水源地探訪D 大川村編

感動!大座礼山(おおざれやま)のブナ巨木並木

早明浦ダムを語るときに必ず出てくるのが、大川村。その93%を森林が占めるこの村には平地はほとんどありません。
1699年にその歴史が始まる白滝鉱山の存在により、宝塚歌劇団も公演に訪れたほど活気のあった村。その村も閉山とその後のダム建設による主要集落の水没などから、その人口はピーク時の7分の1程の600人以下にまで落ち込んでいます。
しかし、ボランティア活動などで出会う地元の人々の表情は明るく、精神的なたくましさとある種の美しさを感じさせてくれます。
そんな不思議な魅力のある村を晩秋の平成15年11月25日に訪れました。

1.大座礼山への道

高知自動車道・大豊インターから早明浦ダムまで車で約25分。早明浦ダムからダム湖沿いの道を走ること約30分で大川村役場に至る。
そのほんの少し先から大北川沿いに北上すること30分程で登山口に到着する。登山口はこの伊予三島市へ至る舗装道から三叉路を西へ400m程入ったところ。わかり易い道路標識もあり、駐車にも困らない。
余談だが、この大北川沿いの道を途中で右折すると白滝鉱山跡に至る。

2.いよいよ登山

登り始めが一番厳しい。つづら折の狭く急峻な登山道を10分ほどで抜ける。途中、苔むす沢を飛び石伝いに渡る。前日まで雨が降っていたが、水量はそれ程多くなく、楽に渡れた。
15分ほどで小広くなったブナをはじめとする広葉樹林に出た。木々の間から見える、色着いた山並みがなんとも美しい。一方、山肌のいたるところから水がしたたり落ちて来る。まさに、川の最初の一滴だ。
このあたりでは道は徐々にではあるが登って行く。シャクナゲの群落も見える。何ヵ所か小さな沢を横切るが、沢の傾斜がきつく、水は滑り落ちて行く。岩は黒褐色に輝き、周囲の苔の緑や木々の紅葉と相まって、人工の庭園には見られないダイナミックさと清廉さを感じさせてくれる。まさに、心が洗われる。
45分ほど歩いたところからは人工林の中を10分弱ほど進む。差し込む光がスポットライトのようだ。人工林を抜けて程なく尾根筋に出た。ここで、三叉路を右に曲がり、さらに高所を目指す。
しかし、話に聞いたブナの巨木が見つからないので少し不安になってきた。


3.壮大・ブナ巨木の並木道

あった。不安になったのも束の間、行く手を遮るかのようにその枝を広げるブナの巨木が目に飛び込んできた。樹齢は約600年とのこと。登り始めて1時間程でたどり着いた。弾む息が感動の鼓動に変わった。
その雄姿をレンズに収めていると少し先にも同じようなものが見えた。不思議に思ってさらに進むと400〜600年近くになると想像されるブナが3本並んでいる。その先にさらに2本見えた。
今まで見てきた巨木は点在していたが、ここのブナ巨木は並木だ。風雪に耐え、よくこれだけ生き残っているものだと感心した。
ブナ巨木の並木からさらに15分ほど登ると山頂に着く。すぐ東には東光森山、西遠方には瓶ヶ森や石鎚山などが一望できる。一種の達成感も得られ、しばし心地よい疲労感に浸る。

今回の行程では登山口から巨木まで約1時間。油断は禁物ですが、大川村教育委員会主催の夏休み短期山村留学「白滝こども自然王国」の遠足でも登るところですので、小学校高学年のお子さんでもチャレンジ可能と思われます。
冬山は危険ですので、暖かい時期に保護者の方共々、注意をしながら登ってみてください。

(注)早明浦ダムのみ撮影日が異なります。写真の沢は登山道で最初に現れる沢です。