タンポポ

 

地軸 2003.03.17(月) 

 春の野を彩るタンポポが咲き始めた。寒い冬の問、地面にしがみついていた葉の中央あたりから茎が伸び、頂上に花を付けている。黄色いパラボラアンテナが陽光を受け止めているようでもある▲ 県内には大きく分けて3種生育している。明治時代に導入された大型のセイヨウタンポポ、やや小ぶりで在来のカンサイタンポポ、そしてシロバナタンポポ。セイヨウは外総苞片が反り返っているのが特徴だという▲ いま、こちらが急速に勢力を伸ばしている。日本生態学会もセイヨウを「動植物の外来種ワースト100」に挙けた。ただ、タンポポに罪はない。あまり突き詰めると「ふまれてたんぽぽひらいてたんぽぽ」(山頭火)などの句の趣まで失われる▲ 郷愁を呼び覚ます花である。折った茎を裂いて水につけるとクルリと巻く。綿毛の種子を一気に吹き飛ばそうと競った。中国ではこれを集めて、枕に詰めたという。なんとも気の長い作業だが、ふわふわ感は悪くなさそうだ▲ 古称のタナ(田菜)がタンに変わり、綿毛の「ほはける」と合体したという説。上から見るとタンポンポンと鳴らす鼓に似ているという説。綿毛が拓本を取るたんぽに似ているという説。春らしい語感も好ましい▲ 松山市内では昔ほど見かけなくなった、という声を聞く。アスファルト舗装などで追われているのは事実だろう。しかし、ミカン畑の緑などでナズナやハコべと一緒に咲いている。穏やかならざる人間社会をよそに、自然の営みは淡々と変わらない。



坂村真民 詩 「タンポポ魂」

  踏みにじられても
  食いちぎられても
  死にもしない
  枯れもしない
  その根強さ
  そしてつねに
  太陽に向かって咲く
  その明るさ
  わたしはそれを
  わたしの魂とする
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