水源地探訪G 屋根の上の源流の碑

本シリーズの3回目に本川村(現在のいの町)白猪谷渓谷最奥部に建立されている吉野川源流の碑への道を紹介いたしました。ヤマシャクヤクが咲く林や沢渡りを楽しみながらの行程の魅力と、渓流や木々の美しさには筆舌に尽くしがたいものがありました。
今回はさらに源流の水を供給する瓶ヶ森(かめがもり;標高1896m)と西黒森(にしくろもり;1861m)の間に立つ、もう一つの源流の碑を訪れました。

旧寒風山トンネルまでのアクセス

いよ西条ICから国道11号線を西に少し走り、国道194号線を南に下って伊予富士や寒風山の雄姿を前方に見ながら進み、寒風山トンネル(全長5432m)を抜けるまでは約40分。
抜けたところをV字にターンし、、ほぼ一車線の九十九折の道を10分ほど(7.5km)登ると旧寒風山トンネルに至ります。このトンネルの手前を左折すると村道瓶ヶ森線に入ります。



まるで屋根の上の散歩「村道瓶ヶ森線」

訪れたのは、里の桜が葉桜に変わって間もない4月16日。道にはところどころに残雪があり、中には雪渓の風情を醸し出しているところもありました。
道の左側は崖。落石や倒木が片付けられた道をさらに進むと伊予富士(標高1756m)が現れます。敷きつめられたような黄緑色のササ原に深緑の葉をつけたウラジロモミが点在し、空の青とのコントラストもなんとも美しい。
さらに進むと一面のササ原で覆われた自念子ノ頭(じねんごのかしら;標高1701m)が見えて来ます。

好天が数日続いているにも拘わらず、ところどころの渓筋からは水が滴り落ちていました。
さらに進み、村道瓶ヶ森線に入ってから15.8kmの地点(標高:約1600m)に、目的の吉野川源流の碑はあります。

手前側に西黒森、奥に瓶ヶ森が控えています。眼下にはかつて訪れた源流モニュメントのある、気の遠くなるほどの深い谷。三方を急峻な高峰で囲まれ、多くの水を集めるであろうその様は巨大な漏斗(ロート)を連想させます。

源流の碑の前に横たわり、目を閉じると聞こえてくるのは、風が木やササ原をなでる音だけです。水の見えないところの源流の碑ですが、海などから天に戻った水が再び大地に降りてくるまさに生誕の地。ここからまた長い旅をしながら多くの動植物を育んでくれるのかと思うにつけ、ある種の感動と感謝の念を覚えました。




なお、瓶ヶ森は、車を降りてから頂上まで片道1時間程で登れます。駐車場やトイレが整備され、オオイワカガミの可愛い花も散見される登山道は概ね歩きやすく、登山初心者の方にもお勧めです。

同山は岩が目立つ、頂上付近が急峻な男山と、ササ原に囲まれたなだらかな稜線が特徴の女山から成り、頂上から北の方角にはは西条市や瀬戸内海が間近に見えます。東には1700m以上の峰が連なり、南は深い谷と幾重にも重なる高知の峰々。西には四国最高峰の霊峰・石鎚山の雄姿を拝むことができます。


天候の良いときにぜひ源流の碑とセットで楽しまれてはいかがでしょう。


(注)村道瓶ヶ森線は12月から3月までの4ヵ月間は閉鎖されます。また、悪天候の時には臨時で通行止めになります。登山については事前に十分な準備と健康チェックを行いましょう。