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vol.3 柿の木レストラン
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| わが家の前には一本の柿の木がある。台風の襲来が多かった割には今年もたくさんの実がなった。近所の人が通
りすがりに車を停めて「柿もらうよ」と手を伸ばしていく。田舎ならではの風景だ。 柿の木に引き寄せられるのは人間だけではない。秋も終わりにさしかかると、枝に残った実を目当てにエナガやメジロなどの野鳥が訪れる。何度も霜に焼かれた熟柿は、見かけは悪いが甘みが増して鳥たちには最高のご馳走だ。時にはけんかしながら夢中でついばむ姿を見るのが、わが家の冬の楽しみになっている。 ところが、猛暑の影響か今年はこの柿の木レストランに早い時季から珍客が訪れている。まずは、スズメバチ。全国的に異常発生したようだが、わが家では熟した柿の実に群がり、周辺を飛び回った。残暑が和らぎ、スズメバチの活動期もピークを過ぎてようやく平穏が戻ってきたと思ったら、今度は地面 に落ちた熟柿を狙ってアナグマがやって来るようになった。 アナグマはイタチ科の動物で、体つきはタヌキに、顔はハクビシンに似ていて鼻の部分に縦に大きな白い線がある。明るい茶色のふわふわした毛並みの動物がうろついているのは私も娘も目撃していたが、はっきりと顔まで確認したのは母が最初だった。 道路にあったはずの柿がいつのまにかなくなるので不思議に思って見ていたところ、家の前の側溝からアナグマが出てきて落ちている柿を取り、また側溝にもぐって食べていたという。よほどおいしかったらしく、その後は側溝に隠れもせずに白昼堂々と路上で柿をむさぼる姿が何度も見られた。 今年は度重なる台風被害で山に餌が乏しく、例年よりも早い時季から野生動物が里へ降りて来る傾向があるらしい。全国各地でクマが出没して騒ぎになっている。久万にクマがいないのは幸いだが、この調子で今後も珍客が訪れるとなると、常連客の鳥たちが来るまでに柿がなくなってしまうのではないかと心配もしている。 何はともあれ、山里の柿の木レストランは、冬までの営業をめざして今年も好評開店中である。 |
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(愛媛新聞「四季録」2004年10月21日掲載)
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<画像>足元に寄ってきたアナグマ
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