救急の日

                                地 軸 2004.09.09(木)  

 中高年には大いに気になる数字がある。年におよそ8万人が心肺停止で病院に搬送されているという。その半数近くが心臓に原因があり、多くが「心室細動」を起こしているそうだ。1昨年11月の高円宮寛仁さまの急逝を思い出す▲ 心臓が正常なリズムを失い、心室の筋肉がけいれんしたように動く致死性の不整脈だ。とにかく急いで電気ショックを与えるしかない。早ければ早いほど効果がある。その場にいる人が機敏に対応できれば、多くの命を救える▲ 自動体外式除細動器(AED)が、この夏から一般の人も使えるようになった。医師や救急救命士などに限られていたが、厚生労働省が解禁に踏み切った。救急車の到着を待っていたのでは手遅れになることが多い。救命へ大きな前進である▲ 厚労省は来年度の概算要求にAED普及の予算を盛り込んだ。人の多く集まる空港や駅、デパートなどに配置が進めば、市民の関心はおのずと高まる。学校に置けば子どもは命の尊さを学ぶだろう▲ 問題は使いこなせるかどうか。AEDは電気ショックを与える必要性の有無を音声で伝える。誤使用の恐れはまずないとされるが、一般市民は二の足を踏むのではないだろうか。講座を開いて使用法を徹底しなければならない▲ 「除細動の成功率を決めるのは、誰が行うかではなく、いかに早く行うかだ」。日本循環器学会AED検討委員会の三田村秀雄委員長の言は重い。きょうは「救急の日」。命を助け合う大切さを、ともに考えたい。 
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