vol.9 元気の源
 出産後、家にこもる日々が続いている。心配していた母乳も何とか出るようになり、二女は健やかに成長中。まもなく生後一ヵ月を迎える。母体の方もかなり回復してきて、私は早くもあちこちへ出かけたくなってうずうずしている。
 社会や他人とのつながりを疎んじ、家に引きこもる人が増えているというが、私のような人間は長く引きこもってはいられないようだ。
 役場の仕事では、町内放送や広報紙の取材で駆け回ることが多かった。どこへでも行き、いろんな人の話を聞いて番組や記事をまとめる。常に締切りに追われる大変な仕事だったが、知らないことを勉強できたり、魅力ある生き方に触れられたり、楽しいことも多かった。
 人と話をするということは、パワーのいることだ。自分が疲れているとしんどいときもある。一日で違うテーマの取材を三つもこなすとさすがにぐったりする。
 しかし、人と話をすることで元気がもらえるのも事実だ。ある自営業の方が言っていた。お客さんが来ないと売り上げも落ちるが、それ以上に気分が落ち込む。お客さんと話をすると元気が出る。どうせ仕事をするなら、たくさんのお客さんから元気をもらって気分よく仕事がしたい、と。
 話の内容は、身構えた人生談などでなく、ごく普通の世間話でよいのだと思う。取材をしていても、核心の話より取材後のオフレコの話の方がおもしろかったということが何度もあった。
 何気ないことを何となくしゃべっていて、それでなぜ元気が出るのか、詳細なメカニズムはわからない。「言霊」と昔から表現されるように、言葉には何かしら不思議な力が宿っているのかもしれない。
 この一ヵ月、子守りを家族に頼んで短時間の外出を数回した。自分で車を運転して行きたいところへ行ける開放感を久々に味わい、行った先々で短い世間話を楽しみ、慌ただしく帰宅した。たったそれだけでも、やはりだれかと会話したあとは気分がいい。単調な毎日につい煮詰まりがちな子育ても、また新たな気持ちで頑張ろうと思えるのだ。

(愛媛新聞「四季録」2004年12月2日掲載)
<画像>側溝から顔を出したアナグマ

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