vol.8 柿の木後日談
 先月紹介したわが家の「柿の木レストラン」は、予定よりもずいぶん早く十一月中旬に閉店となってしまった。例年は硬い実が霜に耐えながら雪の時期まで枝に残るのだが、今年は秋口の気温が高くて熟すのが早かったようだ。
 短い間ではあったが、今年もこの柿はみんなに喜んで味わってもらえた。小ぶりでゴマのような黒い斑点がたくさん入っていて甘く、昔懐かしい味がする。人間はもちろん、動物たちにも人気だ。
 アナグマは毎日何度もやって来て、落ちた実をきれいに片付けた。娘がデジカメでアナグマの写 真を撮りたいと言うので、柿の実を置いていたら来るかもよ、といい加減なことを言っていたら、五分もしないうちに本当に現れたそうでびっくりした。近所の人から「飼いよるん」と聞かれるほど頻繁に訪れ、私たち家族を楽しませてくれた。アナグマのいいところは柿の木に登らないことだ。落ちた分だけを食べる。何だか慎ましくていい。もっとも、その姿見たさに、かなりサービスして落としてやったりもしたのだが。
 一方、少々荒っぽいお客がいることも判明した。ある夜、外へ出たとき、家の屋根に近いところの柿の枝が風もないのに揺れていた。不自然な揺れ方が気にはなったが何もいないようなので放っておいた。すると夜中、屋根を走るけたたましい足音と獣の鳴き声。夫が確認したところ、ハクビシンらしき動物が屋根伝いに柿の木に跳び移り、もう一匹と喧嘩をしていたらしい。家のすぐ裏が山なので、山から最短距離で柿の木をめざすには確かに屋根を伝うのが便利ではある。昼はアナグマ、夜はハクビシン。柿の木レストランは二十四時間営業だった。
 珍客続きで今年はエナガやメジロたちにご馳走してやれなかったなあと思っていたら、閉店間際になって彼らもやって来た。わずかではあったが、わが家の味を堪能できたようだ。最後の一つまで夢中でついばむメジロの姿がいじらしかった。
 毎年楽しい出合いと発見をくれる柿の木。来年はどんなことが待っているか、今から楽しみだ。
(愛媛新聞「四季録」2004年11月25日掲載)
<画像>側溝から顔を出したアナグマ

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