DAVE NEIMAN  ハンマー・ダルシマコンサート

素朴な楽器、ハンマー・ダルシマ

 ある日の宇都宮氏からの電話。
「ハンマー・ダルシマのコンサートするんよ。打ち合せするから駅に来て」  ハンマー・ダルシマって何?と思いつつも、とりあえず出掛けていった。駅の二階はシネマ倶楽部の活動拠点なのだが、やってきた面々もほとんどシネマのメンバーばかり。
 そういえば、以前シネマの例会で篠崎会長が、質のよいイベントを町民レベルで企画・運営していきたい、そのための組織としてシネマ倶楽部のメンバーにも協力をお願いしたい、なんてことを言っていた。このコンサートはつまり、その第一回目としての企画らしい。
 ハンマー・ダルシマは台形の胴に数十本の弦を張り、木のスティック(ハンマー)で弾いて音を出す素朴な打弦楽器。紀元前九世紀頃に中近東で生まれ、のちにヨーロッパに渡ってチェンバロやピアノになったといわれる。
 初めて聞く名前なので、超マイナーな楽器かと思いきや、アメリカではコンテストも行なわれているそうで、今度訪れるデイブ・ニーマンさんは優勝経験もある名手とのことであった。
 デイブ氏はなんとCDまで出しているプロフェッショナルであった。そのCDを聴きながら、入場券の販売計画やら当日の日程などを決めた。
 会場は駅の二階、スペースからしてせいぜい70人が限度。70枚の券を売ることはたやすいが、70人に来てもらうことは難しい。お付き合いで券は買うが当日は来ないという人も結構いるのだ。
 今回はこのグループで初めての企画。何とか会場を埋めたい。欲を言えば、この会の主旨を理解してくれる質のいいお客さんで。そうでなければ、デイブ・ニーマンさんにも申し訳ない。
 夜一回だけのコンサートになるが、昼間のうちに来町予定とのことなので、できれば商店街の一角でストリートパフォーマンス的にミニコンサートを開いてみてはどうかという意見も出た。素朴な音色には飾らない街角の空気が似合うだろうというわけだ。会場の雰囲気も、フォーマルなものより、カントリーっぽいものにしようということになった。
 ついでに、司会も素朴でカントリーな(?)私がすることになった。司会本業の真紀子さんを差し置いて恐縮だが、そう言われれば私の方がどう見ても適任。

嬉しいハプニング

 さて、そうこうするうちに当日。券は順調に売れ、あとは客入りを気にかけるのみとなった。天気はあいにくの曇り空。前日までに降った雪が溶けかかっていて、路面状態も悪い。予定していたストリートパフォーマンスは難しく、ここなら絶対に人が集まると頼みの綱にしていたAコープも定休日。どうしたものかと思っていると、やってきたデイブ・ニーマン氏の方から、老人ホームのようなところで演奏したいとの提案。
 早速、特別養護老人ホーム「久万の里」へ打診してみると快諾。昼食後、みんなで「久万の里」を訪問した。デイブさんはアメリカ人にしては小柄で、優しそうな感じのいい人だった。度々日本を訪れているとのことで、日本語も少し喋れる。集まったお年寄りたちに日本語で短い説明をしたあと、演奏にかかった。十五分程度のミニコンサートではあったが、外国の曲に混じって「さくらさくら」「荒城の月」が演奏されると、会場から歌が沸き起こってくる一幕もあり、和やかに終えることができた。このハプニングは彼自身、とても気に入ったらしく、楽器を片付けながら「ハートウォーミング」と微笑んでいた。
 そのあとは、駅の近くの産業文化会館へ。生涯学習の会が開かれており、まもなく解散の時間になるというので、出てくるところをねらってホールで演奏しようという試み。ハンマー・ダルシマには三本の足がついていて、ホーム炬燵の足のようにくるくる回して脱着させる。取り外せばコンパクトになって、台形の胴と一緒に専用のバッグに納まって持ち運べる仕組み。デイブさんは一人で手際よく組み立て、チューニングする。素朴な楽器だけに、チューニングが難しいらしい。温度や湿度の変化でも微妙に音が変わってしまうのだという。
 産業文化会館でのミニ・コンサートは、帰りを急ぐ人々でごった返して落ち着いたものではなかったが、数人の興味ある人が周りを取り囲み、楽器について質問をする光景も見られた。コンサートへの興味付けという点ではまあまあだったのではないか。

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演奏中のデイブ・ニーマン氏

質のいいものを質のいいお客さんと

 そして、いよいよ、夜のコンサート。開演が近いというのに、客入りは今一つ。席は後から埋まっていき、前の方は空席が目立つ。お客さんにお願いして、なるべく前へ詰めてもらい、まあ、このくらいならいいだろうと思うくらいにはなった。遅れてきた人もいたので、開演直後にはほぼ満席状態となった。
 素朴な司会者のたどたどしい解説のあと、デイブ・ニーマンさんの登場。昼間のラフなジーンズ姿から、いつのまにか白のシャツと黒のスラックスに正装していた。
 曲は、クラシック、民族音楽、クリスマスソングなどさまざま。楽譜も何もなしで、複雑な音を紡いでいくさまは、まさにプロ。曲の合間に入る日本語のトークも彼の人柄を表して会場を和ませる。
 企画の段階で、気持ち良くて寝てしまう、二時間も一つの楽器を聴き続けるのはしんどい、という懸念もあったが、そうした心配を吹き飛ばしてくれる演奏であった。途中、コーヒータイムを兼ねた休憩をはさんだが、そこで帰ってしまう人もほとんどなく、アンコールの手拍子まで沸き起こって、コンサートは大成功を収めた。
 質のいいイベントで、質のいい客を集める、という今回の目的はほぼ達成された。今後はこれを継続していけるかどうか、ということに焦点が移っていくだろう。とにもかくにも、メンバーのみなさん、ご苦労さまでした。そして、デイブ・ニーマンさん、ありがとうございます。またお会いできる日を楽しみにしています。


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