歯科豆辞典




1.歯(咀嚼の)重要性について

私は歯科医師ですので何といっても歯の重要性について説明したいと思います。

@食物を細かくして唾液とまぜる

 食物を細かくして唾液とまぜ、イチョウでの消化をよくします。また、食物を細かく
することにより、有害なもの(毒とか石などの異物)を排除します。口腔粘膜や歯を
ささえている靭帯(歯根膜)は非常に鋭敏な感覚器官です。

唾液の機能
・食物と唾液を混ぜ飲み込みやすくする。
・酵素の働きがある
 アミラーゼ    →消化を助ける
 ベイオキシターゼ→食物の中に一部含まれる毒性を抑制したり、発癌を抑制する効果があ 
             る。
・PHの緩衝作用 →口腔内を中性に保ち虫歯になりにくくする。
・抗菌作用     →細菌の働きを弱める。

A幸福になる
 よく咀嚼することにより、味を楽しみ、満足感を得ることができます。またストレス
が鎮静されおだやかな状態になり幸福感が得られます。。やはり幸福の基本は楽しく
おいしい食事と思います。

B脳を活性化する
 口腔には各種のセンサーが豊富に存在しています。特に歯牙は数ミクロンを識別でき
る非常に鋭敏なセンサーである歯根膜を持っています、よく咀嚼することにより口腔
粘膜や歯根膜からの情報が大量に脳に流入し脳に刺激を与え脳を活性化します。逆に
歯牙が喪失し情報の流入が少なくなれば神経は萎縮し中枢神経が阻害され痴呆やボケ
を招く可能性は大いにあります。


(色々な実証例)

ねずみを使った研究

 一群のねずみは硬くてよく噛まなければならない固形の飼料で、もう一群のねずみ
は噛まなくてもすぐ食べられる粉末の飼料で何ヶ月か飼育した後に色々な手段の記憶力
のテストを行いました。その結果固形飼料で飼育したねずみの方が粉末飼料のねずみ
より有意の差をもって学習記憶能力の成績がよかったそうです。
 
WHOの研究
 WHO(世界保健機構)がアルツハイマー病の患者を統計的に調べてみますと、病
状の重い人ほど、若いころから歯を喪失しているという結果がでています。

C発音の為に必要
  歯が喪失しますと当然ですが、うまく発音できません。

D美しさの基本
  歯の汚い美男美女はいないと思います。虫歯で歯は穴だらけ、歯周病で歯がグラグ
ラの人は美男美女の基準からははずれると思います。人間はやはり美しくありたいと
思うのは当然。いくら体が美しく、服のセンスがGoodでも歯が抜けたり、口臭が
強いと100年の恋も冷めるというものでしょう。

E体のバランスを取る為に必要
 人間の頭部は6〜8Kgあると言われ、重心は高くトップヘビーの状態にありま
す。人間が直立姿勢にある時は、実はきわめて不安定な状態であります、この為まっ
たく静止している瞬間はなく前後左右にたえず揺れ動いています。体がある方向に傾
斜すると平衡感覚が働きその反対の筋肉が収縮して体の位置を元の状態に戻そうとし
ます。頭部ではこれに関与する筋肉は咬筋と側頭筋です。

 咬筋、側頭筋は咀嚼時に使う筋肉です。したがって歯が無くなったまま放置してい
ると、これらの筋肉に異常を呈し、体のバランスがとれにくくなってきます。歯の無
い人(部分的に無い場合も含めて)は、噛み合わせが定まらないので体の安定が保ち
にくいのです。


以上の結論として
 気の合うメンバーと楽しく、ゆっくりよく噛んで食事をする事が人生の幸福の第1
条件と思います。テレビを見ながら、もしくは本を読みながらする食事は餌を胃に入
れているだけ。

 また、口腔の健康が全身の健康と密接な関わりがある事がわかっていただけたと思
います。口腔の健康が全身の健康の入り口です。

 もう少し歯の事を考えてあげてください。


2、 歯(咀嚼)を守るにはどうすれば良いだろう。

歯の喪失の原因の9割以上はう蝕(虫歯)と歯周病(歯槽膿漏)です。よってこれら
を予防すれば良いことになります。

〇う蝕
 う蝕はドンなものか大体ご存知と思います。歯が溶けて穴が開いていく病気です。
詳しく説明すると、歯の表面に付着した歯垢(プラーク)、これは細菌と細菌が出す
多糖体(細菌が自らを守る為に出すバリアみたいなもの)の固まりのことです。細菌
はバイオフィルムとも言います。この歯垢の中のミュータンスレンサ球菌が乳酸を放
出し、歯を脱灰させた結果がう蝕です。この歯垢を除去するブラッシングは重要です
がそれだけでは予防できません。他にどの様な事を考えれば良いのでしょうか。

   食事 → これが一番重要。ミュータンス菌の主な栄養源は砂糖です、今の日本で
は甘いものがありふれています、間食の回数が多いと砂糖にさらされる時間が多くな
りう蝕になりやすくなります、ジュース等の液状のものも同じです。やはりある程度
生活習慣をコントロールする必要はあると思います。

   ブラッシング → やはり重要です。現在の食生活では必ず口の中が汚れます。プ
ラークを除去し口の中に細菌が少ない状態にする事が重要です。

   フッ素 → フッ素は歯そのものを固くしう触になりにくくします。

   キシリトール → これは白樺からとれる甘味料です。う触予防に効果的です。ただしカロ
リーは砂糖の半分程度ですがありますのでご注意を。ガム、キャンディを食べるならキシリトー
ルを選択するのがgoodです。

   プロフェッショナルな予防 → これはPMTCと3DSに代表されます。
     PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)
歯科医師や歯科衛生士が機械的に歯牙をクリーニングすることです。
すなわちプラークを物理的に除去する方法です。

     3DS (Dental Drug Delivery System)
ドラッグリテイナー(個人用マウスピースみたいなもの)を使って
薬剤を歯牙表面に塗布する事により、ミュータンス菌を
科学的に除去する方法です。

現在当医院ではPMTCは実施していますが、3DSは導入に向けて検討中です。


○歯周病
歯周病(歯槽膿漏)はどんなものでしょうか。一言で言えば、歯の周囲の骨が細菌の毒により
溶ける病気です。歯肉が腫れた、歯肉から血が出る、息がくさいというのは歯周病の症状にす
ぎないのです。骨が溶けても痛くないしわかりません。よって手遅れになることが多いのです。
また最近では歯周病と心臓病、糖尿病。etc.と関係もわかってきました。歯周病の要因には
下記のようなものがあります。

 ブラッシング → やはり、う触と同じで歯周病の直接的な原因は歯垢(プラーク)です。歯垢
を除去するブラッシングは重要ですが、これだけでは予防できません。ちなみに、歯周病の原
因菌の主なものは下記です。

アクチマイセス、アクチノマイセテムコミタンス(Aa菌)
ポルフィロモナス、ジンジバーソス(Pg菌)
プレボテラ、インターメディア(Pi菌)

 異常な噛み合わせや歯ぎしり → 一部の歯に強い力が加わると骨はなくなっていきます。

 食事 → 体の抵抗力と骨の抵抗力は同じです。デタラメナ食事だと体の抵抗力が低下しま
す。

 疲れ、ストレス → 体の抵抗力に関係します。

 タバコ → これが歯周病を悪化させる最大の要因だという研究者、臨床家もいます。タバコ
により歯周治療がうまくいかないのは確かです。本気で直したいなら禁煙です。

 長期にわたる投薬 → 抗てんかん薬やある種の降圧剤は副作用として唾液分泌の低下や
歯肉膨張をおこす事があります。


プロフェッショナルな予防 → う触と同じです、ただ3DSに使う薬剤は異なります。

 異常のようにう触も歯周病も基本的には生活習慣病です。よって最終的には生活習慣を改
善し持続する意思の力が勝負となります。治りたい人は治るし、どうでもいい人は治りません。
自分の健康は自分で守るしかないのです。
 その為に私たちに出来ることは正しい情報をお伝えし、きちんと治療および予防をする事な
のです。今まで歯科医院は歯が痛いので通院される方がほとんどだと思います。
 ベストな歯科医院の使い方は、メインテナンスや予防の為に通院することと思います。





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