| 映画「あした」について |
ひとは、約束する。
映画が始まってまもなく現れるこの字幕は、この作品のテーマそのものである。
(96.2.11)
前・尾道三部作が青春をテーマにしていたのに対し、今度の三部作のテーマは「家族」。一作目の「ふたり」もそうだったが、今回も死が大きなネックになっている。前作と大きく違うのは、主人公というべき人物が特にいないこと。冒頭の回想シーンなどから、強いて言えば高橋かおり演じる女性が主人公なのかもしれないが、他の人物もほぼ均等に描かれながら物語が進んでいく点では、みんなが主人公といった感が強い。
出逢うために、
共に生きるために、
そして、
ときには、
「さよなら」を
言うために。
船の事故で死んでしまった人たちが、家族や恋人に別れを告げるために運命の浜辺によみがえってくる。そんなこと、現実にはないとはわかっていても、登場人物たちと一緒になってその瞬間の訪れを心待ちにしてしまう。そして、彼らが再会を果たして抱き合うと、ほっとして涙する。
しかし、再会のあとにはもっとつらい本当の別れが待っている。それから逃れたくて、悪あがきをしたり、喧嘩をしたり。でも、結局はみんな、死という事実を、それに付随する別れを受け入れる。
やるせない、悲しい結末になることも覚悟していたが、決してそうではなかった。「さよなら」をきちんと言えた家族、恋人たちは、みんな清々しい表情をしていた。大切な人の死を心に大切にしまって、これから生きていくことを決意しているようだった。だからタイトルが「あした」なのだろう。あしたへと続く希望が、あの一夜でそれぞれの心に芽生えてきたのかもしれない。
大林作品をすべて観ているわけではない。観ているものも半分以上はテレビ放映。実はこの「あした」も、お正月(大晦日だったか)の深夜にテレビ放映があるのを見つけて、録画しておいて後日観た。
でも、大林作品はかなり好きなので、監督のホームページにもよくお邪魔する。いつかは尾道にも行ってみたいと思っているが、さていつのことになるやら。
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