庵治の海の話

原体験から馳せる思い

以下は、海についての原体験をもとに作った自作の詩で、ある会で発表したものです。
季節ごとに大きく表情を変える海の様子を感じていただければ幸いです。

※写真は自宅前で撮影したもの。場所は瀬戸内海に突き出した半島のほぼ先端部分です。
春にはしばしば濃霧が発生します。白く見えるものがそれです。


も4月になると、海の水もぬるみ始める。
ズボンのすそを精一杯折り上げ、水の中へ入って行く。
水中メガネを通して見る世界は、実際よりも大きく見える。
目をこらしてみると、大きく育ったメゴチがあちこちに潜んでいる。
たまに踏みつけて、足の下でゴソゴソしたりする。




はダイビング。真っ黒になりながら、毎日もぐる。
海底の暗い石室はメバルのすみか。
岩と砂のすき間には、サザエやアワビが陣取っている。
チヌやスズキの群れが、すぐそばを通り過ぎて行くこともある。
差し込む強い光の筋が当たり、ゆれ動く海草も輝いている。

には、海は魚牧場の様相を呈する。
カゴに入れたオキアミが水面に広がると、魚たちが一斉に集まってくる。
アジ・サヨリ・スズメダイ・カワハギ・ベラなど、いろいろな魚が、我先にと寄ってくる。
季節風が吹き始める晩秋には、打ち寄せられるようにカレイが岸に近づいてくる。
これから訪れる冬に備えて、思いっきり腹を満たしにやってくる。

の海は、よく透き通っている。
水の中をのぞき込むと、砂の上には、しばしば、ナマコが寝そべっている。
藻の陰からいざなうような手が見えることもある。タコが潜んでいるのだ。
ノリやワカメは、波にさらわれないように岩にしがみついている。
投げ釣りで、一尺を越えるアイナメによく出会えるのも、この季節だ。

こんな、かつての豊かな海が好きだ。
しかし、今は海がやせて、生き物たちが減ってしまった。
将来の子供達のためにも、少しでも豊かな海を取り戻したい。
海を汚さない。そして、生き物が育ちやすい海にするために努めて行こう。
そんな気持ちで今の海をながめている。