水源地探訪F 大豊町編


四国を代表する大杉 〜稀代の歌姫・美空ひばりさんのエピソードも〜

徳島県の名勝・大歩危小歩危から、さらに国道32号線を高知方面へ向かっていると、「風の谷のナウシカ」を彷彿させる大きな風車が、左側の山上に見えてきます。この辺りがれいほく地方で一番広い町、大豊町。面積は香川県高松市の1.5倍以上の315平方kmもあります。

石鎚山系と剣山系が交わるこの地の中央には吉野川が流れ、また穴内川をはじめ、これに流れ込む支流も多く、水資源には大変恵まれた土地柄です。一方で平坦な土地はほとんどなく、耕地は全体の1.1%。地すべり災害が多いところでもあります。
高知県れいほく地方の巨木紹介、今回はそんな大豊町の、全国的にも有名なところです。

高速道路利用の場合、高知自動車道を大豊ICで降り、国道32号線に入り、穴内川に沿って南下すること5分ほどで「道の駅・大杉」に至ります。そこから山側へ1分ほど入ると目指す大杉に到着です。

高速道路ではなく、国道32号線を利用された場合には、徳島県阿波池田の辺りの吉野川中流風景から、同県山城町の名勝・大歩危小歩危の渓流美が楽しめます。山城町は「ゲゲゲの鬼太郎」にも登場する「こなき爺(じじい)伝説」でも有名です。

さて、国道から1分ほど山側へ入ると八坂神社に至ります。駐車場に車を停め、僅かばかりの料金を払って石段を上がると、驚愕のスケールの大杉が現れます。

国の特別天然記念物にも指定されているこの大杉の推定樹齢は2,000〜3,000年。北杉と南杉の2つに分れていますが、根元は一つです。その姿には驚かされ、圧倒されましたが、大きさを数値で表して理解していただけるか不安です。ぜひ、皆さん自身の目で確認していただければと思います。

さすが高齢なだけに、樹勢に蔭りが見え、治療が施されていますが、それでも、そばに佇んでいると、紀元前から生きてきた日本列島屈指の長老に出会えたことに感謝する気持ちになりました。

ところで、この大杉にまつわるエピソードで、とくに有名なのが昭和の歌姫・美空ひばりさんのものでしょう。平成生まれの皆さんはあまりご存知ないかもしれませんが、発表曲数は1035曲、出演映画数は158本を数えるなど太平洋戦争後の混乱期から高度経済成長期を通して、人々に希望と夢を与え続けた方です。そのひばりさんがデビュー後間もない9歳の時に、この地でバス事故に遭いながらも九死に一生を得て以来の縁だそうです。

現在、ここには碑が建立されていて、その前に立つと、たぶんお若い方もご存知の「川の流れのように」のメロディーが流れてきます。歌姫の活躍を見守った大杉と穴内川。訪れる人々の心もきっと癒してくれることでしょう。