☆SMAP010 TEN

ずっと昔、男の子と女の子が走ってるロンドンの映画館。男の子の持ってるクマのぬいぐるみに「CAN YOU HEAR?」の文字。時は流れて現代のロンドン。雑踏の中を歩く彼。映画館に向かい、チケットを買い、館内に入る。みんなが、それぞれの場所に座ってる。ポップコーンを食べてるもの、ジュースを飲んでるもの、音楽を聴いてるもの、雑誌を眺めながら口笛を吹くもの、そして…。

映画は始まった。

『SMAP Summer Concert1996 超無限大翔』

慎吾はタクシーに乗っていて、楽しそうに流れていく風景の写真を取っている。バッグに、あのこの写真。「ここが君が生まれた街かぁ」

吾郎はまだベッドの中、起き上がってタバコに火をつけて。ベッドサイドの写真立てに「おはよう」

剛は裸足で歯磨きの真っ最中。ふと、鏡に貼り付けてある写真が気になる。手のひらで隠して、「笑うなよ」

木村はタバコを買いにスタンドまで来たのに、小銭が見つからない。ポケットを探ってると、紙幣と、ポラロイド。スタンドの親父をチラとうかがい、「昔の事じゃん…」

中居は迷子みたいに捨て子みたいに、道端に座り込む。楽しげに通り過ぎる恋人たちを笑顔で見送って、写真を取り出す。「なにやってんだよ…」

最後にお墓に来たのは、中居。4つある小さな花束に、ふと笑みが浮かぶ。5つ目は、中居の、花束。

木村は、道端に並んで座ってた女の子に、残った花を一輪手渡し歩き出す。すれ違いざまに、聞こえて来る「Can You Hear?」しばらく行って、小さく首を傾げ「No」

吾郎は、橋の上から川面を眺める。後ろを通りすぎながら聞こえて来る「Can You Hear?」少し考え、小さく首を振りながら「No…」

剛は、街角のダストボックスに座ってロンドンの街を見つめる。通りすがりに「Can You Hear?」ん?と思い、少しきっぱりと「No」

慎吾は、タクシーの中でにーっと笑いながらセルフポートレイト撮影。赤信号で停車したタクシーの中からファインダー越しに聞こえてくる「Can You Hear?」ニコっと笑って、元気よく「No!」

中居は、街角のカフェで、どういう訳か2つ頼んでしまったコーヒーを前にしている。テーブルの向こうに置こうとすると、向いの席から「Can You Hear?」あー…と少し宙を見上げ、小さな横顔を、とがった顎を、片手でささえ、微笑みながら「No」少し小指をくわえる仕種、綺麗な微笑み。

映画が終わった。伸びをする慎吾の後ろで、足音。ドアが開く音。全員の視線が向いたドアが、ゆっくりと、閉まる。中居が、ふと、奥の席を見ると、マイクが置いてあった。
丸めた雑誌を軽くあごにあてながら、中居は微笑む。慎吾も、剛も、吾郎も、木村も、ちょっと微笑んで、席を立つ。
さっきまで、もう一人、ここにいた。確かな意志で、マイクを置いて、たった一人で、出て行った。
片づけるために老紳士が入ってきて、座席に座った。あの時のクマのぬいぐるみが、隣に座っている。『なにか見つけたか?』のTシャツを見て、「Yes」あの日の少年は、言った。

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