水源地探訪A本川村の巨木編

四国の中央山岳地帯で人々の営みを見守る木々

今回訪れたのは吉野川の発するところ、高知県は本川村です。筆者が初めて本川村に足を踏み入れたのは大石を積み上げて造ったロックフィルダム“稲村ダム”にほど近い、土佐町との境にある稲叢トンネルからでした。そこからは平家平、笹ヶ峰、瓶ヶ森など標高1700〜1900mほどの有名な峰々が一望でき、“四国のど真ん中に来た”ということになんとも言えぬ感動を覚えたものでした。今回は季節が冬でもあり、アクセスの楽な、伊予西条から寒風山トンネルを抜けるコースで本川村に入りました。

1.大森神社のモミ
 西条市内から車で40分ほど走ると、本川村の観光・レクリエーションの拠点、木目もまぶしい“道の駅・木の香”に至ります。ここからほんの少し下ったところでU字に右折し、中野川川沿いに7分ほどさかのぼると目的の大森神社があります。鳥居をくぐり、ほんの少し石段を登ると、目に飛び込んでくる巨木がそれです。樹齢は推定800年。写真からお判りいただけるように、太くて真っ直ぐです。有無をも言わせぬ雰囲気があります。残念ながら先端部分は何らかの原因でなくなっていますが、たくましさは失われていません。モミの木はしばしばトウヒの代用でクリスマスツリーに供されるので皆さんにもおなじみではないでしょうか。近くにはやはり樹齢300年以上と思われるモミや樹齢500年の杉があり、ひときわ重厚な雰囲気をかもし出しています。




2.大山祇(おおやまずみ)神社のケヤキ


 街路樹やビルの緑化用などに人気のケヤキ。皆さんにもなじみの深い木ではないでしょうか。先ほどU字に右折したところから少し先で大川村方面への県道に入り、8分ほど走れば到着。高薮というところにあるこの木は推定樹齢300年。根元周囲は3.2m。ケヤキの魅力の1つは適度に広がる枝ぶりかと思いますが、今は落葉してスケルトンになっているためプロポーションが良くわかります。きっと毎年夏には心地よい木陰を提供してくれていることでしょう。






3.木の根三里の森の巨木

 再び国道194号線へ戻り、やはり8分ほど高知方面へ走ったところにダム湖にかかる歩行者専用の吊り橋があります。渡ると少しゆれます。その先が“木の根三里の森”です。この辺りはその昔、難所の多い山道で、木の根や岩につかまりながら行き来したことからこの名前が付いたとのこと。吉野川中流の観光名所“大歩危・小歩危”より厄介だったようです。森には現在、遊歩道が整備されています。写真の巨木はその遊歩道と交わる最初の沢の際にあった落葉樹。橋からは1〜2分の所で、沢に降りて撮影したものです。葉が落ちてしまっているため良くはわかりませんが、ヒメシャラの巨木かと思われます。写真の反対側(遊歩道側)の幹は苔におおわれていました。自然と触れ合う手法の1つであるネイチャーゲームに“木へのインタビュー”というのがありますが、ぜひお話を伺いたくなる…そんな木でした。



雪化粧をした峰々が青空に映えていた今回の取材。谷に目をやると涸れている沢もいくつかありましたが、大きめの沢からは絶えず水が流れ降りて来ていました。また、山肌から水がしたたり落ちる所も何ヵ所かあり、山の懐の深さを実感しました。

(2002年12月30日取材)