五月病

                                 地 軸 2004.05.07(金)     

 大型連休が過ぎて、新緑がいっそうみずみずしくなった。あちこちの家の庭や郊外の木立で、つややかな若葉が生気をみなぎらせている。何かしら胸苦しさすら覚える▲ この春に県外の大学に進んだ息子が里帰りしたはいいが、髪を薄く茶色に染めていた、と知人が嘆いていた。ついこの前まで、自然が一番だ、茶髪なんてと言っていたのに理解しがたいという。まあ、「朱に交われば赤くなる」というところだろう▲ 染めていない若者を探すのに苦労する今どきのこと。新しい環境に適応していくために髪をちょっと差し出す、そういう自己防衛反応の一つといえるのではないか。ちゃんと生きるすべを身につけているわけだ。その意味では、彼らは五月病と無縁に違いない▲ 五月病は、あいまいな名前だが、この時期に特有の症状を現すという。新入生や新入社員らが、新しい環境に適応できずストレスをため込んでしまうと、無気力になったり身体に不調をきたしたりする。生きるすべをちょっと見失うと、陥るのかもしれない▲ 専門的にはアパシーシンドローム(無気力症候群)というそうだ。現代はシンドロームばやりで、「燃え尽き」「青い鳥」「ピーターパン」「朝刊」などが冠せられる。それぞれに意味合いと症状があるが、こう複雑多岐になっているのも、心の問題の深刻さの表れか▲ 言うまでもなくストレスは、生きていくうえで必ず付いてくる。問題は適度かどうか。六月になれば五月病でなくなる、くらいの余裕を持ちたい。
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