検証・無洗米
無洗米ってなあに?

 最近、ときどき耳にする“無洗米”。これが節水に良いだけでなく、味も良し、環境にも良しのトリプルメリットがあるらしいとの情報が筆者がボランティア編集委員として参加している高松市発行の新聞「みずいのちのいずみ」の編集会議の場に寄せられ、さっそく試してみることにしました。以下はその折りの報告記事の転載です。

○無洗米の基礎知識-----
 正直なところ手抜き用商品かなと言ったレベルの認識しかなかった筆者。まず、無洗米がどういうもので、どのようにして作られるかをインターネットで調べてみました。
(以下、全国無洗米協会のHPより抜粋)
無洗米とは洗う必要のないきれいなお米。袋から出して水を注ぐだけで炊けます。製造方法には大きく分けて以下の三つの方法があります。
@BG精米方法…ヌカが他のヌカとくっつく性質を利用して、水も薬品も使わずにヌカを使ってきれいにする方法。ビタミンなども保たれやすい。
A水洗い乾燥法/湿式法…ヌカを水で洗い落として乾燥させる方法。お米にひびが入ったり品質が安定しないなどの問題がある。
B準無洗米…研米機などでヌカの一部を取り除いているもの。多くのヌカが残る。

ちなみに、ヌカが多く残ったままだと炊き上がったご飯はまずくなります。そこで、今回は主流であるBG精米されたものを検証対象としました。

○気になるお値段は-----
 予備知識を入れて、次に無洗米を求めてスーパーへ出かけました。買ったのは平成14年産・香川県産コシヒカリをBG精米したもの。念のため地元の大手スーパーを2軒回り、値段を調べましたが、どちらも通常精米のものより5%ほど高い価格が設定されていました。これを手持ちの平成14年産・香川県産コシヒカリと比較することにしました。

○どのぐらい節水になるの-----

 米をとぎ慣れている主婦歴48年の筆者の母親に、いつものようにといでもらいました。その結果、7合のお米をとぐのに使った水の量は約7g(写真のバケツは10l)。最近はビタミンB群が減るのを少なくするために以前よりとぐ回数を減らしているとのこと。なお、とぎ終えた時の炊飯器内の水の濁り具合は、無洗米に水を注いだ時のそれと同程度でした。

○味の方は-----
 試食した家族6人全員が「無洗米はおいしい!」とのコメント。「ご飯の一粒一粒がしっかりしている。」とか、「炊き上がった時に炊飯器の内ブタに着くヌカが、無洗米の時には見られない。」などの感想もありました。

 なお、一般にご飯の味を左右するものとしては、米自体に含まれる水分量やたんぱく質やアミロースなどのでんぷんのバランス、精米してからの日数、お米の保管状態などが挙げられています。産地や収穫年度は目安の1つということです。同じ香川県産でも収穫された土地の気候(場所)や栽培方法などの違いにより味が異なるそうですし、炊き方によっても味は変わります。

○環境にも良いって?-----
 ヌカは肥料や化粧品、食品の原材料などにも使われ有益な面もありますが、一方で家庭排水中では水を汚す物質となり、CODやチッ素、そしてリンの値が増えます。表1のデータは、他のメンバーが調べたとぎ汁中のそれぞれの量です。

表1 COD SS
浮遊物
T-N
総窒素
T-P
総リン
1回目 10,000 16,000 280 93
2回目 3,800 6,600 100 20
3回目 2,100 3,500 72 11
4回目 1,100 2,200 50 5.2
5回目 920 1,600 38 3.2

<表1>条件:米3合に水300mlづつ加えてとぎました。測定結果は有効数字2桁で切り捨てたものです。単位はmg/lです。
《データについてのコメント》 とくにリンは、かび臭い飲み水の原因物質を生み出したり、赤潮を起こしたりするそれぞれの藻類の栄養となるため注意が必要です。無洗米を使うことにより、ヌカは前もって取り除かれるため、排水と一緒に流れ出ることはなくなります。

○無洗米を試してみて(総括)
 まだまだお米売り場では肩身の狭い思いをしている無洗米ですが、手軽に使えるだけでなく節水・味・環境保全という3つのメリットも有する大型新商品といったところでしょうか。いろいろ書いてまいりましたが“百聞は一見にしかず”と申します。ぜひ、皆さんもご自身の目と舌で試されてはいかがでしょうか。

(2003年1月取材)

【追記】
リン酸イオンの発生源としては、岩石中に含まれていたものが雨で溶け出たり、枯れた植物や動物の死骸、肥料、農薬、さらにはし尿を始めとする生活排水などが挙げられます。従って、言うまでもないことではありますが、米の研ぎ汁をなくしただけではリンの問題は解決はしません。小学校の環境教育では、ご存知のように家庭でできる環境保全対策の一つとして「米の研ぎ汁は植物や畑にまくように」と、指導しています。
筆者としては、このページを通じて、「臭くない水」「おいしい水」を少雨の地域で安定的に確保するために自分達に何ができるのか、またどんな対策が効果的かを考える方が一人でも増えていただければ本望です。(2003年10月4日)