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ロバート・パーカーJr.「ボルドー第4版」より
先もオーナーである故レイモン・デュバンには一度もお会いできなかったのだが、氏はボルドー史上最高のグルメとして記念碑的な評判をとっていた(故の知人によれば、食道楽でもあったいう)。その彼は、1980年に亡くなる前の1978年にグラン=ピュイ=ラコストを才能豊かで人望の厚い故ジャン=ウジェーヌ・ボリーに売り渡したのだが、ボリーはその後息子のグザヴィエをこのシャトーの責任者に据えた。古びて荒れ果てたセラーの大改修が済んだのが1982年で、なんとか間に合ったグザヴィエ・ボリーは、これまでで最上と言える出来のワインの1つを生み出した。ボリーは妻子ともども近代化したシャトー内に住み続けているのだが、ボルドーの目利きたちが期待した通り、グラン=ピュイ=ラコストは、ポイヤックの一流どころの中でも最先端を行くシャトーへと急成長している。
ジロンド川からはずいぶん内陸に入ったバージュの丘にあるグラン=ピュイ=ラコストは、1qほど離れた隣のランシュ=バージュと似ていなくもない。大柄で耐久力のある、フルボディのポイヤックを生産することで確固たる定評がある。しかしながら、1960年代、1970年代につくられたワインは、ランシュ=バージュ同様、品質にムラがあった。今から思えば、オーナーの健康状態が悪化していたせいだったのかもしれない。例えば、1975年や1966年のような年にもその評判から期待されるほどの成功作はつくれなかった。この時期のほかのヴィンテージ、特に1976年、1971年、1969年、1967年は、どうしたわけか、完全な失敗作に近かったが、おそらく細かいことにまで注意を払わなかったせいであろう。
ただし、1978年以降のグラン=ピュイ=ラコストは秀逸なワインをつくり続けている。2000年、1996年、1995年、1990年、1982年は、このシャトーの長い歴史の上でも最上のものとして記憶に残るような、偉大なワインである。デュパンのスタイルに比べて、ボリーのスタイルは、収穫を遅らせ、強烈なカシスの果実味と相当なグリセリン、力強さ、ボディを備えたワインをつくるというものである。1990年代半ばまでは価格が品質に追いつけなかったため、いまだに控えめな、いささか過小評価されているとさえ言える価格がついている。
〜一般的な評価〜
グラン=ピュイ=ラコストは、ボルドーのワイン通たちの長年のお気に入りワインである。第二次世界大戦後は特筆に値するほど安定しており、通常その血統をはるかに超えるワインとなっている。ひょっとすると三級に格上げしてもよいのかもしれない。一般的に、豊かで、フルーティで強烈、ひと言で言えば期待通りで、期待を超えることも多く、しかも価格は極めてリーズナブルだ。ポイヤックのみならず、ボルドー全体でも最もお値打ちなワインの1つである。
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