室戸岬のシオギクの変異種  ’99



 11月下旬から12月上旬にかけて室戸岬周辺のシオギクが満開になります。おもに岩場に咲くアゼトウナとならんで晩秋から初冬にかけて室岬を彩ります。アゼトウナの明るい黄色に対して濃い黄色がまたなんともいえません。
 
 室戸岬を中心に、西は高知県物部川、東は徳島県蒲生田岬までの海岸の崖などに生える多年草。頭花は黄色の筒状花だけからなり・・・−山渓ハンディ図鑑から抜粋。物部川以西ではシオギクがなく、シオギクが生える環境にはノジギクが咲きほこります。高知県西部はノジギク・東部はシオギクと、棲み分けの好例でした。また室戸岬のシオギク群落は見事なものです。
   ところがゆっくり歩いて見ると何カ所かで白の舌状花をもつシオギクの群落があります。単なるバリエーションというには多すぎますから交雑種とおもわれます。

 今年舌状花を出した株は来年以降も舌状花を咲かせることが予想されます。現にシオギクの「筒状花だけの頭花」というシオギク固有の形質を捨てた個体がかなり見られることから、今後は舌状花の形質が浸透して拡がることが予想されます。

 室戸のシオギクは将来は白い舌状花をもつ個体群になりさがる?おそれが大きい。まだ99年だけの観察ですが、室戸岬の海岸に震源地らしいノジギクと思われる群落があり、また園芸種の「キク」も国道沿いで見られました。

 現在舌状花を持つシオギクは海岸部では約1Kmに集中しています。固有の形質を野生の状態で保存するには、この1km内のシオギクをすべて撤去し純系のシオギクを栽培・移植する作業を何年か続ける必要がある。

室戸岬でのシオギクの交雑の様子 
   室戸岬のシオギク群落。甘い香りがただよう。
  頭花は黄色の筒状花 だけで舌状花を持たないのが特徴。
   地味かもしれないがすごくきれいです。
   小さい花弁の舌状花が少し混じる
   舌状花の花弁が大きくなる。
   舌状花を持つ個体。
   上の状態の群落。
   混在した群落。
   すぐ近くにあった群落。

室戸市のシオギクの様子

   *室戸市椎名地区では雑種の分布は集落内にとどまっていて、集落からはずれた国道沿いではデフォルトのシオギクばかりでした。拡がる気配はないように思えます。交雑の親のキクが少ないせいかもしれません。
 室戸岬では白い舌状花を持つのに対し(ノジギク親)、椎名では黄色の舌状花(八重に見えるものもある)がある(栽培種親か)ことから、シオギクは交雑種が極めて容易にできやすいようです。

 *室戸市元地区では海岸に大きなシオギク群落があり、海岸では交雑の様子は見られないが、群落に隣接してバイパス工事が始まっている。人家の近くと国道沿いでは交雑種が見られた。

 *室戸市高岡漁港東網干し場脇のコンクリート堰堤に大きな群落がある。交雑の様子はない。

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