プロローグ







二十年以上前になるだろうか、
「いつかはハーレー」 を夢見て
750(ナナハン)ライダーをしていた頃・・・・・

交差点を左折し南へ向かった、先の信号が赤に変わっている。
止まっていたオートバイの横に並んだ。


ハーレーダビッドソン!!


火の玉模様のタンク、アップのハンドル、
斜めに跳ね上がったフィッシュテールマフラー、
前に置かれたステップ、


ハーレーダビッドソン.ワイドグライド !


「カッコエエノォー!」、と思いながらシゲシゲと見ていた。

ハーレーの男は前を見据えたまま小刻みなバイブレーションに
身体を揺らせていた。


男はこっちをチラリとも見ようとはしない。

こっちだって、’カワサキのZU 岩城滉一 仕様 ’ じゃ!。
十分にカッコイイ・・・と思っている。

信号が青に変わり並んで走り出した。
次の赤信号でまた並んで止まった。

やはり男は前を見据えたままこっちを見ようとはしない。

アクセルを2、3回あおってやった。
ヨシムラの手曲げ集合管が吠える!


しかし男は素知らぬ顔で前を見据えている。まるで、

「たかが、ZUやないか。俺のはハーレーやぞ!」

とでも言わんかのごとく・・・


男は信号が青に変わると同時に、前に投げ出した足で
チェンジペダルを蹴り下げ、地響きのような爆音とともに走り出して行った。

鼻であざ笑うかのように・・・


しばらくついて行った。やがてハーレーは脇道へ外れ
走り去って行った。


途中、追い抜いて前にきり込んでやろうかと思っていたが、


出来なかった・・・


そんなことしても、惨めになるだけで・・・


ハーレーを超えられるのは・・・ハーレーしかない・・・!


思った。




「クソッタレーッ!俺も絶対乗ってやる!!」

その日の夜夢を見た。

ピカピカに光るハーレーがあった。
よく見るとシートの上にちょこんと何かが乗っている。

猫だ、「おいで、おいで」をしている。

猫が手招きをしている。


まねき猫か?


ち、違う!?











Back