水源地探訪C本山町の巨木編

山の町に鎮座する樹齢千年を越える巨木

(1)オリドの杉 (2)十二所(じゅうにしょ)神社の杉


高知自動車道・大豊インターから国道439号線に入り、西へ向かうと、川べりで牛たちがゆったりと寝そべる牧歌的な風景が出迎えてくれます。さらに車を走らせること、大豊インターから15分程で、右側にきれいな石の河原とこんもりした森(きぜんやま公園)が見えて来ます。
ここ本山町は戦国時代には本山氏の居城を中心に発展し、江戸時代には土佐藩家老・野中兼山らにより新田開発が進められた、れいほく地方の中心地の1つ。現在も、のどかながら活気を感じさせる町です。
今回は、早くから開けた山の町で人々を見守ってきた巨木です。

(1)オリドの杉
本山町の中心街に入るほんの少し手前の井窪(いのくぼ)で左折し、道なりに5分ほど走ると、小高いところにケタ外れな杉が見えてきます。このあたりは延暦(えんりゃく)新道と呼ばれる西暦795年に開通した官道(今で言う国道)沿い。いわゆる南海道の1ルートで、後に「北山越え」と呼ばれた道です。【北山越えの道解説地図】

とは言っても、その険しさのために何回もそのルートを変えたとされる南海道。この地の南で国見山を越える国見越え、北で笹ヶ峰を越え伊予(今の愛媛県)に至る北山越えと、立て続けに海抜1000m余りの峠を登るこのルートも決して楽なものでなかったことは容易に想像できます。

そんな街道筋の阿弥陀堂を守るようにそびえ立つ周囲8m・樹齢1200年のこの杉は、10世紀以上にわたり旅人のどれほどの願いを受けとめて来たのでしょうか。

なお、都や瀬戸内方面と土佐を結ぶいにしえの道路事情については、同町出身の山崎清憲氏著「土佐の道・その歴史を歩く」(高知新聞社刊)にも詳しく紹介されていますことを、参考までに申し添えます。

(2)十二所神社の杉
嶺北中央病院手前にある、有名なレストランの前の三叉路を南に入り、大原富枝文学館前を直進すると正面に参道が見えてきます。国道から2分程です。鳥居の脇にあると言うよりも、この木の横に鳥居が設けられているといった風情です。こんなに人里近くでありながら樹齢千年を数えると言うことに、地元の方々の厚い信仰心を感じます。根元の一部を苔やツタでお化粧している、とてもきれいな杉です。

なお、小説「婉という女」で有名な大原富枝さんは本町のご出身とのこと。旧裁判所を改築したという前述の文学館も大変美しく且つ落ち着いた雰囲気の建物です。



※汗見川について
早明浦ダムのすぐ下流で吉野川と合流する川が汗見川(あせみがわ)です。愛媛県との県境にある佐々連尾山(さざれおやま:標高1404m)から流れ出るこの川、汗見川渓谷あたりからはゆるやかな流れになり、遊泳可能な渕があちこちに見られます。地元の方の話では春にはキシツツジやアケボノツツジが谷を彩り、7月には渓流沿いを走る汗見川清流マラソンが開催されているとのこと。川に沿って走る道沿いには、流木オブジェや地元の方々の植えられた花が見られ、人里はなれた渓流とは違った、人々との交わりが感じられる川です。
(写真左:汗見川亀岩下流、右:汗見川升渕)