■ 初めまして。
     長野京子と言います。
水泳の指導員をしています。
裕生と付き合ってきて思ったことです。
読んでください。


裕生と初めてあったのは、7年くらい前だと思います。
『今日から新しい方がきます。自閉症の方ということです。』
フロントの方から言われました。自閉症の人は今まで何人かは
指導させて頂いたことがあったのですが、みんな幼稚園や小学生といった
小さい子ばかりでした。
裕生が初めて来た時は、もう15歳くらいだったと思います。

正直、緊張しました。
でも上司が教えてくれました。
『それは、個性なんだ』
それを聞いてすごく気持ちが楽になったのを覚えています。
それから、裕生のお父さんから、裕生のことだけじゃなく、
自閉症や、障害者の方のことを色々教えて頂くようになりました。

それから少しづつだけど、障害者の方に対する思いが変わっていきました。
以前は、障害者の方に対しては、嫌いとか、そういう感情はなかったけど、
不思議な存在であったことは確かです。
裕生も、もちろん不思議な存在の一人でした。
時々笑ったり、怒ったり、大きな声を出したり。
一番困るのは、裕生の考えていることが分からないことでした。

でも、お父さんから色々教えて頂いて思ったことは、
裕生は私の言葉を理解しているのに、私は裕生の言葉を理解していない。
理解しようとしていなかった、ということです。

初めから、聞こうとしていなかったんじゃないかな、と今考えれば思います。
だから、不思議な人って思ってたんだと思います。
でも、裕生にしてみたら、私がよっぽど不思議な人って思ってると思います。
自分が一生懸命何かを伝えようとしてるのに、私は聞こうともしない。
失礼極まりない奴だったんです。私は。

だからこれからは、裕生に置いていかれないよう、もっともっとガンバらなきゃ、 って思いました。

父からいつも言われることがあります。
『人間関係において大切なことは、常に自分の【分】を守ることだ』

裕生は障害者って言われています。
私は、健常者って言われています。

確かに裕生と私は違います。
障害者と健常者という違いがあります。
『障害者と言われている人も健常者と言われている人も、同じ人間なんだ』
上司からよく言われます。

これから裕生と付き合っていく上で、私はもっと自分の分を守ることを、
もっともっと真剣に考えなきゃって思いました。

父が『途中しか知らないけど、「やはり 野におけ 蓮華草」って言葉がある。よく肝に命じておけ』 よく言われます。
原っぱに、花瓶に飾るような花を置いても、ひとつも綺麗じゃない。
やはり野には、野の花である蓮華草が似合うんだ。
野に生きたいのであれば、野を知り、野に似合うような花に、
花瓶に生きたいのであれば、花瓶を知り、花瓶に似合うような花に。
たとえ、自分の意志とは関係なく、その場で生きなければならないのであれば、
そこをよく知り、そjこで生きていけるように適応しなければならない。

父が言いました。
お互いがお互いを知るところから始まる。
健常者は障害者を。障害者は健常者を。
『まだまだ、青いな』
裕生に言われるかもしれません。
だから、この文は、裕生に内緒だよ。


これからのことへ



TOPのページへ