部において、Ca結合蛋白の合成を介して腸管からのCa吸収を促進する。
A高蛋白食や乳糖もCaの吸収を促進する。
B食物中に含まれるリンとの比が2:1(Ca:P)のときに最も吸収が良い。なお、リンは通常の食事で十分摂取される。
Cフィチン酸やシュウ酸は不溶性のCa塩を形成する。
D多量の脂肪酸はCaと不溶性の石鹸を作って吸収を阻害する。
E食物繊維はCaを吸着し、糞便への排泄を促進する。

カルシウムの推奨栄養所要量は日本人の場合1日0.60gであり、また平均摂取量は1日0.55gということですから、概ね充足されていると考えられます。また、カルシウムの吸収に影響するリンは推奨量を十分に満たしていることが言われています。

5.マグネシウム(元素記号:Mg)について


Mgは受動輸送によって吸収されるため、摂取量が多いと吸収率は悪く、少ないと高くなります。Caが不足する時、Mgは代わりに骨に沈着します。Mgが過剰な場合には、Caの石灰化を阻害します。
Mgはふつうの食事で不足することはないとのこと。(奥恒行氏編集:生化学/朝倉書店刊より)日本人の所要量は30歳男性(普通の労作)で1日0.32gです。

6.ミネラルと疾病予防

1960年に米国で高硬度の飲料水が循環器疾患の予防に関係するという説が出されましたが、WHOでは結論付け不十分としています。さらなる検証が必要ということでしょう。
また、東京医科歯科大学の田中平山氏らによる新発田研究ならびにコホート研究などに基づく報告では、
@高血圧ひいては脳卒中、冠動脈性心疾患の現実的な予防対策としては、大豆類・野菜類・魚類の摂取量増加を推奨して行くのが良い。
A栄養補助食品あるいは栄養機能食品(dietary supplement)によるカリウム・カルシウム・マグネシウムの摂取増加は、過剰摂取による有害作用のこともあるので、必ずしも推奨できる方法ではない。
Bカリウム・カルシウム・マグネシウム必要量を上回る摂取量を推奨するだけのデータも不十分な現状である。
と結論付けています。

いずれにしても規則正しいバランスの良い食事が大切なようです。明らかな欠乏病では言うまでもありませんが、万一、普通の食事とはかけ離れた無理なダイエット食などでバランスを崩されるようなことがあれば、早めに専門医に相談され、疑問点を洗いざらい出された後、治療計画を立てられるのが賢明かと、一薬剤師の立場から老婆心ながらご助言いたします。
また、便秘で悩まれる場合、その原因はいろいろ考えられます。便秘が続く場合には専門医や専門的に研究している薬剤師に相談され、症状やあなたの体質に合われた薬剤の服用などの対応及び原因の早期究明をお勧めいたします。

7.ミネラルウォーターの楽しみ

いろいろな土地の様々な水の味を楽しませてくれるミネラルウォーター。採水地を思い浮かべながら飲むとまた格別です。ウーロン茶や紅茶の茶葉等との相性を探ったりする楽しみも与えてくれます。皆さんは、どのように楽しまれていますか?