早寝早起き朝ごはん

 「早寝早起き運動、乳幼児に拡大=「キレる子」対策の一環−文科省

 文部科学省は15日、「キレる」子ども対策の一環として、乳幼児が規則正しい生活リズムを身に付けるための取り組みを2007年度から全国の幼稚園や保育所で行う方針を固めた。子どもの生活習慣改善を目指し、06年度から全国45地域の小学校を中心に進めている「早寝早起き朝ごはん」運動を拡大し、新たに全国35地域で、就学前の乳幼児まで対象に含める。07年度予算概算要求に関係経費を盛り込む。
 乳幼児の段階で規則正しい生活リズムが形成されると、情緒的に安定するとの研究結果を受け、「キレる」子ども対策として実施する。                            (時事通信)8月16日

早寝早起き朝ごはん(肥満対策)

 就寝は午後11時半ごろ。朝8時に起き、8時半前には家を出発する。時間がないので、朝食は食べない日のほうが多い。
 東京都内の住宅地にある保育園に通う5歳男児の生活だ。午前中はぼーっとして、走り回って遊ぶことは少ない。朝食を食べない分、昼の給食はよく食べ、おかわりする。標準体重を20%以上、上回る肥満だ。
 この保育園の園長は「都心に勤務する両親は、帰宅が遅く、夕食も遅くなる。そんな親と同じ時間帯で生活し、夜更かしする子どもが多い」と話す。
 睡眠は、肥満に深く関係している。富山大が、1989年度に富山県で生まれた子ども約1万人を継続的に調査したところ、3歳時点の睡眠時間が9時間未満の場合、中学1年の時に肥満になった割合は20%に上った。睡眠が11時間以上だった子どもに比べ、肥満になる危険度は1・6倍も高かった。
 富山大大学院助教授の関根道和さん(公衆衛生学)は「睡眠時間が少ない子どもの多くは、深夜に夜食を食べる、日中に活発に体を動かさないなど、肥満になりやすい生活を送っている」と指摘する。
 睡眠が短いと、睡眠中に分泌されるホルモンが少なくなったり、自律神経のバランスが乱れたりする。脂肪を分解する働きや糖代謝に悪影響を及ぼし、肥満につながるという。
 子どもの就寝時間は年々遅くなっている。日本小児保健協会の調査によると、夜10時以降に就寝する5〜6歳児は、1980年に10%だったが、90年は17%、2000年は40%に達した。これは、睡眠時間が減ったことを意味する。
 「幼児のうちは、夜型の親の生活に子どもを巻き込まないこと。夜ではなく、朝にコミュニケーションを取ってほしい」と東京女子医大名誉教授の村田光範さん(小児科医)は話す。
 東京都の中学1年C子さん(13)は、小学3年のころから就寝が夜11時過ぎだった。遅くまでテレビを見るのも原因で、「いつも眠気を感じていた」。
 おやつから間もないのに夕食をたくさん食べた。標準体重に比べた肥満度は46%になり、2年前から通院治療を始めた。野菜の多い食事に替え、部活動でバレーボールを始めるなどで、今では肥満度は標準範囲内(20%未満)になった。ただ、夜更かしは変わらず、午前1時過ぎに就寝することも珍しくない。
 食事、睡眠など生活習慣の乱れは、健康を害すだけでなく、学力低下や非行につながる恐れもあるとされ、文部科学省は今年度、「早寝早起き朝ごはん」運動を始めた。幼いころから早寝早起きの習慣を身につける意味は大きい。
 「早寝早起き朝ごはん」運動 子どもが望ましい生活習慣を身につけるため、文部科学省が提唱した。行政、医療・教育団体、企業などが参加し、子どもたちが朝食を作る、体操する、企業を訪問して朝から働く人に接する、などの活動を行う。朝食や睡眠時間の調査もする。    (2006年7月14日 読売新聞)

「早寝 早起き 朝ご飯」とは

 テレビを見るなど夜更かしをしては、朝寝坊、朝食抜きという悪循環に陥る子供が増えている。
 こうした生活リズムを改善しようと、文部科学省は今年度、「早寝早起き朝ごはん運動」を始めた。4月には活動の推進母体として全国協議会も設立され、各地で啓発活動を行っている。
 「いただきます」――。
 先月24日午前8時半、JR東京駅前の複合商業施設「丸の内オアゾ」1階の広場に、子供たちの元気な声が響いた。朝食の“食卓”を囲んだのは、東京都葛飾区立上平井小の6年生72人。バイキング形式でお皿に山盛りにした料理を、次々と平らげていった。
 バランスのとれた朝食や早起きの大切さを知ってもらおうと、全国協議会が企画したイベント。朝食前には数人ずつに分かれて職場体験も行い、ホテルやファストフード店、東京メトロ大手町駅など、早朝から仕事をする現場を訪れた。
 「主食と汁物、肉、魚、卵と、野菜をバランスよく取るのが大事」と、アドバイスを受けた諸星拓海君(11)は「朝食はパンや牛乳だけということもある。少し早起きして、自分で目玉焼きを作ってみようかな」と話していた。
 睡眠不足や空腹で授業に集中できない子供たちが目立つようになり、「早寝・早起き・朝ごはん」に注目が集まっている。
 「夜更かしすると、体内時計と実際の時間との間にずれが生じ、時差ぼけのような状態になる。そうなると体調が崩れ、意欲が低下する。朝日を浴びることで、そのずれが解消される」。「『夜ふかし』の脳科学」の著書もある神山潤・東京北社会保険病院副院長は、早寝・早起きの効果を説明する。
 また、2004年の国立教育政策研究所調査では、「朝食を必ずとる」小中学生が、「全くかほとんどとらない」小中学生より、テストの平均得点が各教科で1割以上高かった。
 文科省では今年度、35地域を指定し、朝の体操や読書などの取り組みを支援している。その一つ、東京都葛飾区では、「小学5、6年生の半数が午後10時までに寝る」などの目標を設定し、学校ごとに取り組む。
 また、青森県鶴田町は04年に全国初の「朝ごはん条例」を施行。子供たちが共同で寝泊まりし、朝食も作る「通学合宿」を、2年前から実施している。その効果もあり「毎日朝食を食べる」という子供が、01年の88・6%から昨年は93・2%に増えた。
 文科省では、各地域の取り組みを検証し、年度末に公表する。「成果を明確に示すことで、保護者や周囲の大人たちにも、子供たちがきちんとした生活をする大切さを意識してほしい」と呼びかけている。
                            (大木隆士)        (2006年6月2日 読売新聞)

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