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vol.5 疑似体験
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| 妊婦の大変さを夫にも理解してもらおうと、重り付きベストなどを装着して妊婦疑似体験を行う勉強会がある。私たち夫婦は残念ながら日程の都合がつかず参加したことはないのだが、出産という目標に向かって夫婦が互いに歩み寄り、親になる覚悟を固めるという意味で大変良い企画だと思う。 実際のところ、妊娠してから出産するまで、女性の身体の変化には大変なものがある。初期はつわりに悩まされ、体形の変化とともに後期は腰痛やむくみと闘わねばならない。 臨月までの妊婦生活は私にとって十年ぶり二度目であったが、今回は前回にも増して体の不自由さを強く感じた。年をとったことや日ごろの運動不足も影響してのことだろうが、おなかが突き出した格好になってからは立ったり座ったりの日常的な動作もつらくなった。手足がむくみ、特に手は鉛筆や箸を持つのも一苦労だった。 妊娠するまではすたすたと上がれた階段がとても長く感じられる。どこかにつかまらなければトイレでかがむことができない。手に力が入らなくて、ドアのノブを回せない。そんな場面 に出くわす度に、私には一時的な現象に過ぎないこれらのことが、高齢者や身障者にとっては日常なのだと気付き、愕然とした。 妊娠初期につわりがひどいのは、一番安静にしなくてはならない時期に母体に無理をさせないためだという。後期にトイレが近くなったり腰痛がひどくなったりして夜起きる回数が増えるのは、赤ん坊が生まれてからも夜中の授乳などがスムーズにできるように予行演習をしているのだという。そうして、だれの指示でもなく、自然に母体は守られ、母性が育まれていく仕組みになっているらしい。 夫はベストを付けて妊婦の疑似体験をし、妊婦は自分自身の体の変化を通して高齢者や身障者の日常を疑似体験する。不快で不自由な体験ではあるが、子を育てていく親として、一人の人間として、思いやりの大切さを学ばせてもらっている。そう感じるのはおそらく私だけではないだろう。 |
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(愛媛新聞「四季録」2004年11月4日掲載)
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<画像>ススキ
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