端書云
右斯文どもは、文明第三之比より同き第五之秋の時分まで、天性こゝろにうかむまゝに、
何の分別もなく連々に筆をそめおきつる文どもなり。さだめて文体のおかしきこともありぬべし。
またことばなんどのつゞかぬこともあるべし。
かたがたしかるべからざるあひだ、その斟酌
をなすといへども、すでにこの一帖の料紙をこしらへて書写せしむるあひだ、
ちからなくまづゆるしおくものなり。外見の儀くれぐれあるべからざる。たゞ自然のとき
自要ばかりにこれをそなへらるべきものなり。あなかしこあなかしこ。
于時文明第五九月廿三日に藤島郷の内林之郷超勝寺において、この端書
を蓮崇所望のあひだ、同27日申の剋にいたりて筆をそめおはりぬ。
釈 蓮 如 在御判