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ロバート・パーカーJr.「ボルドー第4版」より
カントナック=ブラウンの近年の歴史は波乱に満ちている。1968年に高名なボルドー人、ジャン・ロウトンからデュ・ヴィヴィエ家に売却され、1980年にはコニャックの名門、レミー=マルタンの手に渡った。その後、このシャトーは、保険業界の巨大コングロマリット、アクサに売却されている。彼らは賢明にも、ジャン=ミシェル・カーズと、ダニエル・ルローズが率いる才気あふれるチームをワイン醸造にあたらせた。カーズが引退してからは、クリスティアン・セリがカントナック・ブラウンの責任者となっている。
ここのブドウ畑はカントナックのコミューンでは必ずしも一等地ではなく、昔から比較的硬く、タニックな、しばしば無骨で筋肉質なワインを造り続けてきた。新しい所有者のもとでは、もっとやわらかく、たくましさを感じさせないワインへと方向転換が試みられたが、成果はこれまでのところまちまちである。よい方向へ展開しつつあるものの、最近のヴィンテージもいまだにタンニンの過剰な、辛口で、魅力的な特徴に欠けるワインであることが多い。残念な事実だが、このシャトーの最近のヴィンテージの多くは、タンニンよりずっと先に、果実味が抜けてしまうだろう。もっと厳しい見方をする人は、深い砂礫質の土壌のブドウ畑から生まれるワインでは、エレガンスを極めることはできないという。
訪問者には、写真向きの風景が見られるという意味で、きちんと案内の出てきる道路(イッサン村の直前にある)に沿って行くようアドバイスしたい。そうすると、よく目立つ赤煉瓦にチューダー朝の装飾が施された、珍しいヴィクトリア風のシャトーの正面に出る。メドックでも印象的な建物の1つだが、外観はまことに非フランス的で、フランスのシャトーというより、大型な英国のマナーハウスを思わせる。
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