• カリフォルニア在住のお母さんからの便り!






      こんにちは。はじめておたよりします。
     私は3才になる自閉症児の母親でカリフォルニアに住んでいます。
    
      さて、わが家には5月6日で3才になった"W"という”mild Autism”と
     診断された子供がいます。あと、5才になる"K"という女の子がいます。
     彼女は健常児です。
    
      私が"W"を産んで育てて行く途中、何度も「あっ!これはおかしい」
     と思ったことがありました。それは、反応が鈍い、言葉が少ない、
     小さい時は目があっていたのに、最近よくそらすなぁ。とか、
     あまり笑わない子だなぁ。などです。
     
      ある時、日本人のベビーシッターを使っていたのです。
     私が"W"と呼んでも振り向く回数が減ってきていることに気がつきました。
     それで、ベビシッターさんに、
     『実は"W"、障害があるのでは、と思うのですが、どう思われますか?』
      と聞いた所、彼女は
     『障害があるとは思いませんが、実は"W"ちゃんは少し気になっていたことが
      あるのです。
     友達とかかわらない、おもちゃをとられても自分の手を見つめて怒る様子もない。
     それと、1才半前ですから、他の子供と遊べないのは皆そうなんですが、
     "W"ちゃんの場合、他の人が家に入ってきてもチェックをいれないのですよ。
     他の子供はかならず、自分の母親ではと思って振り向くとか、
     ちらっとでも、誰が来たかと確認するのですが』
     
     と云われた時にはもう私は「やっぱり。」と思っていました。
     それで、病院に連れていきました。
    
      やっぱり、スタンフォードでしょう、といわれ、
     スタンフォードのセラピストにかかりました。
     この人は歳をとっておられた女性の方で、その人がいうのには
     『"W"は自閉症じゃない、精神薄弱の疑いがある、
     自閉症はもっとパワーのある病気でこんなにおっとりしていない』
     と云われました。だけど、私は自閉症を疑っていてその疑いは晴れず、
     これと平行して、スタンフォードの精神科医を予約していました。
    
      アメリカの医療の欠点は、こういういい病院の予約というのは2ケ月のち
     3ケ月のちというのが、あたりまえで、早期発見、早期治療が
     障害のある子供にはとてもいいということをすでに本で読んでいた私は、
     とにかく焦りました。
    
      結局、スタンフォードからチャイルドヘルスカウンセル
     という病院を紹介され、そこではPDDとか
     自閉症の子供を専門にみているとの事でした。そこに行けば、
     自閉症かそうでないかが判るというのです。
     結局、1才8ケ月にそこでやっとmild autismという判断がくだされました。
     その病院は毎年医学の研究発表をもとに最近ふえつつある
     精神障害の規定をすこしずつ照らし合わせながら診断する、という所でした。
     この点で私が学習したのは、小児精神科は最新のデーターを持っている
     医者につくのがいいのでは、ということでした。
    
      それと、スタンフォードのセラピストの人に精薄と云われた時点で
     学区がやっているアーリーエディケションという障害や
     おくれのある子供達を通わせる学校を紹介されました。
     それもアメリカはとにかく書類の処理がとても遅く、
     2ケ月後にやっと、入学の手続きがおわりました。
     "W"1才10ケ月のことでした。
      それから私はとにかく、本を読みまくり、何がいいのか、
     何があまり効果がなかったのかを調べまくりました。
     本はなるべく翻訳本を読むようにしました。
     アメリカの医療制度はわりと難しく、困惑したことも多かったの
     で、それを知る意味もありました。
    
      それと平行して私は「"W"は障害があって学生セラピストを探している」
     といきつけのお寿司やさんやいろんな所で話しをすると
     サンノゼ大学の人がいろいろ探してくれて日本人で
     大学院にかよっているセラピストを探しだしてくれました。
     
      この人が本当に勘のいい、頭の上に天使の輪の見えるような人だったのです。
     身なりは髪の毛はまっ茶で爪はまっ黒に塗っています。
     どこの留学生くずれか、と思うくらい
     (本人の前では絶対にいえませんが)(笑)本当に派手だったのですが、
     話してみると誰よりも"W"のことを考えようとしてくれているのがわかり、
     週に1回来てもらうようにしました。後でわかったのですが、
     彼女は留学生の間では伝説の人と呼ばれているらしく、
     こつこつと努力をして、成績はほとんどAで卒業した。という話しでした。
     アメリカ人の中にまじってです。
     それで、私がもう少しセラピストの数をふやしたい。と話すと
     本当に親身になって探してくれたのです。
     だけど、"W"の症状は悪化する一方でした、ぼーっとする時間が増え、
     このスケジュールをこなすメドが立ったときにはもう、
     呼んでも振り向いてはくれませんでした。
    
      それで、最初に私が感銘を受けた本が『我が子よ声をきかせて』という
     キャサリンモリスの本でした。(NHK出版)
     データーがわりとしっかりしているような気がしたのです。
     それで、行動療法をこころみたのですが、
     この本に書いてあるのとは大分ちがい、高いお金をはらって
     講集会に出たものの、"W"には物足りないという感じがしました。
     日本では子供を叩くというのはすごく普通の風景ですが、
     こちらではこれは幼児虐待とされ、とてもいけないことです。
     行動療法はいけない行動をした時におしおきを加えるというのがあるので、
     そこが、いろいろと制約をくらったなぁという感じがありました。
     私が思っていたほど、悪い行動を消去する方法のやり方が甘かったように
     思いました。
     これなら、遊戯療法の方がまだマシかなかと思いはじめていました。
    
      それで、セラピストの人たちには、行動療法をやめると話すと
     彼女たちはそれはとてもいい判断だ。と話してくれました。
     もうその頃、私と日本人のセラピスト(明子ちゃん)と
     アメリカ人のセラピスト(ベッキー)は、
     "W"の為に一番いいことを探すようになっていたのです。
    
     私の判断は『どんな療法もこのセラピストの人たちを失うのなら、
     それは選ぶべきではない』というものでした。
    
      彼女たちが主にやってくれたのは遊戯療法で、
     まずは目をみることからの訓練でした。
     彼女たちは私たちは心のセラピストで日常をたちあげる
     行動のセラピストではないと話してくれました。
     "W"の心をどうひらくか、それが課題でした。
    
      学校は"W"に日常的な事を教えてくれる場所でした。
     最初は週に2回(午前中)でしたが、とにかく"W"は家にいると、
     すぐ自分の世界に入ってしまうので、
     その件をミーティイングで訴えました。
     そうすると、週に3回に回数をふやしてくれ、
     私が「これでも足りない」というと『カリフォルニア州の法律で
     3才未満の子供は週に3回までしか学校にいけない』
     (国がやっている障害施設の精神面のフォローをする
     施設のほうだけだと思うのですが)という事がわかりました。
     あとは週に1回先生方が私たちの家に来てくれることになりました。
     これは全て無料です。
    
      これで驚いたのはこのミーテイング形式のことです。
     最初のミーテイングでは3回に分けておこなわれ、まず、親が"W"の話しをします。
     つぎに、先生たちが"W"を観察します。それで3回目に話し合いがはじまります。
     それ、以外に、ミーティングは3才までは最低半年に1回はあり、
     (リクエストさえすれば何回でも開いてくれる)
     国から州から学区から人が出てきます。
     それと"W"の学校の先生、それ以外に国から私にお金をくれるように
     申請をする人がきます。"W"一人の為に計5人以上の大人がくるのです。
     ここでは日本のように、こういうふうにします。というのではなく、
     お母さんがどうしたいか、お父さんがどうしたいか、にかかってきます。
     だから、意見がなければ、本当にプログラムも空洞的な物が
     できあがる訳です。
    
    
      だからどんどん「"W"がフォークを使えるようになってほしい、」とか、
     「絵をかけるように」とかいろいろな意見を出さねばなりません。
     担任の先生が"W"はここまでできる、といろいろ報告をしてくれ、
     先半年の目標がここできめられます。
     このプログラムは"W"個人のもので、皆で使うものではありません。
     このミーティングでは、"W"のことだけではなく、
     いかにして母親の負担を軽くするかという話し会いもなされます。
     先生たちや国に申請する人たちは絶えず、
     私に『なにかこまってることはない?』と聞いてくれます。
     それで、私が冗談で
     『"W"は預けるのが難しいから髪も切りにいけない』と話すと
     皆が笑ってくれると思ったのですが。
     皆『それは大変ね。』と真剣で。
     その中の国からお金を貰えるように申請する人が、
     『こういうシステムがあります。どなたか、ベビーシッターを
     探していただければ、国がその人に対して、
     24時間までならベビーシッター料を払います。
     これは1時間6ドルで、おじいさんや親戚の人でもかまいません。
     だけど、それはあくまで母親が休むというのが前提です。
     たとえば、髪をきりにいく。病院に行く。夫婦で夕飯を食べにいく。
     そういう時にしか使えません。セラピストにはつかえません
     。』というものでした。これには本当に驚きました。
     アメリカは夫婦が2人きりの時間がなくなるという事を
     本当にいけない事としています。
    
      さてこのミーティイングが終って、はれて入学となった"W"は
     TEACCHというシステムのもとで教育がなされます。
     先生は担任の先生。副担任の先生。
     スピーチセラピストが常時いる人たちです。生徒は5人くらいです。
     それ以外に、実習生やボランティアの人が常時、3〜4人はいるので、
     先生の方が多い時はしょっちゅうです。"W"は指を吸うのをきっかけに
     自分の世界に入るようだと話したら、一人の女の人がすっと
     "W"にはりついて、"W"が指を吸うとやめさせてくれていました。
     このTEACCHのやりかたは家でもなるべくするように、
     といわれています。
     絵や写真をみて、それで気持ちを伝えるというアレです。
    
      それで、今の"W"は、というと、呼ぶと必ず、振り返るし、
     知らない人と抱きあう(HUG)アメリカ流のアイサツもできます。
     だけど、行動はやはり、障害があるなぁとわかりますが。
     昔にくらべ、ずっと、ずっと、意思の疎通はしやすくなりました。
    
      ここまで書いて、このメールがどれくらい人の役にたつのだろう、
     と思っていますが。あとはなにか質問があれば、質問してください。
    
                          Y.K
    
    質問は、彼女へ....!
    kubo@inow.com

              
                              P.S   日本の障害児を持つお父さん、お母さんへ  隠さないで、素直にまわりに「手を差し伸べて下さい。」と話して見てください。   私は今回、"W"の件を本当にいろいろな人に話しをしました。  嫌な事を言ってくる人もいます。だけど、100個嫌な事をいわれても、  その1個"W"が必要な情報が入っていれば、  100個の嫌ごとは必要情報を得る為のものだった。と思えば、  そんなに気になくていいのでは、と思っていました。  実際にはそんなに嫌な思いもしませんでした。   私の場合、これ以外にもスタンフォードに企業留学にきていた  独身の男の人がスタンフォードの情報をながしてくれたり、  (スタンフォードの情報は学外の人が取る場合はお金をとられます。  彼の場合は学生扱いなので無料だったのです)  コンピュータでいろいろな情報を取って、  ( まだその時、うちにはコンピュータがなかった。)  FAXでながしてくれたりしました。  実はこのコンピュータも渡の為にいれたようなものですが、  私の趣旨を理解してくれた独身のひとが全部立ち上げてくれました。  子供がいない人でさえ、そこまでやってくれます。   障害児というのは確かにまわりに手間暇をかけたり迷惑をかけたりします。  だから障害児というのであって、そういう人を助けるのが嫌だという人は  日本にそんなにいるでしようか?皆助けたい、  力になってあげたいという人の方が多いような気がします。  だから、『自分が今、困っていることはこれで、助けてほしいことはこれ』と  グチにならないように、明確にすると、  きっと子供の為にいい情報を皆がながしてくれて、  とてもいいことが起きると思います。  親が社会を信用するのは大事なことだと思います。  2度や3度の裏切りくらいで落ち込まないで下さい。  その社会で生きていくのは障害のある自分の子供なのです。  私はまだまだ日本も捨てたものではない。  いい所だと信じています。....
    質問は、彼女へ....!
    kubo@inow.com



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