水源地探訪B本川村・吉野川源流編

感動!大自然の迫力と美しさ!

 今回も前回に引き続き高知県は本川村です。その極めつけ、吉野川源流の碑のある白猪谷(しらいだに)渓谷を、新緑もまぶしい5月の始めに訪ねました。夏休みの体験学習にもお勧めのこの地の様子を、予備知識も含めまして、ご紹介いたします。

1.吉野川源流とは
 吉野川水源地の現地調査が平成元年10月から翌2年6月までに合計3回行われ、源流の確認作業が実施されました。その結果、白猪谷の水源地帯の中で、瓶ヶ森(標高1896m)からの沢と西黒森(標高1861m)からの沢が合流する標高1200mの地点と確認されました。源流地点にはステンレス製のモニュメントが建設されています。
(れいほくネイチャーハントガイドブック;嶺北広域行政事務組合発行より)

2.源流へのアクセス
 高松から高速道路を使えば1時間少しで伊予西条(愛媛県)に着きます。高速道路を降り、国道11号線を少し松山方面に行ったところから加茂川沿いの194号線に入り、長さ5432mの寒風山トンネルを抜けるといよいよ本川村です。役場などのある長沢地区から源流の入口までは22km。1車線の道になります。高松からの所要時間は約3時間で、最後の1.5kmは未舗装の林道です。源流橋の手前300mのところにある駐車場に車を停め、そこから源流までの2.5kmぐらいが徒歩(登山)になります。
(写真:源流橋から上流を望む)
 
 なお、長沢から源流橋への道程の中ほどにある越裏門(えりもん)地区は平家敗走の居留地の1つ。源平壇ノ浦の戦いの後、追っ手から逃れて、また飢えとも戦いながら、ここからさらに峰峰を越え最終は高知県仁淀村・都に至ったと言われています。



3.登山道を源流の碑へ
 歩き始めは杉の人工林の中。ところどころにヤマシャクヤクの群落があり、うす黄色の優雅な花が早くも歩き疲れてきた重い気分を和ませてくれました。このあたりでは谷ははるか下方。新緑の下を時には鋭角に向きを変えながら勢いよく流れています。林の中にヒメシャラと思われる赤褐色の光沢のある幹も目立ちます。

 30分程歩いたところでいよいよ沢伝いになります。新緑と青い空のコントラストがなんとも美しい。水は大小さまざまの岩の間を流れ落ち、まさに自然の庭園。登るに連れ、山肌のヤマシャクヤクも、つぼみのものが増えて行きました。沢を横切ったりしながら、さらに上流を目指します。(写真左:登山道の途中の沢)

 歩き始めて1時間30分程経ったところで、前方の岩の上にまばゆく光るものが見えてきました。予定より早い到着で、一瞬目を疑いましたが、まさしく源流の碑でした。「ついにやってきた!!」たどり着いたうれしさで、ドライブと登山の疲れもどこへやら・・・。碑の上流側はパティオ(中庭)を想わせる小広い清らかな空間。木々や草花に水と風が相和し、この上ないやすらぎの時を与えてくれました。(写真:源流の碑)



4.源流の巨木
 源流の碑の奥には落差20m程の美しい滝がありますが、その近くの斜面には幹周りが4m近いトチノキがあり、地面におびただしいほどの数のその実を散らしていました。鳥取県などで名物の、あのとち餅を作るトチです。季節柄、殻だけになっているものが多い中、地面で芽を出しているものも見られました。根元には土をかき出した跡があり、小動物の巣になっているようです。。写真のカツラの木は源流の碑のすぐそばにあり、幹周りは4mを越えます。冬の眠りから覚めたばかりで、手の爪ほどの大きさの若葉を身に纏(まと)っていましたが、堂々としたその姿は、まるで森の生き物達を守る大王のようです。



手あかの付いていない自然の美しさと源流域の迫力に感動の今回のコース。ぜひ、皆さんも体験してみてください。

※登山コースは小学校高学年以上の健脚向き。コース沿いにリボンがところどころに付けられていますので、それを目印に進みます。途中、滑りやすいところもあるのでご注意ください。また、増水時は危険です。事前に本川村役場(088‐869-2116)で現地の状況を確認されることをお勧めします。  

(2003年5月2日取材)