水源地探訪E 大川村編その2

山の在所に生きる古木たち

森林と川がほとんどで、平地の極めて少ない大川村。その厳しい自然環境の下で、今も多くの小集落が残り、人と自然との共存がなされています。
今回は、@大川村最奥部で平家平(へいけだいら)登山口でもある小麦畝(こむぎうね)地区A村の中央付近になる下小南川(しもおみながわ)地区、そしてB村の入口、役場の対岸に位置する下中切(しもなかぎり)地区を若葉が息吹き始めたばかりの平成16年4月16日に訪れました。

1.樹齢1000年、小麦畝の大カツラ

いよ西条から国道194号線に入り、何度見ても感動を覚える伊予富士(1756m)を仰ぎ見ながら車を進めること西条ICから40分程で、高知県本川村の道の駅「木の香」に到着。
その少し南で大川村方面への県道に入り、さらに本川村高薮から県道を離れ、山側に入ると、県道から5.3kmの地点に平家平への分岐路があります。その一つ手前の分岐路を山側へ300m登ると、民家が2軒並んでいます。そこで車を降り、森に入るとすぐに巨木が現れます。
老幹はかなり朽ちていますが、ひこばえが周囲を取り囲んでいます。その新旧のバランスが一層荘厳さを醸し出し、とても味わいがあります。すぐ脇は沢になっていて、カツラの水好きがよく解ります。老幹にできた洞の闇の中には、侵入者を見据えて離さない眼光が2つ輝いていました。

森を出ると視野に大きく飛び込んで来る平家平から三ッ森山への稜線と青空のコントラストは、なんとも美しく雄大でもあります。



2.旧家を囲むイチイ・ケヤキ・スギ

前述の県道を東進し、朱に塗られた「小金滝橋」を渡り、下小南川の奥へ入って行くこと4.3km。舗装道が切れた先の「下小南川・寺屋敷」と呼ばれる地区へ至ります。
ここに400年、25代続いている旧家「石川家」があり、その敷地内に@推定樹齢600年のイチイA推定樹齢400年以上のスギB推定樹齢300年以上のケヤキがあります。
訪れたときは築後400年の母屋を解体されたばかり。最近の木造住宅の耐用年数は30年程度で、よく持っても100年もすれば傷みがひどくなるのが常ですから、その年数は驚愕ものです。当代石川幸雄氏のお話しでは、大川村も文化財としての建物の保存を検討されたそうですが、諸般の事情により、やむなく断念されたとのこと。石川家は代々住職を務められていたとのことで、敷地に巨木が多く見られることも寺叢ゆえにと理解できます。



3.古い水源地の大きなコナラ

大川村役場近くの「大川橋」を渡り、山側への道を進むと集落があり、その少し先の道が大きくカーブするところに案内板があります。そこからほんの少し林の中へ足を踏み入れると、眼前に勢いの良い巨木が現れます。
写真の通り、雄々しさの中に華を感じさせてくれる大樹です。推定樹齢は400年で、根元は急斜面がさらにえぐられたような形になっています。実は、この付近は昔の水源地で、その地を守る木ということで大切にされていたとのこと。水源にとっての広葉樹の大切さが昔から理解されていた証左と言えます。




前述の小麦畝の手前に小北川(こきたがわ)があり、写真は小北川橋付近のその流れです。この辺りでは、巨大な岩の上にできた水路を、あたかもリュージュ(木ゾリ)で氷路を滑り降りるが如く、勢いよく流れて行きます。ゆるやかな滝と言った方が適切かもしれません。他にあまり例を見ない光景で、一見の価値ありです。数キロ東には有名な「銚子滝」もあり、合わせてご覧になられるのもお勧めです。

なお、石川様ご夫妻をはじめ、今回の取材でお世話になりました方々に御礼申し上げます。