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ロバート・パーカーJr.「ボルドー第4版」より
ボルドーで最も有名なシャトーでありワインのラフィット・ロートシルトは、エレガントで小ぶりでシンプルなラベルとともに、その名は富や格式、歴史、敬意、そして特筆に値する長寿の代名詞となっている。
しかし、1975年以降は毎年最高級のラフィットを生み出しているものの、1961年から1974年までの成績は、一級シャトーとしては驚くほど凡庸だった。あの頃のラフィットをテイスティングしたワイン評論家たちがなぜもっと異を唱えなかったのか、あまだに謎である。シャトーの公式発表は決まって「当時は軽くてエレガントなスタイルだったため、ブラインド・テイスティングでは、もっと大柄でたくましいワインに負けたのだ」なのだが、そういう事情があったのは認めるにしても、である。ラフィットの凡庸さは1971年、1970年、1966年、1961年、1949年、1945年といった優良なヴィンテージにおいて際立っていた。驚くほど色がなく、適度にドライで、オークの樽香が過剰で、異常に酸が強かったのである。それどころか、1974年、1971年、1969年などは、まったくの失敗作であるのに、ラフィットの名をつけて高値で出荷された。
こうした事態が生じた理由をロートシルト家が明かすことはあるまいが、1975年以降は成功するようになったのだから、1960年代から1970年代前半にかけての問題は次のようなものだったのだろう。第一は、オーナーの不在だ。当時オーナーはパリに住んでいたのでたまにしか監督にやって来なかったのだが、1975年以降は熱心でこだわりのあるエリック・ド・ロートシルトのおかげで確かにラフィットの運営陣は勤勉になった。第二に、ラフィットのワインは樽熟成が長すぎた。昔は往々にして最低でも32〜36ヶ月は熟成させていたのだが、現在では最長でも20〜30ヶ月である。この変更のおかげでフルーティさや新鮮さが増したのは間違いない。第三に、現在の醸造スタッフのほうが、意識的にブドウの収穫を遅らせ、より熟したブドウから、より酸の弱いワインをつくろうとしている。選別プロセスが以前よりも厳しくなったのは間違いない。1980年代後半の豊作年では毎回収穫の半分を除去していたし、1990年以降はなんと収穫の60%以上を除外することも珍しいことだはなくなった。除去したワインはバルク売りしたり、セカンド用に格下げしている。最後に、ラフィット・ロートシルトは、瓶詰めにかける期間が短くなってきている。根拠のない報告ではあったものの、以前から言われてきたように「ラフィットは瓶詰めにだらだらと8〜12ヶ月もかけることが多い」というのが本当なら、許容範囲を超えるほどのボトル・バリエーションが生じていたことだろう。今日では、すでてのワインが2〜3週間で瓶詰めされている。 |